2024年05月06日( 月 )

WF地区再開発における交通インフラの方向性とは(後)

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福岡大学 工学部社会デザイン工学科 教授 辰巳 浩 氏

BRTの導入が現実的

 ――本来のBRT(Bus Rapid Transit / バスを基盤とした大量輸送システム)とは、どのようなものなのでしょうか。

辰巳 浩 教授

 辰巳 諸外国にはBRTがたくさんありますが、そこでは専用のレーンを設けて、完全に柵で区切ったりしています。いわば“線路のない鉄道”のようなもので、停留所というか駅にもホームが何番線もあったり、車両も長いです。また、そのBRTに類するものとして、LRT(Light Rail Transit / 次世代型路面電車システム)というものもあります。これはいわゆる日本でいう路面電車の発展型のようなもので、日本の路面電車は1~2両編成などの短いものが多いですが、ヨーロッパの方のLRTでは7~9両編成など長いものが多く、スピードも出せます。

 本来であれば、WFにも地下鉄が入れられると一番良いのですが、福岡くらいの人口規模で、今ようやく七隈線の博多駅への延伸が進んでいるような状況では、なかなか次の話というのはしにくいでしょう。WFへの地下鉄の導入というのは現時点では見通せませんから現実的にはBRTかLRTということになりますが、LRTも車両基地や電車車両が必要なため、費用がかかります。その点、BRTであれば走行空間さえ確保できれば、車両自体はバスなので比較的実現がしやすいですから、当面はBRTで動かしていき、今後WF地区が“大化け”して公共交通の需要が大幅に増えたときに、改めてLRTなどの導入を考えていくというのが現実的ではないでしょうか。今はその足掛かりとして、連節バスを走らせている状況だと思います。

 あとは、最近話題に上がるロープウェーなどがありますが、あれもいろいろと制約がありますし、「ロープウェーだけで、このWF地区の足を一手に担うのか」となると、やや心もとなく思います。ロープウェーも、アクセスがいろいろとあるなかの手段の1つであれば考えられなくもありませんが、それだけがメインの公共交通ということになれば、弱いのではないでしょうか。

 このWF地区へのアクセスについては、公共交通や自動車利用などのビジョンをきちんと描き、今後WF地区の開発が大成功して多くの人が集まるようになったとしても、「アクセスの受け皿はきちんとできています」ということが見えるようになると、WF地区の開発も進んでいくのではないでしょうか。

(了)
【坂田 憲治】

<プロフィール>
辰巳 浩(たつみ・ひろし)
1966年福岡県生まれ。九州大学工学部土木工学科卒業。博士(工学)。九州大学工学部助手、九州産業大学工学部講師、助教授、教授を経て2010年より福岡大学工学部教授を務める。専門は、交通計画・都市計画。

 

 
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