• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年02月19日 11:28

『親を棄てる子どもたち ―新しい「姨棄山」のかたちを求めて』の意味するところ(前)

大さんのシニアリポート第76回

『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)をようやく上梓することができた。書き始めてから2年を要した。タイトルにあるように、「家族の崩壊」を書いた作品なのだが、これが一般的な内容ではなく、私が実際に住んでいる地域の「棄老」というリアルを「現場報告」「定点観測」的な構成にこだわったためである。つまり、「個人(家族)が特定されることへの排除」に苦慮した。筆者が「現場の事実」をさらけ出すという手法にはかなりの勇気を要した。

『親を棄てる子どもたち 
新しい「姥捨山」のかたちを求めて』

 「自分が住む地域の“棄老事件”を自ら告発する」という前代未聞の苦労を強いられたのは、私が運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)で実際に起きた「棄老事件」を無視できなかったからだ。3年前の春、社会福祉協議会社会福祉協議会(社協)と組んで、この地域の福祉全般の相談に乗るという取り組みに挑んだ。社会福祉士の資格を有するベテランのYさんの目には、「市内で最も劣悪な環境にある」といわれるこの地区の実像が見えていたのだ。年に数件ある飛び降り自殺は、その悲惨さゆえ住人の口に上るものの、すぐにいつもの生活に戻った。住人の目には、深層に潜む「地域の異常さ」は映らない。

 この欄で再三報告したので「棄老事件」の詳細は省くが、Yさんに急かされるようにして関わりをもつと、不思議なことに「地域の異常さ」に気づき、見えてくるものなのである。1つが見えてくると、周辺にあるほかの「異常さ」が見えてくる。当事者だけではなく、それに関わりをもつ行政の関係部署、地域包括支援センター(包括)、介護施設、病院などとのつながりがいかに希薄なものなのかが見えて、唖然とさせられた。

「よろず相談」の看板

 「個人情報保護法」は役人の「いい訳」と「護身用の壁」として都合よく使われ、肝心の住民に開示されることはない。「地域に住む住民が主役」「みんなで高齢住民や生活弱者を見守りましょう」と叫ぶ行政マンの声が空しく聞こえる。ボランティアも、結果として行政の便利な手足として使い回され、個人の本意は無視されがちである。もっとも「それがボランティアというもの」という声に納得して関わるボランティアも少なくない。私はボランティアという意識で「棄老事件」に関わったのではない。運営する(運営費の捻出からスタッフや来亭者への気配りまで)「ぐるり」と同様、地域住民(地域に住む知人)という立場にこだわった。知人なら、役所の規則に縛られることなく、自由に行動することが可能だ。みずからその案件に「関わる」「関わらない」という納得性をもつことが最も重要だと思っている。

 拙著の目次を配列してみたい。「1章 実の子が親を棄てていく」「2章 親を棄てた子の事件簿 詐欺の被害にあった親を罵倒する子/子に棄てられた親の孤独死/遺骨の引き取りさえも拒否する子 「3章 親を棄てられなかった私 妻と私の母親介護日記/親の介護でみえてきた問題点」「4章 『棄老』に至る要因の根底には」「5章 認知症とすれ違う家族の思い」「6章 なぜ、子は親を棄てるようになったのか」「7章 持続可能な『高齢者扶助システム』を目指して」。地域の実情を報告するだけではなく、「棄老」に至るまでの要因と、私なりの解決策をまとめた。その意味では、前著『団地が死んでいく』(平凡社新書 平成20年)とは姉妹関係にある著書だと思っている。棄老の要因は「家族の崩壊」にある。しかし、一度壊れた家族の再構築はありえない。「家族という概念」は大きく変貌した。だから日本会議の唱える「『伝統的』な家族観の固守」もありえない。

(つづく)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年02月17日 18:55

東京マラソン、一般参加の中止~参加予定ランナーの声NEW!

 3月1日開催の東京マラソンは、新型コロナウイルス拡大の影響を受け、一般ランナーの出場を取りやめ、招待選手などエリート選手のみで行われることが決まった。

2020年02月17日 16:39

【定点観測】東京・午前8:00~マスク着用率は…

 都内ではマスクを着用する人の姿が多く見られるようになった。下の写真は、今朝の通勤時(午前8時ごろ)のものである。地下鉄丸ノ内線・中野坂上駅を降りて改札に向かう乗客の...

2020年02月17日 15:25

下請業者に不当な減額や返品を要求~伊藤忠商事の子会社に下請法違反

 公正取引委員会は2月14日、伊藤忠商事の100%子会社で、婦人服ブランド「レリアン」「キャラ・オ・クルス」「ランバンコレクション」などのブランドを展開する(株)レリ...

2020年02月17日 14:47

(株)INS(旧・(株)ヰノセント)(東京)/婦人服販売

 INSは2月14日、東京地裁に特別清算の申請を行った。

2020年02月17日 14:30

これからのカードは指紋センサー搭載カードに(前)

 中国発の新型コロナウイルスは全世界に大きなショックを与えており、新型ウイルスのワクチンがない現在、さらなる感染拡大が心配されている。新型コロナウイルスは感染者と接触...

2020年02月17日 14:00

老舗企業のお手本となるマネジメント~(株)未来図建設

 地場総合建設業の(株)未来図建設は地元のまちづくりに貢献し続け、顧客および取引先などステークホルダーから高い評価を受け絶大な信用を得ている。同社代表取締役・菅原正道...

人災としてのコロナウイルス感染拡大

 想定された事態が発生している。日本全国で新型コロナウイルス感染者が確認され始めた。しかも、中国・湖北省から日本に移動した人、中国・湖北省を訪問した人ではない。そもそ...

2020年02月17日 13:30

神奈川県知事肝いりで推進!「人生100歳時代の設計図」(後)

 人生100歳時代では、リタイアしてからスムーズにセカンドキャリア、あるいは新たな生活ステージに移行できるかがポイントとなる。

2020年02月17日 11:52

【書評】有森隆著『創業家一族』を読む~かつて日本の創業者は起業家精神が旺盛だった!(前)

 永らく日本はベンチャー不毛の地と言われてきた。インターネットの勃興に合わせて、米国ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が、中国にはBAT(バ...

2020年02月17日 11:30

【シリーズ】生と死の境目における覚悟~第2章・肉親を「看取る」ということ(4)

 石田弘次郎(仮名)は、母の葬儀を、ひとりですべて準備・段取りして、取り仕切った。「母が亡くなってから葬儀までは、悲しんでいる暇などなく、葬儀の準備から会葬していただ...

pagetop