2024年03月29日( 金 )

豊洲市場の「闇」に光差す!東京高裁「抗告許可」決定(後)~技術専門家が解説

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 豊洲市場水産仲卸売場棟の構造計算偽装(設計:日建設計)をめぐる裁判において、仮の使用禁止申立に関して、5日、東京高裁は「抗告許可」を決定した。東京地裁、東京高裁で却下されていた申立が、最高裁において審理されることなった。ここまでの経緯や今後の見通しについて、この裁判における原告の仲卸業者らに対して、建築構造の技術面でアドバイスを行っている構造設計一級建築士の仲盛昭二氏に話を聞いた。

 ――仲卸業者の一部は、築地市場での営業権を主張し、市場移転後も築地に残り営業を続けているようですが・・・。

原告側の説明会に参加した仲盛氏

 仲盛 原告の仲卸業者は、市場移転後も築地に残り営業を続けることにより、築地市場に営業権が存在することを主張しています。仲卸業者を支援する人たちと、築地市場に入れさせまいとする東京都との押し問答は多くの国民の目に止まりました。これに対し、「さっさと豊洲に移転すべき」「補償金目当ての行動だ」などと心ない意見も出ていたようです。しかし、仲卸業者は必至に戦っています。彼らにとっては人生を賭けた戦いなのです。これを揶揄することは慎むべきであると私は思います。

 ――日建設計は沈黙を守っています。

 仲盛 日建設計は、建築基準法令違反の事実を認識しているので、公に反論できず、東京都の擁護に頼る以外にないのです。日建設計が手がけた数百件、数千件の建物において、豊洲市場と同様の不適切な設計が行われていた可能性が極めて高いことを自覚しているからこそ沈黙を守っているのです。そうであれば、全国の日建設計が関与した建物を調査した場合、おそらく収拾のつかない事態になるのではないでしょうか。

 このことを憂慮した私は、日建設計に助け舟を出すつもりで、11月6日、信頼する人物に日建設計宛の親書を託しました。対応した日建設計の広報担当者は「後日連絡いたします」とのことでしたが、1カ月経過しても連絡がありませんでした。このままでは 全国の日建設計が関与した建物の適法性に問題がある可能性を否定できず、全国に混乱が生じかねないと思い、日建設計の姿勢を公表し 国民に認知していただかなければならないと判断しました。

 ――今後、豊洲市場の裁判は どのように進むと予想されますか。

仲盛氏が日経設計宛に題した親書の写し
(本人提供)

 仲盛 私は法律の専門家ではないので、あくまでも私個人の推測としては、東京地裁と高裁で却下されていた仮の使用禁止申立について抗告が許可されたということは、高裁の判断に不十分な点があったことを自ら認め、最高裁の判断を求めることを許可したと考えて良いと思います。抗告許可決定に「行政事件訴訟法7条により適用を受ける民訴法337条2項所定の事項を含むと認められる」とあります。

 「前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院または上告裁判所もしくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合そのほかの法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない」(民訴法337条2項)

 仲盛 豊洲市場に関する本裁判においては、東京都が目論んだ「入り口論争」のみで決着できないことが確定したので、本格的な技術裁判に移行していきます。原告からの依頼があれば、当然 私は原告に協力をするつもりです。

 裁判では、日建設計への証人尋問は避けて通れないと思います。東京都は証人尋問を嫌がると思いますが、設計の偽装を行った張本人に尋問を行うことは技術裁判において不可欠です。証人尋問で虚偽の証言をすれば刑事罰に処せられることを承知したうえで 日建設計は証言をしなければなりません。

 ――仲盛さんとしては、どのような行動を起こされる予定ですか。

 仲盛 事が重大過ぎて対応できずにいると思い、日建設計に助け舟を出したつもりでしたが、さらに開き直りを続けるのであれば、全国の日建設計が設計に関与した建物を調査する必要があると行政やマスコミに働き掛けていきたいと思います。

(了)

(中)

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