2022年01月22日( 土 )
by データ・マックス

ロボット大国日本と世界のロボット市場の最新動向(1)

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 ドイツに端を発する「インダストリー4.0戦略」、別名「第4次産業革命」が世界の関心を集めている。我が国の政府も2017年に「未来投資戦略2017」を閣議決定した。その狙いは第4次産業革命の技術革新をあらゆる産業や社会生活の場に取り入れ、社会が直面する課題や個人のニーズを解決することにある。

 そのためにはスマートフォンをはじめ、さまざまなツールを使ったデータを収集し、さらには人工知能(AI)を生かし、それらの膨大なデータを分析する。現状分析はもちろん、将来予測に役立て、最終的には新たな価値観の創出や問題の解決も可能にする。

 ドイツの官民連携プロジェクトから始まった流れは欧米社会のみならず、中国をも巻き込む勢いで世界を席巻している。アメリカが危機感を抱く原因となった「中国製造2025」も、この流れを中国風に咀嚼し、製造業やサービス部門で世界のトップに躍り出ようとするもの。

 まさに習近平国家主席が進める「中国の夢」を実現することを意図しているようだ。当然、軍事的な応用も可能となるわけで、その点をトランプ政権は懸念しているに違いない。実際、ロボット兵士や無人兵器の開発では中国が世界の先頭を走るようになってきた。

 さて、我が国では、「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のおかげもあり、人型ロボットが社会に馴染んでいる。そうしたアニメの影響を受け、産業用ロボットの開発や実用化の分野で活躍する道を選んだ研究者やエンジニアの数ではおそらく日本は世界ナンバー1といえるだろう。

 実際、自動車や電子部品、最近では医療機器や食品などの製造工場でも、ロボットの普及率がすさまじく、世界から注目と高い評価を集めている。トヨタ自動車の生産ラインでのロボット活用は当たり前で、最近では在宅介護の分野にもロボットを導入すべく海外のAI企業を次々と買収し、「高齢化ビジネスの切り札」にするとのこと。この点、日本以上に高齢化が急ピッチで進む中国でも日本発の技術への関心が高まる一方である。

 実は日本政府は2015年1月に「ロボット新戦略」を正式決定している。すでに産業用ロボットの出荷額でも稼働台数でも世界1を達成した日本。その意味では、日本は「ロボット大国」に他ならない。今後は、農林水産業や医療介護などの現場でも、ロボットの利活用が拡大するはずだ。

 2年後に迫る東京オリンピック・パラリンピックに向けても、治安対策に監視ロボットを導入する動きが広がっている。何しろ人手不足が深刻な日本である。2020年にはオリンピック効果で海外から4,000万人もの観光客の来日が想定される。中にはテロリストや犯罪者が紛れ込む可能性は否定できない。その対策の切り札として期待されているのが「ペルセウスボット」と命名された移動式監視ロボットである。すでに東京の西武新宿駅にて実証実験が開始された。駅の利用者や通行人の不審な行動を監視し、異常があれば、即座に警備員に通報する。カバンや荷物が置きっぱなしであれば、直ちに対応するように設計されている。先進国では似たような取り組みが監視カメラを通じて行われているが、ロボット監視員が移動しながら不審物や不審者を発見する試みは世界初である。

 こうした犯罪防止の目的に限らず、日本のロボット応用分野は広い。政府の掲げる目標では、「2020年には国内のロボット市場を2.4兆円にまで拡大する」とのこと。サービス業の分野でもロボットの普及率を30%まで引き上げようとの目標が掲げられている。長崎県のハウステンボスには、「変なホテル」というフロントやポーターまでロボットが務めるホテルが話題となっているが、ロボットを導入することで、人件費を通常の25%に抑えることに成功している。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

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