北九州の台所・旦過市場 再整備でどう生まれ変わる?(前)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年07月17日 12:05

北九州の台所・旦過市場 再整備でどう生まれ変わる?(前)

 「安い、新鮮、うまい」を合言葉に、100年にわたって北九州地元住民とともに歩み続けてきた旦過市場。2020年度の再整備事業着手に向け、市場関係者などによる詰めの議論が行われている。

 旦過市場建替えをめぐっては、これまでに何度も頓挫を繰り返してきた経緯がある。市場沿いを流れる神嶽川の改修も手付かずのままだった。市と市場は12年以降、ゼロベースでの再整備検討を再開。16年には「旦過地区まちづくり基本計画」をまとめた。現在、市と市場関係者との役割分担のもと、立体換地による区画整理の進め方、新たな市場建物のあり方、管理運営会社の形態などについて、議論が行われている。旦過市場はどのように生まれ変わるのか、取材した。

雑多さ魅力だが「決め手に欠く市場」

 旦過市場建替えの話は1960年代以降、何度ももち上がってきたが、店主の賛同が得られず、そのたびに頓挫を繰り返してきた。原因について、森尾和則・旦過市場商店街副会長(小倉かまぼこ(株))は「先々の危機意識に乏しく、再整備内容を理解する店主が少なかった」と指摘する。では、事前に諮れば理解するかといえば、そうでもない。約110に上る店主はそれぞれ“一国一城の主”。全員の合意を得るのは至難のワザであり、この点は現在も変わらない。

 市場には水産物の店もあれば、精肉店や漬物店などもある。年間売上が数億円に上る店舗(市場外店舗を含む)がある一方、数百万円の店もある。自身の商売が最優先なので、市場全体のことまで頭が回らない店主が多い。このまとまりのない寄り合い体質は、旦過市場の魅力である“雑多さ”の源にはなっているが、“決め手に欠く市場”の根源にもなっており、それが現在まで尾を引いてきたわけだ。

 旦過市場沿いの神嶽川は、豪雨により2009年から2年連続で氾濫。河川の水が市場内に溢れた。14年には護岸の一部が崩落。北九州市としては、市場浸水を避けるため、河川改修の必要があった。ただ、川幅を広げると店舗の移転が必要になることから、河川改修と市場再整備を一体的に行う必要が出てきた。

 そこで、15年に市場関係者による「旦過地区まちづくり整備準備委員会」が設置され、整備手法などに関する議論がスタート。北九州市もオブザーバーとして、河川改修担当の建設局河川部を始め、商業支援担当の産業経済局にぎわい部、まちづくり担当の建築都市局整備部3部局から担当者が参加した。議論の主体は市場関係者だったが、実質的には行政主導で議論が重ねられた。

市場近くに整備室を設置

船越英明・北九州市建設局河川部神嶽川旦過地区整備室長

 市としては、所管する業務が異なる以上、3つの部局を参加させたわけだが、市場から「市場の近くに来てくれないか」と要望された。役所の常である人事異動についても、「やっと信頼関係が築けたと思ったら、別の担当者に代わるのは困る」と注文はついた。

 北九州市は16年4月、建設局河川部神嶽川旦過地区整備室を新設し、河川改修に加え、商業支援や区画整理も所管させることにした。翌年には、オフィスも市場近くの商工貿易会館内に構え、さらに職員も基本据え置いた。当初4名だった職員数は現在8名。今後、再整備が本格化すれば、さらに増員される可能性もある。船越英明室長は、10年前から旦過市場再整備に関わってきた人物だ。一連の措置について、「市場再整備に賭ける行政の本気度を示す必要があった」と説明する。

 普通の役所組織ではあり得ない対応だが、北九州市の場合、折尾地区総合整備事業のため、建築都市局に折尾総合整備事務所を設置した前例がある。役所にしては、粋な計らいというべきだ。「市場と市の信頼関係がグッと高まった」(森尾副会長)という。

市場と市の役割を明確化

 市場全体の整備計画を店主全員で議論すると、立地条件の違いから話がまとまらないリスクがあったため、A地区、BC地区、D地区、E地区に分けた。A地区は市が建物を建設する立体換地のエリア、BC地区とE地区は神嶽川改修の影響のある建物が一体づくりの長屋エリア、D地区は店舗ごとに建物が独立しているエリアになる。

