2022年06月29日( 水 )
by データ・マックス

福岡市橋梁長寿命化修繕計画の進捗と課題を追う

 福岡市が管理する橋梁は約2,000橋(橋長2~750m)。橋の構造種別には、コンクリート橋、鋼橋などがあるが、同市の場合、そのほとんどをコンクリート橋が占めている。また、2,000橋のうち約75%は、1960~80年代に建設されたもの。今後、架替えなどを行わないと、建設後50年以上の橋梁が急増し、橋梁の高齢化が懸念される。このため、同市では、架替えなどの事後保全型の維持管理から、予防的な補修を実施する予防保全型の維持管理に転換するため、2009年に「福岡市橋梁長寿命化修繕計画」を策定。橋梁の損傷度、社会的影響度などを加味して優先順位を設定し、約300橋を対象に、10年間かけて計画的な補修による橋梁の延命化を進めている。その進捗と課題などを取材した。

5年に1回近接目視が基本に

福岡市最長の橋「海の中道大橋」(橋長750m)

 国土交通省の資料によれば、2018年3月の時点で国内には約73万橋の橋梁がある。このうち70%を超える約52万橋を市町村が管理している。10年後には、建設から50年を経過した橋が50%を占める。同省は14年7月、道路維持や修繕に関する道路法施行規則を改正。橋梁などの点検は、「近接目視により、5年に1回の頻度で行うことを基本とする」こととした。従来の、遠くから目視する点検ルールではダメだという判断だった。この改正では、12年12月の中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故が大きな教訓になっている。

 福岡市の橋梁点検による健全度の評価は、aからeの5段階で判定。aは「健全」で損傷が認められない状態、bは「軽傷」で軽微な損傷を指す。補修が必要な橋梁はc「変状(損傷が発生している)」以下と判定された橋梁で、d「注意」で損傷が著しい状態、e「危険(損傷が激しく、安全を保証できない)」になると、緊急的な対応が必要になる。

 同市における橋梁の代表的な劣化は、三大劣化といわれる「中性化」「塩害」「アルカリシリカ反応」によるコンクリートの劣化だ。これらの劣化は、コンクリートの「中性化」や海水による「塩害」でコンクリート内部の鉄筋が腐食し、コンクリートの剥落などを引き起こす。アルカリシリカ反応により、コンクリート中の反応性骨材が膨張し、コンクリートのひび割れが発生する。

約300橋の補修を計画

 福岡市の橋梁長寿命化修繕計画では、橋梁の損傷度のほか、橋梁の社会的影響などを加味して優先順位を設定し、橋梁の補修を実施している。その数、約300橋。補修工法の選定などついては、福岡大学や九州大学の橋梁の学識経験者と市職員で構成される「福岡市橋梁補修工法等検討部会」に諮り、決定。橋梁補修を担当する福岡市道路維持課は、「補修技術は日進月歩。専門家からアドバイスをもらいながら、最適な補修方法を採用することにしている」と話している。

 16年度末時点で143橋の補修が完了。19年度までに約300橋の橋梁の補修を終える計画だ。この間の事業費は合計約22億円。ただし、当然ながら、橋梁の補修はこれで終わりではない。同市では20年度以降の次期長寿命化修繕計画策定を視野に入れている。国や他都市の動向を見ながら、今後、新たな計画づくりを進める考えだ。

 福岡県内の市町村のなかには、マンパワーが不足し、橋梁の点検・補修のため、土木技術者を配置できないところもある。福岡市では、必要な技術職員を確保。「楽々というわけではないが、何とか自前でやれている」(同)と話す。同市では、市独自のマニュアル「道路橋補修教本」(基礎編、実践編)をそれぞれまとめている。「技術のノウハウの継承、共有に役立っている」(同)という。

点検補修方法などの条件緩和を要望

 橋梁の計画的な補修を進めるうえでの不安材料は、補修費用の高騰。長寿命化修繕計画策定以降、毎年のように労務費や資材単価などが上昇を続けており、計画当初時に比べ、補修費用は約2倍に膨れ上がっている。「増加した費用分、予算も増やせればいいのだが、そうもいかない」(同)。予算が増えなければ、補修できる橋梁は減ってしまうため、当然計画の進捗にも影響をおよぼす。「予算の確保は、福岡市だけでなく全国的な課題だ」(同)と話している。

 橋長が2m程度などの「小さな橋」を補修する場合には、新たに架替えた方がコスト的に安く済むケースもあるため、補修の場合と架替えの場合のライフサイクルコストを比較し、経済的な手法を選定している。橋梁点検は、現行の道路法により、2m程度の「小さな橋梁」も海の中道大橋のような750mある橋梁も、同じ近接目視、打音などの統一的な手法で5年に1回の頻度で点検しなければならない。「すべての橋梁一律ではなく、橋梁の重要度や健全度などに応じて、点検頻度を減らすなどの道路法の緩和を検討してもらいたい」(同)と話す。

 近年、産官学を挙げて、ドローンやAIを使った橋梁点検の技術開発が進んでいる。近接目視と同等以上と認められる技術が開発されれば、大幅な時間短縮、コスト縮減が見込める。「新しい技術に対しては、常にアンテナを張っている。実用可能なものは、どんどん取り入れていきたい」(同)と期待を寄せる。

室見川に架かる愛宕大橋(橋長284m)の橋桁
(写真提供:福岡市)

【大石 恭正】

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