空間資源を活用した経済再生で新たなビジネスモデルを
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2018年01月03日 07:00

空間資源を活用した経済再生で新たなビジネスモデルを

九州工業大学大学院工学 研究院建設社会工学研究系 准教授
徳田 光弘 氏
(一社)リノベーションまちづくりセンター 代表理事

 現在の都市開発事業において、単なるスクラップ&ビルドで進めるだけでなく、今後はいかにリノベーションも含めた既存の建物の活用を考えていくべきだろうか―。九州工業大学大学院工学研究院建設社会工学研究系准教授で、(一社)リノベーションまちづくりセンターの代表理事も務める徳田光弘氏に聞いた。

もはや地方において再開発事業は成り立たない

 ――最近、リノベーションという言葉をよく耳にするようになりました。

徳田 光弘 氏

 徳田 よく一般的にリノベーションといわれている言葉は、どうしても「ハコ」のほうが着目されやすい傾向にありますが、私はリノベーションというものは基本的には空間資源を活用した地域再生、もっといえば経済再生だと思っており、ハコというのはきっかけでしかありません。

 私たちがやっているのは、せっかく余っているハコがある。街で活躍できるプレイヤーが潜在的にいる。であれば、マッチングしてその人たちが活躍できる舞台をつくっていけば、当然ながら経済効果も出てきますし、地域のブランディングや、未来の担い手をそのまま育てていくことにもつながります。そういったかたちで考え、これまでリノベーションスクールなども含めてやってきました。

 たとえば2000年ごろから、ビッグビジネスとしての再開発事業というものが、経済効果をあまり発現できなくなってしまっています。これまでの再開発事業は、建設業などに対しての一次的な経済効果と、それ以降の二次的、三次的な効果を狙っていくものであり、以前であれば投資に見合うだけの効果が見込めていたため、各地で再開発事業が行われていました。ところが90年代くらいから、とくに地方都市においては再開発事業が経済波及効果を生み出さなくなってしまいました。もちろん福岡市など右肩上がりの成長を続けている一部の地域であれば、再開発ビジネスというものがまだ成り立ってはいますが、それが地方都市になれば、たとえば駅前再開発などを行っても投資に見合った効果が見込めず、概ね失敗に終わってしまっているのが現実です。

 であれば、経済効果を生みながら、かつ街の経済活動および地域の生活の快適さをどのようにして手に入れていくかということを考えたとき、冷静に考えれば、投資リスクの低い既存の建物を活用したほうが効果を発現させやすいということになります。とくに、これまでの建築・不動産ビジネスでは、大きくつくれば大きい反応が返ってくるというものでしたが、それが今の経済社会のなかではどうも効果が発現しないため、小さくつくって大きく育てていくようなやり方が主流になってきたのではないかと思います。

 ビジネス的な考え方でいうと、今までの「大商い」「分業化」「男性中心」という社会から、今後は「小商い」「副業化」「女性活躍」という社会へのシフトを考えていかなければなりません。リノベーションというものが経済的にどのような立ち位置にあるかと考えたとき、私はその3つのキーワードに至りました。

狙うのは唯一無二の独占価値

 ――「cobaco tobata(コバコ・トバタ)」も、徳田先生の研究室が中心となって手がけられたプロジェクトだとお聞きしました。

 徳田 ここは、元々は地域の産婦人科医院だった建物ですが、ここのオーナーさんから、更地にするか、それとも建物を残して活用するかどちらがいいかと相談を受けた際に、「二度と同じものが建てられない唯一無二の価値の建物を壊してしまう」ことと、「どこにでもあるようなマンションなどになってしまう」ことへの恐れを感じました。そこで、先ほどの「小商い」「副業的な動き」「女性活躍」の3つのテーマを実現するための器として使えないかを考えていったのが始まりです。ここで我々は、建築の図面を引いて設計料をいただいているわけでも、施工費をいただいているわけでもありません。ランニングとして管理料をもらっていくというやり方で、どちらかというと不動産ビジネスに近い考え方です。ただ単なる不動産と違うのは、クリエイティブなプロモーションだとか、新しい管理の概念を、いかにちゃんとかたちにしていくかという部分ですね。そうしたチャレンジなのですが、私はこういうやり方で、場合によっては、建設業界のキャッシュポイントをシフトできないかと思っています。

 今後、ストック活用のようなかたちで既存建物の活用を考える際に大事なのは、そこにいかにして新しい価値を見出していくかということです。たとえば「cobaco tobata」は、文化財でもなければ、特段優れた建築物というわけでもありません。ですが私は、こういう建物にこそ唯一無二の価値があると思っていて、ビジネス的にいえば、過当競争に取り込まれにくい素養を持っています。今は、地域にある有形無形のストックを、どのように地域で開花させていくかという時代ですが、狙っていかなければならないのは、こうした“唯一無二の独占価値”ではないでしょうか。

【坂田 憲治】

<プロフィール>
徳田 光弘(とくだ・みつひろ)
1974年、福岡市生まれ。(一社)リノベーションまちづくりセンター代表理事。博士(芸術工学)、一級建築士。2003年3月、九州芸術工科大学(現・九州大学)大学院博士後期課程修了。03年4月より鹿児島大学工学部助手、助教を務め、09年1月より現職。

 
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