2024年04月28日( 日 )

子育て支援、移住促進で人口減少に歯止め 地の利を生かしてまちづくり進める基山町(後)

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 佐賀県三養基郡基山町は、佐賀県と福岡県との県境にある町だ。隣には物流の拠点・佐賀県鳥栖市がある。JR鹿児島本線の駅のけやき台駅、基山駅があり、電車を使えば福岡市まで30分以内でアクセスできる。また、南に目を向けると久留米市があり、そちらへのアクセスも良好という立地だ。平成の大合併でも独立した道を選び、魅力あるまちづくりに取り組んでいる。

子育て支援・新婚世帯移住支援で人口増を

 町がまず取り組んだのは、子育て支援だ。待機児童ゼロや高学年までの放課後児童クラブなど子育てしやすい環境を構築し、アピールすることで、子育て世代の流入を図った。新婚世帯の移住には家賃補助を行い、16年度には33件、17年度には22件の申請を受け付け、16年度には41名、17年度は31名の住人が増加した。交通の利便性の高さ、喧騒のない閑静な環境が子育て世代を惹きつけたのである。

 「今後は住宅地区を拡大して、より多くの方が暮らせるようにしていかなくてはなりません。また、今の子どもたちに、将来にわたって基山町で暮らし続けてもらうことも考えなくてはならないですね」と、松田町長。基山町は18年度、町役場庁舎内にハローワークを設置し、就労支援を行うとしている。そこでは南は大牟田エリア、北は福岡エリアまで、広域で就労希望者の要望にきめ細やかに対応し、質の高いマッチングを行う予定だ。こうして、町民の定住・増加を進めていきたい考えなのである。

歴史とスポーツでPR

基山町のシンボル・基肄城跡(きいじょうあと)

 暮らしやすい町・基山町だが、大きな悩みを抱え続けている。それは「知名度」である。国の特別史跡の基肄城(きいじょう、665年に大和朝廷が倭の防衛のために築いた山城)があるとはいえ、地域の歴史に詳しい人たちにしか知られていないのが現状だ。他地域に比べて特徴があまりない、というのが大きな悩みだったのだ。

 「基肄城がある、対馬藩の領地だったなど、歴史的にユニークなところはあります。それは大きな強みだと思いますが、それだけではアピール力が十分とはいえません。その歴史を知ってもらうためにも、ほかの面で注目してもらう必要があります。近年、スポーツの面で基山町出身の選手が活躍してくれており、基山町を知ってもらうきっかけになっていますね。たとえば、今年、セ・リーグ新人特別賞を受賞した濵口遥大選手(DeNAベイスターズ投手)は基山町の出身です。基山町から優秀な選手が生まれたことをとても嬉しく思います。また、基山町内の中学校もスポーツで優秀な成績を収めてくれています。こうして基山町の名前が広がってくれることに、期待しています」(松田町長)。

 また、スポーツだけでなく、他の市町村にない取り組みで基山町を特徴づけるチャレンジもしている。

 「多くの人が休憩をとる九州自動車道の基山パーキングエリアで、情報発信・ミニ物産直売所を設けて町のPRに努めています。パーキングエリアの敷地を借りて情報発信する事業に取り組んでいるのは、国内で基山町だけです。こういったチャレンジを続け、町の長期的な発展につなげていきたいと思います」。

 福岡都市圏のベッドタウンの1つではなく、基山町としての特色を出して発展させていきたいと松田町長は語る。独自性をアピールし、多くの人に知ってもらうこと、そして移住者を増やし定住化していくこと。多くの地方自治体が抱える問題に対し、基山町は町独自の答えを見出そうとしている。

(了)
【柳 茂嘉】

 
(前)

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