2024年04月19日( 金 )

確認しておきたい定年退職後の再雇用制度

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 人手不足が深刻化するなかで、高齢者の活用も重要なポイントになります。定年を60歳とする会社が多いかと思いますが、65歳未満の定年の定めをしている場合には、(1)「定年を65歳以上に引き上げ」、(2)「65歳までの継続雇用制度の導入」、(3)「定年そのものの廃止」のいずれかを実施する必要があります。

 継続雇用制度とは、本人が希望すれば、定年退職後も引き続き当該会社やグループ会社で雇用する制度です。継続雇用制度は、いったん退職した社員と、新たな労働契約を締結して再雇用する制度ですので、各会社の実情に応じて柔軟に内容を定め得るものと解されており、1年契約の更新や、短時間勤務・隔日勤務などの雇用形態も可能であり、賃金その他の処遇は会社の労使協議などに委ねられていました。継続雇用制度では、1年更新の嘱託契約とする例が多いようですが、ある調査では、再雇用後の賃金が定年前の賃金の60~70%に減額になる会社が最も多いという結果もあります。そのため、再雇用労働者を単に安い労働力と考えてはおられないでしょうか。

 この点について、定年退職後に再雇用された嘱託社員が、定年前と同じ仕事内容にもかかわらず、賃金を2割以上引き下げられたとして、定年後の給料引き下げは不合理だと争った「長澤運輸事件」の最高裁判決(平成30年6月1日判決)があります。前号でも説明しました労働契約法20条は、正社員と嘱託社員との間で、不合理な労働条件の違いを禁止し、格差の合理性については、(1)「職務内容(業務の内容や責任の程度)」、(2)「職務内容や配置の変更の範囲」、(3)「その他の事情」の3要素を考慮して判断するとしています。最高裁は、定年後再雇用であること(長期間雇用は通常予定されていないことや、老齢厚生年金の支給が予定されていることなど)を「その他の事情」として考慮することを認めるとともに、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと判断しました。

 そのうえで、「精勤手当」は、休日以外に1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給されるものであり、定年後嘱託社員と正社員との間で、皆勤を奨励する必要性に相違はないとして、嘱託社員に精勤手当を支給しないことを不合理と判断しました。他方、住宅手当・家族手当や賞与の差については、不合理とは認められないとしました。

 このように、定年後再雇用であることが、賃金格差を不合理でないとする1つの事情になることを正面から肯定しましたが、定年後再雇用であることと関連のない手当については、正社員と同一の支給が求められます。この点で、今後、各種手当の存続の要否を含めて検討が必要になります。

 また、手当については、差異が不合理なものについては同一にすべきとしていますが、基本給については明確に述べていません。職務上の違い、異動の違い、人事評価、責任の違いを明確にして、賃金制度が異なることについて説明ができるのであれば、賃金制度自体が異なることは許容されているといえるでしょう。

 今後、法に反しない待遇をしていくためには、賃金制度自体の見直しが必要になる可能性もありますので、ぜひ、労働法制に詳しい弁護士にご相談ください。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士

1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。岡本綜合法律事務所 代表。
 

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