市全体を見据えた長期的な視点で福岡の防災まちづくりを
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2018年05月09日 15:37

市全体を見据えた長期的な視点で福岡の防災まちづくりを

九州大学 大学院工学研究院附属アジア防災研究センター
教授 塚原 健一 氏

 2016年4月に発生した熊本地震や、17年7月に発生した九州北部豪雨などは、我々に自然災害の恐ろしさを知らしめるとともに、改めて防災の重要性を痛感させた。今回、都市における防災について、九州大学大学院工学研究院附属アジア防災研究センター教授の塚原健一氏に話を聞いた。

福岡の都市開発において考慮すべき自然災害

 ――熊本地震の発生からちょうど2年が経ちます。

塚原 健一 教授

 塚原 政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会によると、警固断層の南東部で今後30年のうちに地震が発生する確率は2%くらいだとされています。南海トラフでの地震発生確率が今後30年で70%程度とされていますから、それと比べると低いようにも思われますが、実はこの2%というのは熊本地震の発生確率と同程度で、決して無視できるものではありません。

 また、福岡市内では警固断層周辺ばかりが注目されがちですが、実は博多駅周辺から博多区の南部にかけてのエリア、つまり福岡空港や国道3号線のあたりも含めて、非常に強い揺れが発生するという予測が出されています。というのも、実はこのあたりはもともと御笠川の氾濫域で、現在の博多駅の周辺はかつて水田が広がっており、地盤が弱く地震で揺れやすいエリアになっています。そのため、こうしたことを踏まえたうえで、まちづくりを考えていかなければならないというのが、まずは大前提としてあります。

 もう1つ、うちの学生が調査した福岡市の各区ごとの建物の建築年代区分のデータがありますが、これによると、早良区とか東区などの住宅地が多いところは、結構新しい建物が多いのですが、中央区が古い建物の比率が一番高いという結果が出ています。新耐震基準が施行されたのが1981年で、それ以前の建物の割合が一番高いのが中央区。なので、天神ビッグバンに代表される中央区での再開発は、非耐震の建物の耐震化を促進するという意味では、理に適っているといえるでしょう。

 ――やはり福岡都心における都市開発では、地震への対策が重要になるのですね。

 塚原 福岡の場合、もう1つ忘れてはならないのが洪水です。以前、御笠川の氾濫で博多駅周辺一帯が水没したことを記憶しておられる方も多いと思いますが、こうした御笠川や樋井川などの、もともとは洪水域だったところを開発して都市を拡大させてきたのが、今の福岡市なのです。そのため福岡の都市開発においては、地震と洪水を考慮したうえで、まちづくりを進めていかなければならない、というのが私の持論です。

立地適正化計画で考えるコンパクトなまちづくり

 ――福岡市というのは、災害に対して弱い都市なのでしょうか。

 塚原 福岡の場合は単に弱いというよりも、人口60万人の戦後間もないころの規模であれば、おそらく強かったのだと思います。その後、福岡市では爆発的に人口が増えていった結果、実力以上に都市が大きくなり過ぎてしまったために、本来であれば災害に弱いはずのエリアにも、立地せざるを得なくなってしまった、ということですね。

 一般にはあまり知られていないかもしれませんが、実は16年9月に改正・施行された都市再生特別措置法のなかで、各都市での「立地適正化計画」の策定を求める旨が盛り込まれました。「立地適正化計画」とは、急激な人口減少と高齢化が進むなかで、人々の住まいや公共施設、医療施設、商業施設などを一定の範囲内に収めて「コンパクトなまちづくり」をするのと同時に、市街地の空洞化を防止しようとするものです。

 かつて人々は、主に鉄道やバス路線などに沿って住んでいたのですが、その後の人口が増えていく過程と自家用車の普及などにより、市街地が郊外へと拡大していきました。ですが、人口が減少に転じ、さらには高齢化によって住人の自家用車での移動もままならない状況が生まれてきています。そのため、人口が減るに従って、元のような、公共交通機関に依存して、かつ、ある程度施設を密集させたまちへと再編成していこうというのが、立地を適正化する計画――つまり「立地適正化計画」で、これまでの都市人口増大で不適切なまでに拡大していった市街地を適正な規模に戻すといったものです。

 全国の地方都市で徐々にこの策定が進みつつありますが、福岡市ではまだ策定されていません。福岡の場合は、地震リスクの高いところや洪水の発生確率が高いところを避け、長期的な視点で「福岡再構築をどうするのか」を考えながら策定を進めていく必要があるでしょう。福岡市での都市防災を考えるとき、短期的には避難計画などが必要でしょうが、長期的にはこうした「立地適正化計画」などで市全体のことを考えたうえで進めていけば、やがて危険なところに住む人は減っていきますし、建物が建て替わってくれば耐震性能や防災機能も高まります。そうすると、より効率的で安全なまちとなっていくのではないでしょうか。

【坂田 憲治】

<プロフィール>
塚原 健一 (つかはら・けんいち)
1962年生まれ。85年に九州大学工学部土木工学科を卒業後、旧建設省に入省。インドネシアやフィリピンなどの発展途上国で勤務し、国際協力機構在勤中は、ハイチ地震震災復興などの多くの災害復興事業に従事した。2011年4月より九州大学教授。

 
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