2024年04月16日( 火 )

集めて・混ぜて・つなげて・尖らせる 新しい価値の創発へ(前)

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(一社)まちはチームだ 代表理事 岡 秀樹 氏
(コワーキングスペース秘密基地 代表)

 国土交通省では現在、イノベーションの創出を促す「対流促進型国土」の形成を国土の基本構想として推進。そのなかで、「知的対流拠点」として位置づけられているのがコワーキングスペースである。北九州市の中心部である小倉・魚町にある「コワーキングスペース秘密基地」の代表であり、(一社)まちはチームだの代表理事も務める岡秀樹氏に、変革する時代における、地方でのまちづくりの在り方について話を聞いた。

多彩なフリーランスが集い、協業して新しい価値を生み出す

 ――2018年6月に開催された国土交通省主催の「コワーキングスペースサミット2018」では、パネリストとして登壇されたとお聞きしました。

岡秀樹氏(左)とインスタグラマーの栗山喬氏

 岡 以前、この「コワーキングスペース秘密基地」に石井啓一・国土交通大臣が視察に来られたこともありますが、国土交通省でもこれまでの「箱モノ」に対する反省から、今後、そうでないかたちのまちづくりをどうしていけばいいのか、いろいろと考えておられるようです。そうしたなかで開催された「コワーキングスペースサミット2018」は、さまざまな人や情報の対流促進の場であるコワーキングスペースを、イノベーション創出の「知的対流拠点」と位置づけ、その対流事例や課題を共有するとともに、登壇者や参加者同士の新たなつながりによる対流促進を目的としたものでした。いろいろと活発な議論が行われたのではないかと思います。

 ――近年、いろいろと増えてきていますが、「シェアオフィス」と「コワーキングスペース」との違いとは何でしょうか。

 岡 まず、「コワーキング(COWORKING)」というのは、「CO(協)」+「WORKING(働く)」ということです。そこで、場所貸しのみの「シェアオフィス」に対して、「コワーキングスペース」では、コミュニティ形成と協業支援、成長支援を行っており、こうした機能があるかないかが、一番の大きな違いだといえます。そしてコワーキングスペースでは、「Contribute to the Community(コミュニティに貢献する)」の精神の下、多彩なフリーランスが集い、協業し、新しい価値を生むビジネスを創造しているのです。

 たとえば事例を挙げてみますと、InstagramやTwitter、Facebookなどの専門家たちが集まり、SNSマーケティングのようなジャンルを確立して、市のコンサルティングなどをここ秘密基地で行っています。これは、いわゆる同業型協業になるのですが、2年間で15件のSNSマーケティング案件を受注するなどの成果を上げました。また、異業種での協業事例でいうと、ミュージシャンや建築家、料理人、グラフィックデザイナー、Facebookコンサルティングなどが協業することで、「北九州フードフェスティバル」という、約3.5万人もの人々を集客する力をもった北九州のメガイベントを生み出しました。このイベントも、別にイベントメーカーが企画して生み出したのではなく、我々が協業することによって生まれて、新規参入していったケースです。そして根本をいえば、コワーキングスペースにコミュニティ形成と協業支援、成長支援があるからできるのです。

 我々はそのように、協業でマッチングさせていくこと―「この人とこの人をつないでいけば、何か面白いものが生まれるのではないか」みたいなことを常に考えていて、簡単にいうとコワーキングスペースとは、それを行う場所になります。

大前提となる基礎知識のインストール

 ――コワーキングスペースを拠点とした協業によって、さまざまな新たなビジネスなどが生まれてくるわけですね。

新しい生き方をつくるためのノウハウを教える場「創生塾」

 岡 ただし、ここで気をつけておかなければならないのは、誰でもここを訪れたら、すぐにマッチングや協業などが起こるかというと、起きません。起きるようにするためには、それぞれの頭のなかに1つのOSのようなものをインストールしなければならないのですが、そのための場として我々は「創生塾」という取り組みを行っています。

 創生塾では「知見と体験のシェアリング」を謳っていますが、その名の通り「生き方を創る塾」であり、新しい生き方をつくるためのノウハウを教える場です。たとえば、「これからこういう社会になっていく」という話や、そのなかで「どういうふうにしたら価値貢献ができる人になるのだろうか」など、社会のなかにおける自分のポジションや自分が貢献できるドメイン(事業領域)などを学び、そこで共通言語や基礎知識が増えていくわけです。たとえば、本日同席している栗山は創生塾の講師としてSNSの話をするのですが、「SNSって、こう使えばビジネスに利用できるんだ」という発想や、「Webマーケティングとは何か」「ブログにはどういう効果があるのか」「Facebookにはどんな特徴があるのか」など、いわゆる現代的なツールを、現代の理解とともに使いこなせるような人を育成しています。そうした基礎知識などを身に付けた人がコワーキングスペースに集まり、いろいろな出会いがあるなかで、新しい価値が生み出されていっているのです。

 今、フリーランスの人が非常に増えてきていますが、実は都会のフリーランスと地方にいるフリーランスとでは、地方のフリーランスのほうがとても高い能力をもっています。というのも、捌く仕事が多い都会に対して、地方では何もないところから仕事を生み出したり、価値を創造できる人間じゃないと、フリーランスとして成立できないからです。そういう能力の高い地方のフリーランスが集まり、連携すると、非常に面白いインパクトが起きます。そうしたインパクトを、我々は次々に起こしていきたいと思っています。

(つづく)
【坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
■(一社)まちはチームだ

代 表:岡 秀樹
所在地:北九州市小倉北区京町2-2-19
設 立:2016年3月
資本金:1,600万円
URL: http://machi.team

■コワーキングスペース秘密基地
代 表:岡 秀樹
所在地:北九州市小倉北区京町2-2-19
設 立:2014年1月
資本金:1,600万円
URL: https://coworking802.com

<プロフィール>
岡 秀樹(おか・ひでき)

1976年、北九州市出身。豊橋技術科学大学卒業後、ロンドンのAAスクールへ留学。2003年に帰郷し、14年にコワーキングスペース「秘密基地」(運営会社:(株)HOA)を開設。16年3月に(一社)まちはチームだを設立した。現在、「知見と体験のシェアリング」をミッションにさまざまな講義を行う「創生塾」を始め、精力的な活動を行っている。

(後)

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