再生による賑わいの創出 北九州市リノベーションまちづくり
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年01月11日 14:30

再生による賑わいの創出 北九州市リノベーションまちづくり

 人口減少や高齢化などを背景として、全国各地の地方都市で中心市街地などの衰退や空洞化が深刻な問題となっている。そうしたなか北九州市では、遊休不動産の再生によって都市型産業の集積を行うという新しいかたちのまちづくり―「リノベーションまちづくり」の取り組みを推進。その成果は、着実に表れ始めている。

現代版家守による中心市街地の再生・活性化

 北九州市では、人口の減少とともに、小倉都心部ではオフィス空室率が2010年ごろをピークに上昇し、商業エリアではテナントが撤退するなど、次第にまちなかの賑わいが減少するという状況に直面していた。そこで市は、中心市街地の活性化に向けた取り組みを模索。新たな取り組みとして、「リノベーションまちづくり推進事業」をスタートさせた。

 市が、縮退する社会のなかで疲弊した地域を再生させるために目を付けたのが、江戸時代における地区のマネージャー的存在である「家守(やもり)」を現代に復活させた“現代版家守”である。地域再生プロデューサーの清水義次氏を招いて、同氏を中心に2010年7月に「小倉家守構想検討委員会」を設置。地域再生の解決方法として、小倉地区中心市街地において都市型産業の集積を促進させることが重要だとの認識が示され、11年3月に「小倉家守構想」が策定された。その概要は、小倉地区の遊休不動産や公園・広場などをリノベーションの手法を用いて再生し、多様な都市型ビジネスを集積させて質の高い雇用を創出することにより、産業振興やコミュニティ再生を行っていくというもの。同年6月にはリーディングプロジェクトとして、「メルカート三番街」と「フォルム三番街」がオープンしたほか、同年8月には第1回目の「リノベーションスクール」も開催された。

 また一方で、12年4月には商店街関係者などのまちづくり事業者のほか、不動産事業者、学識経験者で構成される「北九州リノベーションまちづくり推進協議会」を設置。地域コミュニティの再生に向けた取り組みが本格化していった。同年4月には初の民間自立型家守事業者として「(株)北九州家守舎」が設立され、「リノベーションスクール」の企画・運営に加え、数々のリノベーションプロジェクトが進められることになる。なお、そうした北九州市小倉都心部における「まちの再生」に取り組むための仕組みづくりのほか、“まちづくりの担い手”を多く送り出してきたことが高く評価され、北九州家守舎は14年6月に「第3回まちづくり法人国土交通大臣表彰」の「国土交通大臣賞」を受賞した。

 その後、北九州市におけるリノベーションまちづくりの取り組みは、小倉エリア外にまで活動の範囲は広がり、門司港や黒崎、若松などでもリノベーションプロジェクトが進行。これまでに約600人の新規雇用者と、200人以上の新規創業者の創出に成功するなど、着実に成果を積み重ねてきている。

エリアに賑わいを生んだ“Win-Win-Win”の関係性

 北九州市の「リノベーションまちづくり」の取り組みの特徴としては、単に「建物の改修」だけにとらわれていないことが挙げられる。ここで行われているのは、建物だけでなく、その空間を使う「人」や、その「使い方」まで含めた意味合いでのリノベーション。さまざまな人々を巻き込みながら、エリアに新しいまちのコンテンツを生み出す取り組みを実施している。

 取り組みにあたっては行政と民間とが連携し、それぞれの役割を分担して推進。行政では、建築物の用途変更や消防法の適用確認などの行政手続きを一本化するとともに、広報PRや不動産オーナーへの啓発などを担当している。一方の民間事業者は、前出の北九州家守舎のように、建物のリノベーションを通じて仕事を生み出し、エリアに新しいコンテンツを集める実務を行っている。

 この両者の連携に加えて必要不可欠だったのが、志のある不動産オーナーたちの存在だ。「まちに住み、まちを愛し、自ら行動する」気概をもった彼らは、自らが有している遊休不動産を、リノベーションスクールでの事業プラン策定の対象などに提供し、数々のリノベーションプロジェクトが進められてきた。その結果として多くの遊休不動産が再生され、まちなかに新たなビジネスが誕生。まちに新たな賑わいを創出した。こうして、民間事業者にとっては新たなビジネスを生み出す場の確保、不動産オーナーにとっては所有する遊休不動産の価値向上、そして行政にとってはまちの賑わいを取り戻すという、いわば“Win-Win-Win”の関係性が生まれている。

