• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年12月20日 07:02

シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(9)~貴方の老後は貧か富か(2)

日本高齢社会最前線~無縁社会の実相『誰も気にかけない』

大さんのシニアリポート第73回

家族という幻想からの脱却

 「棄老」の最大の原因は、家族関係の崩壊にある。終戦直後の都市部、とくに東京への一局集中化が発端である。上京するということは、地方で培ってきた家族や親戚、仲間という地縁・血縁を壊すことを意味した。上京後も核家族化がそれに追い打ちをかけた。一度壊れた絆を再構築することは不可能に近い。

 日本会議が重視している5つの項目のなかに、「伝統的な家族観の固守」がある。しかしそれはかなりの難題だと思われる。「家族」という考え方を下支えしているのは、「儒教的思想」である。「儒教では、身近なところから、徳を段階的に広げることを教えの原理にしている。まず、社会の基本単位としての『家』があり、家の原理を共同体レベルに広げ、さらに国家にまで拡大することで、『徳治政治』が実現できると説く。儒教が、ときに『家の宗教』とよばれるのもそのためだ。

 では、家の土台をしっかり固めるには、どうすれば良いのか?そこで登場するのが『孝』という考え方だ。『孝』の字が、『老』と『子』とで成ることからでもわかるように、『孝』は本来、老人を養うことを意味していた。つまり、子が親を養い、敬うことが『孝』の基本である」(『常識として知っておきたい日本の三大宗教 神道・儒教・日本仏教』(歴史の謎を探る会 編)というように、日本人の「家・家族」の根底にある思想は儒教の理念そのものなのである。

 「そこから、親が死んだ後も尽くすことが求められるようになり、祖先をまつることも『孝』の一部となった。さらに、祖先の祭祀を続けるには、子孫を絶やさないことが必要である。そこから、子を生み育てることも、『孝』にふくまれるようになった。つまり、『孝』には、『祖先の祭祀』『父母への敬愛』『子孫の繁栄』という3つの側面があることになる」(同)。

 現在、「長幼の序」(年長者と年下とには序列がある)という言葉の意味を理解している人はどれほどいるだろう。「儒教がそもそも、社会の倫理や規範を整えて理想的な社会を築こうとする思想である」(同)ことを考えれば、国家的秩序の維持を最優先させた戦前、「君臣の義」(主君と家臣は正しい義《道徳・倫理にかなっている》で結ばれている)と「長幼の序」とは日常生活に深く浸透していた。

 戦前の「大家族制」は儒教の精神そのものだった。戦後、戦争未体験の団塊の世代までは、それでも“儒教の匂い”を色濃く残した世代だったといえるのかもしれない。しかし、高度成長期以降に生まれた世代には、もはや「長幼の序」は通用しない。「家の宗教」である儒教は、家族そのものが崩壊することによって、その力を喪失していった。

 私は新著のなかで、「家族という幻想からの脱却」「(子どもに)棄てられる前に棄てる」を提案した。決断させたのは、桜井政成さん(立命館大学政策科学部教授 副部長・政策科学)のブログを目にしたからだ。

 「江戸時代以降の伝説のいくつかについては、高齢者が一軒家に集住し、互いに助け合いながら生活し、そして死を迎えたという。すなわち、今でいう『セルフヘルプグループ活動』『コーポラティブハウス』がすでに近世のムラ社会には存在していた可能性が高いのである。

 たとえば柳田国男の『遠野物語』には、『デンデラ野』という地域で、高齢者相互扶助システムが行われていた伝説が掲載されている」(考えるイヌ~桜井政成研究室~)と述べている。このブログを読み、自主運営する「ぐるり」こそが、これから最も必要とされるコーポラティブハウスだと確信している。

 行政のセーフティネットを巧みに利用し、行政の“真意”を見極めつつ、自分たちの強い意思で地域をつくり上げていく。「集合住宅(団地)が住民を殺す」という現実から逃れる方法はそれしかない。

(つづく)

<プロフィール>
大山 眞人(おおやま・まひと)

1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。ニュースサイト「NetIB-NEWS」で『大さんのシニアレポート』を連載中。2月に『親を棄てる子どもたち』(仮題・平凡社新書)を刊行予定。近著に、『悪徳商法』(文春新書)、『団地が死んでいく』(平凡社新書)、『騙されたがる人たち』(講談社)など。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年07月16日 12:00

安穏とした新天町は“茹でガエル”になっていないか!?NEW!

 カエルを熱いお湯に入れると、驚いて飛び跳ねて逃げてしまうが、常温の水に入れて徐々に熱していけば、気づかずに茹で上がってしまうという。俗にいう「茹でガエル理論」だが、...

2019年07月16日 11:42

博多祇園山笠、追い山大いに賑わうNEW!

 福岡・博多の初夏の風物詩である博多祇園山笠が15日早朝、フィナーレとなる「追い山」を迎えた。

2019年07月16日 07:00

鳥栖市の農地法違反問題 協議丸2年続くも是正メド立たず(後)NEW!

 問題が起きてしまった以上、その原因究明や対策について検討していくことは当然だが、何よりも優先すべきは、この違法状態をどうやって正常に戻していくかである。第三者委員会...

2019年07月16日 07:00

活用策は「上階を開放」――大転換期で新天町は生き残れるか!?(後)NEW!

 天神に限らず、ヨーロッパの街にあって日本の街にないもの、それは都心の中心部のマーケットです。観光に特化したようなマーケットもあれば、日常生活に特化したようなマーケッ...

2019年07月15日 15:05

【タイトル】梅雨空を吹っ飛ばせ!「MIYA-JICK」開催

  野外ステージエリア  今年で15回目となる野外音楽祭「MIYA-JICK(ミヤジック)」が14日(日)、15日(月・祝)、宮地嶽神社(福岡...

2019年07月15日 07:00

コスモス薬品5月期、9.5%増収 経常は8.1%増益

 コスモス薬品の2019年5月期連結決算は、93店を出店した効果で売上高は前期比9.5%増、経常利益は8.1%増となった。

2019年07月15日 07:00

【本日(7/15)午後2時から】地域福祉フォーラム「地域の数だけある、居場所のカタチ」開催

 地域福祉フォーラム「地域の数だけある、居場所のカタチ」が本日(15日)、福岡市博多区の福岡国際会議場で開催される。

2019年07月14日 18:19

【速報】福岡県粕屋町の須恵川での遺体発見、容疑者を逮捕

   福岡県粕屋町の須恵川で8日午後に村尾照子さん(38)の遺体が見つかった殺人・死体遺棄事件で、福岡県警は今日、男性1人を逮捕。逮捕されたのは粕屋町江辻の土木作業員...

2019年07月14日 07:00

リテールパートナーズ第1四半期 微減収、増益 販管費増を吸収できず

 リテールパートナーズの第1四半期(2019年3~5月、連結)は食品スーパー事業が振るわず、前年同期比0.1%の微減収になった。販管費の増加を吸収できず、経常利益は1...

2019年07月14日 07:00

西鉄ストア、「ラー麦餃子」を発売~「ラー麦女子部」による試食販売イベントも

 西鉄ストアはラーメン用小麦「ラー麦」を使用した「ラー麦餃子」を本日14日(日)から、福岡県内18店舗で発売する。

pagetop