 再整備を行うにあたっては、市場と市の役割を明確化する必要もあった。市は、A地区の区画整理(立体換地)のほか、河川改修を行う。一方、市場はA地区以外の建替え、保留床(売却するための床)の取得、管理運営会社の設立を行う。本来であれば、民間のデベロッパーが権利者などと交渉し区画整理を行うのだが、今回は権利関係が複雑な割に事業規模は小さく、民間事業者にとって“うまみ”がない。そこで市が乗り出したという経緯がある。

 当初は、神嶽川上空を利用するため、人工地盤を建設する案が有力だったが、工期が長期におよぶことが判明。工期が長引くことは、店舗の仮営業期間の長期化を意味するため、多くの店主に「既存の利用客が離れてしまうのでは」という不安が生じた。人工地盤以外の手法も含めた5つの案について比較検討した結果、神嶽川沿いのBC地区の店舗の建替えについては、人工地盤がない2階建て建物を建設する案に絞り込んだ。

(つづく)
【大石 恭正】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年10月17日 12:09

【パチンカー代の『釘読み』】NEXUS、19年6月期決算は増収増益NEW!

 パチンコホール「Dステーション」などを全国で50店舗以上展開するNEXUS(株)は、2019年6月期決算で、売上高2,608億9,500万円、経常利益67億6,90...

2019年10月17日 10:45

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(1)NEW!

 関電疑獄は独占(官営)大企業(電力事業・原子力発電事業者)関電における底知れぬ無法経営を露呈してきた。その無法経営を法的側面で支えたのが一群の法務担当職員である。

適切な避難行動実現に浸水リスク明示不可欠NEW!

 木・火・土・金・水を五行という。五行は天(陽)・地(陰)から派生した五種類の作用および法則のこと。世界はこの5つの作用から成り立っているという世界観を表す。

2019年10月17日 10:00

続・鹿児島の歴史(10)~西郷・大久保以後の人物について~NEW!

 西南戦争で多くの有為な人物を失った鹿児島ですが、明治期の人物として森有礼(初代文部大臣)、川路利良(初代警視総監)、五代友厚(初代大阪商工会議所会頭)等がいます。軍...

2019年10月17日 09:52

生まれ変わった「The Okura Tokyo」、テーマは「伝統と革新」NEW!

 2019年9月12日、ホテルオークラ東京 本館は、「The Okura Tokyo(ジ・オークラ・トーキョー)」に生まれ変わった。「和の心で世界をもてなす」という開...

2019年10月17日 09:32

「抗疲労」市場 2020年に12兆円規模に(後)NEW!

 最近は疲れをとる健康食品として、イミダゾールジペプチド、コエンザイムQ10、アスタキサンチンなどのサプリメントも販売されている。日本疲労学会は、特定保健用食品(トク...

2019年10月17日 09:00

「減薬・偽薬」のススメ(後)NEW!

 「偽薬」というものがあることを、2019年10月3日朝日新聞「ひと」欄で初めて知った。文字通り「嘘の薬」である。見かけは直径8ミリの白い錠剤だが、薬効成分は入ってい...

2019年10月17日 07:00

浦江をここ数年で「中国一ゴミのない」県に再生させた政策科学の力!(3)NEW!

 政策科学ですが、「社会における問題の原因を明らかにしたうえで、多様な利害関係者の立場を考慮しながら、最善の解決策を提示する“問題解決型”の学問」と言われています。政...

2019年10月17日 07:00

大戸屋HD、創業家と経営陣のお家騒動が終結~創業者が最も留意すべきは相続税だ!(後)NEW!

 それでは、決定的な対立となったのは何か。ズバリ、相続税の問題である。久実氏が自らの死後に発生する見込みの相続税対策としての功労金問題だ。久実氏が生前の15年3月ごろ...

2019年10月16日 17:58

働き方改革が【匠】を潰す

 ある料理店の料理人が一人前へと成長するための教育プログラムをお教えしよう。皿洗いから始まり、下準備などの雑用、包丁研ぎを経て、調理を行うようになる。包丁研ぎ1つとっ...

pagetop