「住むまち」から「暮らすまち」へ仕掛人が手がける、那珂川町のこれから(後)
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2018年01月09日 07:01

「住むまち」から「暮らすまち」へ仕掛人が手がける、那珂川町のこれから(後)

那珂川町事業間連携専門官
(株)油津応援団 専務取締役 木藤 亮太 氏

「関係人口」の拡大こそ地域活性化のカギ

 ――油津商店街の活性化について、何が成功のポイントだったのでしょう。

油津商店街アーケード

 木藤 そもそも疲弊した商店街を再生する取り組みを行政で主導するのは難しいんですね。役所は一時的な補助金投入やイベントの開催など「点」の取り組みは得意ですが、継続性がなかった。だから、プロジェクトに専従するために家族とともに移り住んだ私のような存在は、継続性を担保するとともに、地域の方からすると一緒に伴走してくれるような心強さがあったのではないでしょうか。しばらくすると志をもった地域の方たちが集まり始めて、ありがたいことに私を応援するような動きまで生まれました。

 市が想定していた4年間の事業は終わりましたが、まちづくりを継続するための会社組織である(株)油津応援団を中心に油津のまちづくりは現在進行形です。コーヒー店の売上や貸テナントの家賃など、得た収入を主に店舗マネジメントやサポート人材雇用にあてながら商店街活性化の取り組みが続いています。

 「油津商店街は新しい顔ぶれが増えたが、常に人通りが多いわけでもなく、まちが変わっていない」という批判的な意見もありますが、それは昔ながらの「商店街」というイメージに捉われすぎているのだと思います。油津商店街にはいくつか飲食店や物販店ができましたが、ゲストハウスができたり保育園ができたりIT企業だって8社も入っている。これまでなかった機能がどんどん増えているし、「いま」市民が必要としているものが並んでいるのです。商店街だからといって魚屋や八百屋、布団屋が並ぶ必然性はなくて、改めて現在にふさわしい商店街をデザインしていかなければならないのです。だから正確には「再生」ではなくて、新しく「生まれ変わった」ということなんです。

 地域を活性化するときに、「うちは~のまちだから」と固定観念にとらわれてしまっては何も新しいことは生まれません。今の社会状況を見つめながら自分たちのまちにとって今、本当に必要なものは何か、それを考え続けることが必要なのです。

 全国に自治体が約1,900あるなかで、今後は住民から選ばれる自治体にならないと生き残れないでしょう。日南は陸の孤島みたいな田舎まちですが、若い市長が立ち上がって我々のような専門家が加わって面白いプロジェクトを始めている。そのこと自体が町としてのブランディングにもつながるのです。企業にしても、消費者から「何かおもしろそうなことをやっている」と思われないと選ばれない時代です。自治体も「先進的な取り組みをしている」というイメージをつくりあげられるかが勝負で、それに成功すればきっと「住民として関わってみたい」と思ってくれるはずです。

 「関係人口」という言葉があります。実際に居住人口が増えるのがありがたいですが、そんなことが簡単に起こる時代でもない。たとえば、日南に興味をもつ、関係してみたいと思える人の数を増やすという観点。いわゆるまちの応援団・ファンをつくれば、そこを離れていてもいつも気にして見ていてくれるわけで、最近ではふるさと納税やクラウドファンディングで支援する動きなどが代表的です。関係性を求める人口をしっかり獲得していけば、地方都市でも十分新しいことを生み出す可能性が見えてくるのです。東京に住んでいる人であっても、故郷や好きなまちの活性化に関わることができる、そういった動きこそ、地方創生の時代に最も必要なかたちなのではと思います。

(了)
【小山田 浩介】

<プロフィール>
木藤 亮太(きとう・りょうた)
1975年生まれ。福岡県那珂川町出身。九州芸術工科大学大学院修了。環境設計を専攻。卒業後は、大学の先輩が創業した(株)エスティ環境設計研究所に14年間勤務、取締役を務める。在職中の実績は、子守唄の里五木の村づくり(08年土木学会デザイン賞優秀賞)、重要文化的景観「蕨野の棚田」、かなたけの里公園、古湯・熊の川温泉など。13年、全国公募で選ばれた日南市油津商店街テナントミックスサポートマネージャーに就任。現在は、(株)油津応援団取締役。


那珂川町役場 総務部長 小原 博 氏

 各まちづくり事業を連携させる動きの前提には当然、2018年10月に市制を迎えるということも関係はしていますが、ことさらそれにこだわったわけではありません。那珂川町には観光地としての五ケ山ダムがあり、博多南駅前では町所有ビルのリニューアルという事業を進めていました。あるいは中山間地域の活性化という取り組みもそれぞれの部署が担当していましたが、もっと連携することで効果的に進めたいという思いがあったのです。
 地域活性化というとすぐに、企業誘致案なども浮上するわけですが、那珂川町の特性を考えれば、両者をイコールでは結べないと思います。なにより町のすぐ横には福岡市という大都市があり、車で30分、新幹線なら8分で移動できるのですから。ただ、これから人口減社会を迎えるなかで最も好ましいのは、住むところに働く場所があることでしょう。働き方改革も含めて、職住近接の可能性は模索していきます。
 よく地域活性化という言葉が使われますが、「活性化」を実態して定義づけるのはなかなか難しい。私が個人的に基準としているのは、住む場所に誇りが持てるかということです。このキーワードがまちづくりのコアになるのではないでしょうか。
 那珂川町に限らず旧筑紫郡の自治体は、福岡市が隣にあるおかげで人口が増え続けてきました。逆説的ですが、この地理的優位性がこの地域の課題だったのかもしれません。人口減にあえぐ全国の自治体が必死の努力でまちづくりを進めるなかで、恵まれた立地のせいでまちづくりにきちんと取り組めていなかった。市制がきっかけになってやっと今、町民の皆さま全員で考えるべき時期にきたのだと思います。


 

 
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