2024年05月03日( 金 )

異なる専門性のシナジー効果で地域とともに成長する不動産ベンチャー(後)

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(株)ビーロット 代表取締役社長 宮内 誠 氏

 ――それぞれ異なる強みをもったメンバーの存在が、御社の特徴であり強みですね。東京以外でも豊富な開発実績を有していますが、支社の開設だけでは開発事業は難しいと思います。それを可能とした経緯は何でしょうか。

2017年10月にOPENした「IMANO TOKYO GINZA HOSTEL」

 宮内 当社の事業は、地元の皆さまとのチームワークが欠かせません。地元の仲介業者さま、工事業者さま、金融機関さまなどの協力なしには、事業の成功もあり得ません。現在、ありがたいことにお取引いただいている銀行は約30行におよびます。地元の金融機関は規模の大小から得意分野もそれぞれ異なり、また、お持ちになっている情報もそれぞれ異なります。決算のタイミングなどで取引行には、東京以外であっても極力私が出向くようにしています。

 支社の開設にあたっては、地元に詳しくてネットワークがある人材が必要で、5年前に福岡支社を設立できたのは、このたび取締役に就任した江崎の存在があったからといえます。当初は外部パートナーとして協力してもらっていた10年来の友人となります。福岡のネットワークに強く、創業メンバーとの信頼関係も構築できている江崎が加わることで、福岡での事業を成功させることができました。福岡は、不動産のみならず、観光都市としてもグローバルに注目されており、拠点がほしかったので、江崎の存在は大きかったですね。

 江崎 副社長の望月とは、ビーロット設立前からの長い付き合いです。久しぶりに会い、お互いの仕事や状況を理解していくなかで、やはり仕事のスタイルが近いことを認識し、どちらからともなく「一緒にやろうよ」となりました。宮内、長谷川を始めビーロットの皆さまとも会話を重ね、13年9月にビーロットへ参画しました。3月に取締役にも就任しましたし、さらに身の引き締まる思いです。

 ――今後、福岡ではどのような事業を検討されていますか。また、6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されますが、新法に則った商品開発の予定はございますか。

 江崎 福岡市は人口も増加していますし、外国人観光客も増加傾向にあります。今のところ福岡では宿泊施設の実績はありませんが、コンバージョンや開発など多くの選択肢が検討できる都市なので、積極的に投資していくつもりです。新法向けの開発に関しても検討しています。活かさない手はなく、宿泊の新たな手法として注目していますし、やってみたいとも考えています。ホテル、ホステルなどの旅館業法(簡易宿所)向け、そしてマンションなど、立地条件によって柔軟に検討していきたいですね。

多様な運営会社とリレーション

 ――16年4月の(株)ライフステージ子会社化を皮切りに、17年1 月の力プセルホテル運営会社の(株)ヴィエント・クリエーション子会社化、今年4月にはゴルフ場運営の(株)ティアンドケイを子会社化しました。それぞれの狙いと今後のM&A戦略はどのように考えていらっしゃいますか。

 宮内 大阪に本社を構え、25年にわたってマンションの販売受託を行っているライフステージのM&Aを契機に16年に大阪支社を開設しました。ライフステージのグループ化によって関西圏のビジネス展開が早まったということになります。

 ヴィエント・クリエーションは、どちらかというと不動産M&Aに近いのですが、管理部の人員が当社に転籍しましたので、採用手法としても相乗効果があったと認識しています。

 また、17年12月にはカプセルホテルの再生にも成功しています。
 ティアンドケイは、著名な川田太三氏が代表を務めるゴルフ場の運営会社ですが、運営以外にもゴルフ場の設計コンサルティングやビジネスデューデリジェンスを得意としており、日本全国のゴルフ場オーナーをクライアントとしています。ゴルフ場を保有されるような富裕層の方々は必ず不動産で資産運用もされていますので、ネットワーク拡大の相乗効果を期待できると確信しています。

 今後は、グループ企業として異なる専門分野をもつ人間同士でしっかりとひとつひとつ議論を行い、何をすれば、役職員を含むステークホルダーの皆さまがハッピーになっていくのか、企業価値が上がるのか、を考えて実行してまいります。

 ――事業規模の拡大とともに取り扱う物件の規模も大きくなっていますが、最小ロットは変わっていないようですね。

 宮内 日本の不動産は世界的にも注目されています。安定したニーズがあり、機関投資家だけでなく、一般企業や個人投資家からも多くの引き合いをいただいていますが、仕入れの基準は変えないようにしています。ビーロットとしては、市況の変化に備え、ファイナンスを長期にシフトさせるなど慎重に対応しているつもりです。主に取り扱っている物件は1億円から30億円規模の物件です。「1億円から」というのは企業が成長しても変えていません。仕入れた物件は開発やリニューアルなどによってバリューアップを行い売却しておりますが、取引実務を通じてパートナーとしてやりやすいと感じていただくことで不動産業者や士業、運営会社などから多くの情報をいただくことができています。

 不動産再生ノウハウと、役職員の質に関しては自信を持っていますので、今後とも自社だけでなく、投資家さま、協力会社さま、金融機関さま、さらに地域の皆さまにとって、利益になる事業をこれからも続けていきたいですね。

(了)
【永上 隼人】

<COMPANY INFORMATION>
(株)ビーロット
代 表:宮内 誠
所在地:東京都港区新橋2-19-10 新橋マリンビル8F
設 立:2008年10月
資本金:9億4,469万5,668円
TEL:03-6891-2525(代表)
URL:http://www.b-lot.co.jp

<プロフィール>
1969年2月生まれ。兵庫県出身。三和銀行(現・三菱UFJ銀行)、三和証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)を経て2006年から東証一部上場の不動産会社で、取締役投資企画部長として新規業務の企画および実践を担当。 08年に(株)ビーロットを設立し、代表取締役社長に就任した。父は、オリックス(株)の宮内義彦シニア・チェアマン。

 
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