2024年03月29日( 金 )

集めて・混ぜて・つなげて・尖らせる 新しい価値の創発へ(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(一社)まちはチームだ 代表理事 岡 秀樹 氏
(コワーキングスペース秘密基地 代表)

つながらないと生きていけない社会に

 ――16年には、「まちはチームだ」を設立されていますね。

コワーキングスペース秘密基地

 岡 この「まちはチームだ」は、「秘密基地」に集まるフリーランサーたちが、地域の課題を解決するために立ち上げた一般社団法人です。ここでは、地域プロジェクトや事業プロデュースを通じて未来創生に貢献することを目的としており、人に焦点を当てたコミュニティを形成し、場をつくっていくことで、複雑性の高い社会での新たな価値創発と成長を実現していこうとしています。

 我々が目指しているのは、これまでの資本主義の「競争する社会」―たとえば、限られた資源をいかに得るかとか、どれだけ多くの資本をもつか、いかに自分が強い立場になるか、といったような価値観から、「創発する社会」―いかに自ら価値提供をし、どれだけ多くを分かち合うか、いかに全体が満たされるかなど、「価値を創り、共有する」価値観の社会への転換です。いわば“パイをつくる側に立とう”みたいなことを考えています。そのためには、自分のもっているスキル、もしくは価値みたいなものを、きちんと見つめなければなりません。

 たとえば、それぞれがもっている「自分は料理がつくれる」「自分は台所を提供できる」「牛乳を提供する」「卵を提供する」みたいな、1つひとつであればそんなにすごくないことでも、皆が合わさると、この「パイ」ができるわけです。要は、自分を越えたなかにおける価値貢献の在り方みたいなものを、主軸に据える必要があります。そうしないと、連動するというか、社会がつながっていくということに対する意味がわからないんですね。

 もう1つ、これまでの20世紀型社会システムでは、「積み上げの生産性」といって、誰もが平均点レベルで均一化することを図る傾向がありました。皆がすべてのステータスを6割くらいはもっていて、ダメな部分もない代わりに、あまり突出したこともない。それぞれの個人が、平均的に自己完結できるだけの力を備えています。一方で、これからの21世紀型社会システムでは、「創発による生産性」といって、それぞれ個々人の強みを生かして、圧倒的なレベルでの課題解決・価値創造を実現していく仕組みへと変わっていきます。今はこの「創発による生産性」に向かおうとしているのです。「積み上げの生産性」では、いくら足し合わせても平均値が出るだけで、全然振り切れません。しかし「創発による生産性」では、足し合わせれば足し合わせるほど、つながればつながるほど、圧倒的なポテンシャルを発揮していきます。そして、これからいろいろなかたちで変化していく時代のなかで、このかたちにならないと荒波を乗り越えることはできません。つまり、これまではつながらなくても生きていけましたが、これからはつながらないと生きていけない、ということです。

住民が主体性をもって地域の課題に取り組む

 ――いろいろと、非常に面白いお話です。

 岡 昔は地域というものは、まちの盟主みたいな人が中心となってまちづくりを行っていました。ですが、時代の移り変わりで行政がまちづくりを主導するようになると、いわゆる“箱モノ”が乱立されました。そしてこれからは、行政ではなく、地域の人が頑張らないといけない、というフェーズになってくるわけです。まちに住む人々が、主体性をもって課題に取り組むことが必須です。自分のため、相手のため、そしてまちのために、新しい生き方を見つけていくこと、それこそが、これからの地方活性化のスタイルです。

 我々もまちのマーケティングなどで、まちづくりの支援やコンサルティングを行っていますが、「まちはチームだ」とあるように、やはりチームのメンバーである、そのまちに住む人々がやるべきなんです。我々は外野であり、助っ人外国人みたいな立場ですから。もちろん、皆が強くなって戦っていくほうが面白いという発想をもっていますので、これまで述べてきたような“武器”の提供は行っていきます。

 結局のところ、「価値とは何か」なんですよ。「地域の価値とは何か」とか、「価値がどこにあるか」などをしっかりと見つめたうえで、地域が成長していくというところに振り切らないといけません。浅いところだけ東京からもってきて真似するみたいなことが“箱モノ”になるのであって、その本質的な議論にまっすぐ向き合える、もしくはフラットに向き合える―そういう心の在り方が必要になります。それがないと、何かオシャレではあるけれど、心がこもっていなくて続かない、イベント型のコンサルティングでのまちづくりになってしまいがちです。そして地方では、そういうものがいまだに多いじゃないですか。

 まちの主人公たる住民の方々が、しっかりと自分たちのことを見つめるという過程を経ずして、まちづくりは絶対に成立しません。そのため、我々がやっている一番メインのまちづくりは、まちの人々の根幹にある心を勇気づけ、プライドに火を点けること。そこを我々は一番大事にしています。

(了)
【坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
■(一社)まちはチームだ

代 表:岡 秀樹
所在地:北九州市小倉北区京町2-2-19
設 立:2016年3月
資本金:1,600万円
URL: http://machi.team

■コワーキングスペース秘密基地
代 表:岡 秀樹
所在地:北九州市小倉北区京町2-2-19
設 立:2014年1月
資本金:1,600万円
URL: https://coworking802.com

<プロフィール>
岡 秀樹(おか・ひでき)

1976年、北九州市出身。豊橋技術科学大学卒業後、ロンドンのAAスクールへ留学。2003年に帰郷し、14年にコワーキングスペース「秘密基地」(運営会社:(株)HOA)を開設。16年3月に(一社)まちはチームだを設立した。現在、「知見と体験のシェアリング」をミッションにさまざまな講義を行う「創生塾」を始め、精力的な活動を行っている。

(前)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事