2024年05月03日( 金 )

異なる専門性のシナジー効果で地域とともに成長する不動産ベンチャー(前)

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(株)ビーロット 代表取締役社長 宮内 誠 氏

 2008年10月に設立し、14年12月に東証マザーズ上場、さらに3年3カ月後には東証一部への市場変更をはたした(株)ビーロット。これまで大幅な増収増益で業績を拡大させてきた同社の宮内誠社長に、創業のエピソードや上場の狙いについて聞いた。

創業10周年を迎え2月には東証一部へ

 ――まずは、マザーズからのスピード昇格おめでとうございます。上場を目指した理由は何だったのでしょうか。また、次の目標をお聞かせください。

 宮内 ありがとうございます。上場についてはゴールと捉えてはおらず、成長のための1つのステップだと思っています。海外でも、当社のビジネスチャンスは多数ありますので、東証マザーズから東証一部に市場変更したことでチャレンジできることも増えていくと考えており、ビーロットグループの今後の展開には私自身もワクワクしており、とても楽しみにしています。

 当社では、「成長=単なる増収」と考えてはいません。利益の拡大と地域や社会への貢献が両立して、初めてその成長に価値があると考えています。たとえば、福岡にも支社がありますが、無理をして歪みが生じるような結果は望んでおりません。私たちは不動産を営むものとして、ビジネスの現場となる地域社会や、ステークホルダーとなる取引先や役職員とともに共栄することが、企業を永続させるために必要なことだと考えています。

 上場により、取引先や金融機関からの「信用」や社会からの「知名度」は高まったと思います。また、役職員のコンプライアンス意識を含めたモチベーションアップや、ガバナンス体制の向上も企業にとってメリットです。仕事を楽しみ、高い理想をこれからも追っていきたいですね。

 ――08年の創業から10周年を迎えましたが、御社はリーマン・ショックの最中に創業されました。創業の経緯をお聞かせください。

 宮内 リーマン・ショックを契機に「働き方」を考えたことが、創業のきっかけになります。創業メンバーである私と、副社長の長谷川、同じく副社長の望月はかつての同僚で、ともに上場企業の取締役を務めていました。リーマン・ショックにより不動産取引は激減、企業の破綻も多く衝撃は大きいものでした。そのような厳しい環境で、「もっと楽しく働きたい」「もっと楽しく働ける環境があってもよいのではないか」と強く思うことになりました。タイミングはバラバラでしたが、3人がそれぞれ次の展開に希望をもって次を決めずに退職していました。

 個人や家族が食べていければいいと、1人で起業する選択肢もありましたが、「これから何をするの?」と3人で会話を重ねていくなかで、「ビジョンが近いのだから一緒にやるのもいいね」となり、08年10月にビーロットを設立しました。創業メンバーが全員上場企業の役員だったので、上場が念頭にあったのは自然なことでした。

 濃い3人なので(笑)、周囲には「共同経営は簡単じゃない、ケンカ別れするのが関の山だ」「無謀だ」と言われましたし、当時は不動産市況が大きく落ち込んでいましたので、本当にゼロからのスタートとなりました。ただ、我々は逆境といえる時だからこそ、あえて3人で起業し、それぞれの強みを生かした会社経営をやってみたいとなりました。不動産会社で共同経営は永続するのか、これは「壮大な実験」ですが、東証一部への市場変更、10周年と節目を迎えたことは成果であったと感じています。

強みの異なる3人で創業、メンバー増え相乗効果も

 ――宮内社長は不動産業だけでなく、金融機関での経験が長かったとうかがっています。

(左)取締役 福岡支社長・江崎 憲太郎 氏 (右)代表取締役社長・宮内 誠 氏

 宮内 私は金融機関出身ですが、黎明期の不動産ファンドのプロジェクトファイナンスの現場が長く、専門的でニッチな経験とその時の人脈が自身の強みと捉えています。ファイナンスは不動産から切り離せません。とくに当社が取り扱う不動産は投資用がメインで、市場のニーズもどんどん多様化しておりますので、証券化など複雑なSPCスキームの経験が生きているように思っております。

 長谷川は富裕層コンサルティングの経験が豊富で、顧客のニーズをつかみ、リピート取引につなげることが得意です。望月は当社の主力事業である不動産再生において、取得から販売に関する不動産の目利きが優れています。お互いがお互いを頼るのではなく、強みを生かして大きな結果を出すことで、「1+1+1」を 5にも6にもできると信じてこれまでやってきました。福岡支社長の江崎を始め、「1=仲間」の数も増え、それぞれの強みが相乗効果になって表れ始めていることを、大変嬉しく思っているところです。

(つづく)
【永上 隼人】

<COMPANY INFORMATION>
(株)ビーロット
代 表:宮内 誠
所在地:東京都港区新橋2-19-10 新橋マリンビル8F
設 立:2008年10月
資本金:9億4,469万5,668円
TEL:03-6891-2525(代表)
URL:http://www.b-lot.co.jp

<プロフィール>
1969年2月生まれ。兵庫県出身。三和銀行(現・三菱UFJ銀行)、三和証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)を経て2006年から東証一部上場の不動産会社で、取締役投資企画部長として新規業務の企画および実践を担当。 08年に(株)ビーロットを設立し、代表取締役社長に就任した。父は、オリックス(株)の宮内義彦シニア・チェアマン。

 
(後)

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