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2019年03月10日 07:01

ベトナムで開催された米朝首脳会談の舞台裏を探る(後) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 そして止めを刺したのは、ボルトン補佐官の入れ知恵と思われるが、トランプ大統領による「生物化学兵器の全廃要求」であった。ポンペイオ国務長官やボルトン補佐官も合流した首脳会談の席上、アメリカ側は北の所有するすべての核兵器の破棄に止まらず、生物化学兵器の破棄も要求したのである。これは事前の事務レベル協議でも議題に上がっていないもの。突然の如く、トランプサイドから新たな要求を突き付けられ、金正恩サイドも息が詰まったと思われる。

 とはいえ、こうした隠し玉の準備はサミットの始まる前から仕込まれていたに違いない。「知らぬはトランプ大統領のみ」といったところであろう。北朝鮮をまったく信用していないポンペイオ、ボルトン2人組にとっては用意周到に準備してきたシナリオで、あらかじめ「サミット破綻」は決まっていたのである。表に出ないが国防総省も長官不在とはいうものの、危機感を共有しており北朝鮮との合意には反対する動きを示していた。

 「寝耳に水」状態のトランプ大統領は「破綻に至った原因は民主党によるコーエン弁護士の証言だ」との責任転嫁に走ったが、それでは世論が納得しないと思ったせいか、新たに「北朝鮮はミサイル実験場の修復や補強に取り組んでいるようだ。これが本当なら金正恩には失望だ」と言い始めた。こうした情報はハノイでの首脳会談の前から明らかになっていたわけで、決裂の理由づけに対北朝鮮強硬派から入れ知恵され、「後出し」で公表されたのであろう。

 こうした一連のやり取りからうかがえることは、アメリカは本気で北朝鮮と交渉する意図は希薄だということに尽きる。いうまでもなく、アメリカにとって北朝鮮は吹けば飛ぶような弱小国家である。人口は微増傾向にあるとはいえ2,400万人。アメリカの13分の1に過ぎない。国土面積でいえば、12万km2。ギリシアよりも小さい。GDPで見れば、世界最貧国であり、アフリカのガンビアと同じ経済規模。国民1人あたりのGDPでは1200ドルに過ぎず、モザンビークと肩を並べる程度。

 そんな程度の国が世界に冠たる超大国のアメリカと対等に交渉のテーブルにつくなどもってのほかだという思いがアメリカの指導層の間では根深いようだ。このままでは、3度目の米朝首脳会談は当分ありそうにない。となれば、経済的に苦しい状況が加速する北朝鮮とすれば、中国やロシアとの関係を強化する方向に動くことは間違いない。中国の習近平主席とは相次いで会談を重ねており、ロシアのプーチン大統領からも金正恩委員長宛の招待状が届いているからだ。国連による制裁緩和に向けては中国とロシアが前向きに動いており、北朝鮮は実質的には中国ともロシアとも経済関係は維持している。

 となれば、アメリカはより強硬な制裁発動へ舵を切る可能性も高まる。金正恩委員長とすれば、「アメリカに最大限の譲歩を提案し、トランプ大統領と親密な関係を築いたにもかかわらず、大統領周辺のならず者たちが折角の平和への努力をぶち壊してしまった。かくなる上は核実験とミサイル発射実験も再開し、アメリカに思い知らせてやるしかない」と身の程知らずの行動に走る危険が高まる。

 安倍首相はトランプ大統領から電話で首脳会談の報告を受け、「次は自分が金正恩委員長と向き合うしかない」と語っている。しかし、米朝関係が交渉の軌道を外れ始めた今となっては、日朝関係の橋渡しは期待できない。ここは発想を変えて、今回のハノイでのサミットでもその存在感を高めたベトナムの持つ北朝鮮ルートを生かす手段を考えるべきではないだろうか。

 ベトナム戦争に義勇軍を送り、ともにアメリカ軍を追い出した経験をもつ北朝鮮である。ベトナムとの関係は外交、経済、文化、安全保障の各方面にわたり緊密そのもの。トランプ大統領と別れた後も、金正恩委員長はハノイで北朝鮮ゆかりの地を訪ねた。大の親日国でもあるベトナムは日本が北朝鮮とのパイプを探り、太くし、懸案の問題を解決する糸口をつかむ上ではアメリカより頼りになるに違いない。米朝首脳会談の決裂はホスト国ベトナムの可能性を知らしめる意味ではマイナスばかりではなかった。マイナスをプラスに転換させるチャンス到来と受け止めるべきだろう。

(了)

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