2024年04月19日( 金 )

八重洲・日本橋、大規模再開発が目白押し 首都高の地下化も(前)

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これまで東京駅周辺では、主に丸の内側で再開発が進んできたが、八重洲・日本橋側でも再開発が目立つようになってきた。都市再生特区制度などさまざまな容積率緩和特例により、再開発の大型化が顕著となり、もはや数十万m2規模の再開発は珍しいものではなくなっている。三井不動産(株)や東京建物(株)などの大手デベロッパーによる再開発に加えて、国土交通省などの四者で構成する「首都高日本橋地下化検討会」は日本橋地下化の事業スキームなどを固めた。これから大きく変容していく八重洲・日本橋の今後の動向をリポートする。


竹中工務店が着工、八重洲二丁目北地区

東京駅前八重洲一丁目東地区
建物外観パース(中央通り)
(出典:内閣府HP)

 八重洲地区では、「東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業」「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」の3つの第一種市街地再開発事業が進行している。

 皮切りとなったのが、2018年12月に本格着工した「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」。基本設計・実施設計・監理は(株)日本設計、実施設計・施工は(株)竹中工務店がそれぞれ担当した。用途は事務所、店舗、ホテル、小学校、バスターミナル、交流施設、駐車場などで、敷地面積1万3,434m2、延床面積約29万3,049m2、階数と高さは、A-1街区が地上45階・地下4階(高さ約240m)、A-2街区が地上7階・地下2階(高さ約41m)。竣工は22年8月末を目指す。東京都都市整備局が公表しているデータによると、総事業費は約2,398億円だ。「日本の玄関口・八重洲にふさわしい、人が主役の街が誕生する」(三井不動産)という。

 交通機能をより強化するバスターミナル、日本初となる「ブルガリホテル東京」、八重洲地下街と接続した商業施設、中央区立城東小学校や子育て支援施設も整備される。また、オフィスはエリア最大級の基準階専有面積約4,000m2(約1,200坪)のフロアプレートを実現。ビジネス交流・サポート機能の整備に加え、ワーカー向けのソフトサービスも充実させ、よりクリエイティブなビジネスライフを過ごせる環境を創出する。

 地下1階でJR「東京駅」と接続しており、隣接する八重洲二丁目中地区竣工後には、東京メトロ銀座線「京橋駅」まで地下1階からアクセスが可能に。加えて、大規模バスターミナルの整備などにより、交通結節機能をさらに強化する。商業施設は隣接する八重洲地下街(ヤエチカ)と地下1階で接続、約60店舗が出店予定だ。

 開発区域内外に「電気」と「熱」を供給するエネルギーセンターを設置するが、この試みは三井不動産としては日本橋、豊洲エリアについで3事例目。このエネルギーセンターは、環境負荷低減に役立つだけでなく、災害時においても信頼性が高い中圧ガスによって発電するため、非常時にも建物のBCP(事業継続)に必要な電気の供給を受けることが可能となる。また、帰宅困難者の一時滞在施設や防災備蓄倉庫、災害用トイレを整備し、災害時における帰宅困難者のフォロー体制を整備する。

 外装デザインには、世界的に活躍する建築家のPickard Chiltonを起用。プロジェクトが面する外堀通りは、江戸城の外濠として水路であった歴史から着想を得て、大きく膨張する帆を意味する「Billowing Sail」をコンセプトに通過する船や帆をイメージし、東京駅前という立地に相応しい現代的で洗練された建物デザインとした。

八重洲側再開発の真打ちとは?

八重洲二丁目北地区
建物外観パース(中央通り)
(出典:内閣府HP)

 次の「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」は、約2.2haという巨大なエリアで、東京駅前八重洲側再開発の真打ちとも言われている。事業の素案によると、敷地面積約1万9,500m2、延床面積約41万8,000m2、主要用途は事務所、店舗、居住・滞在施設(サービスアパートメントなど)、インターナショナルスクール、バスターミナル、駐車場など。階数と高さは、地上46階・地下4階建の約240m。計画段階では、中央区と適切な連携を図り、既存組織である「東京駅前3地区合同連携連絡協議会」の場などを活用しながら、地区間の施設計画の調整やまとまりある景観形成に向けた各種調整などを行う予定。事業協力者は三井不動産、鹿島建設(株)、ヒューリック(株)で、コンサルタントは(株)日建設計。19年度の組合設立、20年度の権利変換計画認可を経て、22年度の本体着工、25年度の竣工を目指している。

 両プロジェクトとも国家戦略特区の認定済み。そして八重洲にはもう1つの大きなプレーヤーが存在する。「東京駅前八重洲一丁目東地区」を主導する東京建物である。「東京駅前八重洲一丁目東地区」では、19年の年明け早々ホットなニュースが飛び込んできた。まずは東京建物の戦略を紹介しよう。

 「次も選ばれる東京建物グループへ」をスローガンとする東京建物は、15~19年度にわたる5カ年中期経営計画を推進中。最終年である19年度目標は営業利益500億円だが、達成に自信を深めている。ビル事業については、本社がある東京駅前周辺エリアにおけるいくつかの再開発に権利者の一員として参画しており、ほかの権利者と協力しながら事業を推進している。

 東京都は1月11日、「東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発組合」の設立認可を決定した。これにより同組合は法人格を得て、再開発事業の施行者となり、事業に本格着手する。事業計画案によると延べ約23万m2の再開発施設は20年度の権利変換計画認可を経て、21年度に着工し、25年度の竣工を予定。総事業費は約2,104億円を見込む。

 建物規模は地上50階・地下4階建ての高さ約250m、延床面積22万9,750m2。国際空港や地方都市を結ぶバスターミナルを整備するほか、地上・地下の歩行者ネットワークの整備により、シームレス化・バリアフリー化を促進する。ビジネス交流施設などを整備し、日本橋で展開しているライフサイエンスビジネス拠点の形成を促進する。事業協力者として東京建物、(株)大林組、大成建設(株)が参画している。

 なお隣接するA地区約0.1haでは、準備組合が延床面積約1万2,200m2の施設を計画している。これまで、さまざまな勉強会や協議会を重ね、08年6月に市街地再開発準備組合を設立、15年9月の都市計画決定を経て、再開発組合設立に向けて準備を行ってきた。

 計画地は東京駅前に位置し、地下鉄「日本橋駅」や「京橋駅」などに近接する交通利便性の高い地域。江戸時代から商業・文化の中心地としても賑わっており、日本橋や銀座にも隣接するなど、商業機能や伝統・文化の集積地でもある。東京建物では国際都市・東京の“陸の玄関口”として、八重洲エリアや東京全体のさらなる賑わい創出と国際競争力の向上に資する事業として権利者とともに進める方針だ。

(つづく)
【長井 雄一朗】

(後)

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