2024年04月19日( 金 )

再生による賑わいの創出 北九州市リノベーションまちづくり

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 人口減少や高齢化などを背景として、全国各地の地方都市で中心市街地などの衰退や空洞化が深刻な問題となっている。そうしたなか北九州市では、遊休不動産の再生によって都市型産業の集積を行うという新しいかたちのまちづくり―「リノベーションまちづくり」の取り組みを推進。その成果は、着実に表れ始めている。

現代版家守による中心市街地の再生・活性化

 北九州市では、人口の減少とともに、小倉都心部ではオフィス空室率が2010年ごろをピークに上昇し、商業エリアではテナントが撤退するなど、次第にまちなかの賑わいが減少するという状況に直面していた。そこで市は、中心市街地の活性化に向けた取り組みを模索。新たな取り組みとして、「リノベーションまちづくり推進事業」をスタートさせた。

 市が、縮退する社会のなかで疲弊した地域を再生させるために目を付けたのが、江戸時代における地区のマネージャー的存在である「家守(やもり)」を現代に復活させた“現代版家守”である。地域再生プロデューサーの清水義次氏を招いて、同氏を中心に2010年7月に「小倉家守構想検討委員会」を設置。地域再生の解決方法として、小倉地区中心市街地において都市型産業の集積を促進させることが重要だとの認識が示され、11年3月に「小倉家守構想」が策定された。その概要は、小倉地区の遊休不動産や公園・広場などをリノベーションの手法を用いて再生し、多様な都市型ビジネスを集積させて質の高い雇用を創出することにより、産業振興やコミュニティ再生を行っていくというもの。同年6月にはリーディングプロジェクトとして、「メルカート三番街」と「フォルム三番街」がオープンしたほか、同年8月には第1回目の「リノベーションスクール」も開催された。

 また一方で、12年4月には商店街関係者などのまちづくり事業者のほか、不動産事業者、学識経験者で構成される「北九州リノベーションまちづくり推進協議会」を設置。地域コミュニティの再生に向けた取り組みが本格化していった。同年4月には初の民間自立型家守事業者として「(株)北九州家守舎」が設立され、「リノベーションスクール」の企画・運営に加え、数々のリノベーションプロジェクトが進められることになる。なお、そうした北九州市小倉都心部における「まちの再生」に取り組むための仕組みづくりのほか、“まちづくりの担い手”を多く送り出してきたことが高く評価され、北九州家守舎は14年6月に「第3回まちづくり法人国土交通大臣表彰」の「国土交通大臣賞」を受賞した。

 その後、北九州市におけるリノベーションまちづくりの取り組みは、小倉エリア外にまで活動の範囲は広がり、門司港や黒崎、若松などでもリノベーションプロジェクトが進行。これまでに約600人の新規雇用者と、200人以上の新規創業者の創出に成功するなど、着実に成果を積み重ねてきている。

エリアに賑わいを生んだ“Win-Win-Win”の関係性

 北九州市の「リノベーションまちづくり」の取り組みの特徴としては、単に「建物の改修」だけにとらわれていないことが挙げられる。ここで行われているのは、建物だけでなく、その空間を使う「人」や、その「使い方」まで含めた意味合いでのリノベーション。さまざまな人々を巻き込みながら、エリアに新しいまちのコンテンツを生み出す取り組みを実施している。

 取り組みにあたっては行政と民間とが連携し、それぞれの役割を分担して推進。行政では、建築物の用途変更や消防法の適用確認などの行政手続きを一本化するとともに、広報PRや不動産オーナーへの啓発などを担当している。一方の民間事業者は、前出の北九州家守舎のように、建物のリノベーションを通じて仕事を生み出し、エリアに新しいコンテンツを集める実務を行っている。

 この両者の連携に加えて必要不可欠だったのが、志のある不動産オーナーたちの存在だ。「まちに住み、まちを愛し、自ら行動する」気概をもった彼らは、自らが有している遊休不動産を、リノベーションスクールでの事業プラン策定の対象などに提供し、数々のリノベーションプロジェクトが進められてきた。その結果として多くの遊休不動産が再生され、まちなかに新たなビジネスが誕生。まちに新たな賑わいを創出した。こうして、民間事業者にとっては新たなビジネスを生み出す場の確保、不動産オーナーにとっては所有する遊休不動産の価値向上、そして行政にとってはまちの賑わいを取り戻すという、いわば“Win-Win-Win”の関係性が生まれている。

 北九州市でのリノベーションまちづくりの取り組みは、人口減少により地価が下がるという、いわばマイナスの状況を、発想の転換によって「地価が下落することは家賃が安くなり、新たな事業を始めやすくなる」として捉え直したことから始まった。行政側の窓口である北九州市産業経済局の商業・サービス産業政策課の担当者は、「小倉魚町エリアでの成果をもとに、小倉以外のエリアへの広がりもさらに加速させていきたいと思っています」とコメントする。

 遊休不動産をリノベーションによって再生し、そこに都市型の産業を集積させるという、ハードに依存しない新たなまちづくり。こうした北九州市の取り組みは、人口減少下であえぐ全国各地の地方都市にとって、現状を打開するための大きなヒントとなり得るかもしれない。

【坂田 憲治】

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