2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

【検証】関空連絡橋衝突事故を振り返る~未曽有の衝突事故は防げたのか(1)

 2018年9月4日に近畿地方を通過した台風21号。「想定外」ともいえる暴風により、近畿地方を中心に大きな被害をもたらし、関西国際空港とりんくうタウン(大阪府泉佐野市)を結ぶ関西国際空港連絡橋(通称:関空連絡橋)には、油タンカー宝運丸が衝突。一時、約8,000人が関空内に閉じ込められる事態となった。

 当初、2019年のGW明けが見込まれていた関空連絡橋の完全復旧は、4月8日午前6時に完了。事故調査の原因究明については、「なお時間を要する見込み」とされていたが、4月25日に国交省運輸安全委員会(以下、運輸安全委員会)のホームページ上で、事故調査報告書(以下、報告書)が公表された。

事故原因に関する運輸安全委員会の見解

 運輸安全委員会は報告書の要旨で、本事故の原因を「いったん、主機を使用して圧流が止まったとしてジョイスティックをホバーの位置にし続けたため、再び圧流され、関空連絡橋に衝突したものと考えられる」と結論付けた。それ以外の要因として、(1)宝運丸の船長が、関空島周辺から3マイル以上離れて錨泊することを推奨するリーフレットの存在を知らなかった点、(2)双錨泊ではなく、単錨泊による錨泊を行った点、(3)船主である日之出海運(株)、運航主である鶴見サンマリン(株)が、宝運丸の船長に対し、錨泊地の確認や台風に関する情報などを提供せず、安全運航についての協議を行っていなかった点を挙げている。

事故調査の目的は「原因究明と再発防止策を講じること」

 報告書の公表を受け、同日中に各社がこの件を一斉に報じている。朝日新聞は事故原因を「前進をやめたこと」とし、宝運丸の船長が、走錨が止まったとして全速力の前進をいったん止めたことで再び走錨が始まり、関空連絡橋に衝突した可能性が高いとしている。

 毎日新聞、日経新聞、産経新聞、西日本新聞は、「情報共有がなかったこと」を事故原因の1つとして挙げ、日之出海運や鶴見サンマリンが、台風の進路や錨を下ろす錨泊場所について船長と情報を共有していなかった点が事故原因だとしている。

 FNN、NNN、毎日放送、時事通信は、2つある錨のうちの1つしか使わなかった(=単錨泊)ことで走錨状態に陥り、その際、エンジンを効果的に使えなかったため、強風に流され、関空連絡橋に衝突したとしている。

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 各社の報道は共通して、事故原因が当時の宝運丸の船長が行った錨泊や走錨時の操作、日之出海運や鶴見サンマリンが宝運丸の船長に対し適切な情報提供を行わなかったことが事故原因につながったとしている。

 運輸安全委員会のHPを開くとまず目にとまるのは「船舶事故報告書のまえがき」で、以下のように述べられている。事故調査の本来の目的は「事故原因の究明と事故の防止に寄与すること」。すなわち、事故原因の究明と再発事故の防止のために行われるものであり、決して事故の責任を問うために行われたものではないのだ。

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(つづく)
【長谷川 大輔】 

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