2024年03月29日( 金 )

【特報】目黒女児虐待死、品川児童相談所が香川県に責任転嫁~食い違う言い分

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 3月に東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が虐待死した事件で、管轄の品川児童相談所の怠慢な対応が明らかになった。さらに品川児相は、同事件について弁解ともとれる説明を繰り返しており、香川県の児童相談所(香川県西部子ども相談センター)と見解の相違があることもわかった。

品川児相の冷淡な対応

父親の船戸雄大被告と、母親の優里容疑者
(報道ステーションより)

 1月に結愛ちゃん一家が香川県から転居してきて以降、品川児相が船戸家を訪問したのはたった1度だけだった。香川県西部子ども相談センターから「継続支援が必要な重大な事案」という引き継ぎを受けていたにも関わらず、20日間以上も放置されたのだ。

 品川児相がもっと早く対応していれば、結愛ちゃんの死を防げたのではないのか。しかし、管轄区内で発生した痛ましい事件について、品川児相の林直樹所長の口から出るのは「弁解」の言葉ばかり。結愛ちゃんを追悼する言葉さえ、最後まで出なかった。記者がたまらず、「結愛ちゃんの死について、児相にまったく責任がないと言えるのか」と問うとやっと、「社会全体で救えなかったことは、社会の一員として申し訳ない」と答えたものの、あまりにも冷淡で血の通わぬ言葉の羅列に、しばし言葉を失った。

都と香川県の言い分に、食い違い

 品川児相は、2018年1月に香川県から転居してきた結愛ちゃんのケース(虐待や一時保護などの記録)について、同月に香川県西部子ども相談センターの担当者から電話を受け、2月上旬には香川県から送られたケース記録を受け取っている。しかし、この間のやりとりの「意味」について、品川児相と同センターの認識は大きく異なっている。

 香川県西部子ども相談センター側がこのやりとりについて「ケース移管」(継続調査などの公式な引き継ぎ)だったとする一方、品川児相は単なる「情報提供」だったとしているのだ。同センターの久利文代所長は次のように語る。

 「(児童虐待のケースを)他自治体に送る方法としては、情報提供とケース移管という2種類の方法があります。情報提供は、緊急に対応が必要ではない、あまり大きな事案ではないもので、ケース移管は『継続支援』を求めるものです。結愛ちゃんについてはケース移管として送りたい旨を、転居後の1月に都に電話で伝えており、ファックスで概要を送った後に、改めてファイル一式を送っています」

 久利所長の見解に対し、結愛ちゃんのように一時保護が解除された状態でケース移管はできない、というのが品川児相の言い分だ。つまり、香川県西部子ども相談センターが「継続支援が必要」だと電話で伝え、ファックスや郵送で資料を送るなどして入念に支援を訴えたにも関わらず、「手続き上の間違い」を理由に、品川児相は情報提供程度のケースとしか受け取っていなかったのだ。香川県の再三の訴えは無視され、結果的に品川児相の判断は最悪の事態を招いた。

制度的欠陥か、連携不足か

 虐待されている子どもが一時保護など行政の監督下に入った場合、別の自治体に転居することでその監視の目を逃れようとする親は少なくない。もし、都と香川県の間で生じた齟齬が今後も起こり得るような制度的欠陥があるとすれば、「鬼畜」親の付け入るスキを広げてしまうおそれもある。

 この事件では、結愛ちゃんが「もうおねがい ゆるしてください」などと書かれたノートを残していたことがわかっている。恐怖と苦痛、そして絶望のなかで短い人生を終えた結愛ちゃんを悼む声が全国的に広がるなか、品川児相の職員の間で結愛ちゃんの事件が話題になることはないという。

 「結愛ちゃんを悼むことがないのなら、ではなぜ、あなたがたは児童相談所で働いているのですか」。
 林所長は答えなかった。

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