 北九州市でのリノベーションまちづくりの取り組みは、人口減少により地価が下がるという、いわばマイナスの状況を、発想の転換によって「地価が下落することは家賃が安くなり、新たな事業を始めやすくなる」として捉え直したことから始まった。行政側の窓口である北九州市産業経済局の商業・サービス産業政策課の担当者は、「小倉魚町エリアでの成果をもとに、小倉以外のエリアへの広がりもさらに加速させていきたいと思っています」とコメントする。

 遊休不動産をリノベーションによって再生し、そこに都市型の産業を集積させるという、ハードに依存しない新たなまちづくり。こうした北九州市の取り組みは、人口減少下であえぐ全国各地の地方都市にとって、現状を打開するための大きなヒントとなり得るかもしれない。

【坂田 憲治】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年05月26日 17:24

シリーズ「ホテル淘汰」(6)~緊急事態宣言全域解除「アフターコロナ後」の観光地・観光ホテルに求められる新基準(ニュー・ノーマル)

 コロナ騒動のなか、日田市日田温泉地区(隈町エリア)の三隈川の川沿いにある、「山水館」を運営する(株)リバーサイドホテル山水が5月15日、大分地裁日田支部に破産手続き...

2020年05月26日 16:59

福岡地所がグループ再編、キャナルシティなどの管理事業を分割へ

 福岡地所は6月1日、商業事業機能を完全子会社のエフ・ジェイエンターテインメントワークス(以下、FJeW)へ吸収分割する。

2020年05月26日 16:24

日経平均株価~緊急事態解除で前日比+ 529.52円の21,271.17円

 安倍首相は25日夜、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言を31日まで継続していた首都圏の1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)と北海道に対して、期...

2020年05月26日 15:30

(株)ニューオータニ九州の社長~新しい価値観のもと「できないことができた」

 新型コロナウイルスの衝撃で観光業全体が苦境に喘ぐなか、ホテルは新たな取り組みを始めている。ホテルニューオータニ博多は当地のシティホテルとして初めて弁当、オードブルの...

2020年05月26日 14:32

コロナ対策 福岡市独自の事業者向け支援策総まとめ(5/22版)

 福岡市の新型コロナウイルスに関する事業者向け支援策について、市独自の支援策と問い合わせ窓口を総まとめ...

ここからツイッターデモの威力が問われる

 毎日新聞世論調査で安倍内閣の支持率が3割を切った。黒川検事長の常習賭博罪が発覚したにもかかわらず、安倍内閣は黒川検事長に対する懲戒処分を行わず、6,000万円を超え...

2020年05月26日 11:46

台湾が観光業の規制を3段階で緩和~外国人観光客の入国緩和は10月以降か

 EU各国は、6月からの海外観光客受け入れ再開(各国で条件は異なる)を目指して動いているが、アジアでは台湾が観光業支援のため、防疫に関する規制を徐々に緩和していく計画...

2020年05月26日 11:19

「徒歩の調査」から見た福島第一原発事故 被曝地からの報告(前)

 原発推進派の方も、原発事故が起きたらどのようになるか、この報告を読んで考えていただきたい。本報告では、私が体験した「福島第一原発事故の現実」を書かせていただく。なお...

2020年05月26日 10:51

【コロナ禍のなかで】業績と記憶を残して去る人、忘れ去られる人と企業(後)

 2008年のリーマン・ショックでも数多くのデベロッパーの倒産が発生した。その過程で話題を提供した丸美のことを記憶しているのは関係者のみ。わずか12年の歳月で「疎くな...

2020年05月26日 09:58

投資法人みらい、WBFホテルをオフィスに転換へ

 投資法人みらいは、運用資産のホテルWBF淀屋橋南(大阪市中央区)について、テナントとの賃貸借契約を解除し、オフィスへコンバージョンする計画があることを発表した。

pagetop