北九州の台所・旦過市場 再整備でどう生まれ変わる?(後)
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2019年07月18日 12:00

北九州の台所・旦過市場 再整備でどう生まれ変わる?(後)

建替え、移転はローリング案が軸に

森尾和則・旦過市場商店街副会長(小倉かまぼこ(株))

 17年7月、旦過地区再整備協議会を設立。協議会のもとに、旦過市場商店街、川端組合、中央市場の3つの商業団体の営業者24名からなる新市場管理運営委員会(委員長:黒瀬善裕会長)と、土地・建物所有者106名で構成される旦過地区土地建物委員会(委員長:森尾和則副会長)を設けた。管理運営委員会は市場の管理運営などのソフト面、土地建物委員会は建物整備などハード面を議論する。

 建替えにともなう仮店舗営業をどうするかも重要になる。全店舗が市場外に移転すれば、建替えの工期は3~5年程度と短くなるが、近隣での用地の確保が極めて困難なうえ、既存客が離れてしまうリスクがある。そこで、立体換地などにより、市場内駐車場や商工貿易会館前広場などに一部店舗を移転し、段階的に建物整備、移転を繰り返すローリング案が浮上した。工期は4~5年程度で、工程管理がかなり複雑になる。やはり既存客が離れるリスクは残るものの、市場自体は存続することで、客離れのリスクは最小限に食い止められる。

 さらに、仮設店舗費用などが抑制できるため、事業費も軽減されることから、現在はローリング案を軸に議論が進められている。

 市が行うA地区の立体換地では、1~2階に店舗、3~4階に駐車場(収容台数100台)が入る4階建ての建築物を建設する。建物内には、荷さばきスペースや休憩スペースなども設ける計画だ。A~E地区を合わせた1階の店舗面積は、基本計画によると、現状の約3,700m2から約3,360m2に減少する。河川改修にともなう川幅の拡幅により、川沿いの店舗面積が削られるためだ。

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管理運営や雰囲気づくりを議論

黒瀬善裕・旦過市場商店街会長(かしわ屋くろせ)

 既存の組合組織では、不動産売買や仲介などの事業が制限されるため、市場を一元的に管理運営する株式会社の設立が検討されている。土地区画整理事業で生まれる保留床(建物区画)を取得して賃貸事業を行って賃料収入を得るほか、建物所有者の店舗の不動産仲介事業により計画的にテナントミックスを行うなど、市場の魅力を高めるためのさまざまな事業を検討している。「現在、管理会社の形態を議論している。専属の実務担当者を雇用する必要がある」(黒瀬善裕・旦過市場商店街会長)。

 管理運営委員会では、市場の管理運営会社の設立に関する議論のほか、市場の“雰囲気づくり”についても議論を重ねている。市場の魅力である“雑多さ”や“レトロ感”を残しつつ、どう新しく生まれ変わらせるかをめぐって、さまざまな意見が噴出。結論はまだ出ていないが、「毎日来ているお客さんは、レトロを求めていない」(森尾副会長)ことから、「毎日来ている客に喜んでもらえる市場づくりが基本」(黒瀬会長)が議論の主流になりつつある。

 観光客のなかには「今のレトロな雰囲気が好き」という意見もあるが、毎日来る客より、観光客のほうを優先するわけにはいかない。「インバウンドなどの観光客が来るのも、地元の客で賑わっているからこそ」(黒瀬会長)だからだ。「旦過の魅力はとにかく人。みんなが戻って来られる旦過にしたい」(森尾副会長)という思いがある。

 市場として、店舗の種類もしっかり管理していく必要がある。異業種の参入を拒むわけではないが、市場である以上、「生鮮店5割」を守りたい考えがある。また、それ以外の店も食器店など「食」に関係する店が望ましいという思いも。管理運営会社に、新たに入居する店舗を審査する役割をもたせるという選択肢もある。

エリアごとの共同建物を検討

 土地建物委員会では、A地区以外の地区の土地建物について、どういう枠組みで整備するかなどについて議論が進められている。地権者には、現役の店主もいれば、遠方に在住する相続人などもおり、それぞれの考えもバラバラだ。そんな場所に建物を立てるわけにはいかない。現在は地権者が、エリアごとに共同建物を整備することを検討している。

 既存の建物は2階建てのため、次も2階建てにする案が出ているが、まだ具体的には固まっていない。2階部分を使っていない店舗も少なくなく、新たな借り手が見つからない限り、空き部屋が出るリスクがあるからだ。「建設コストも高くなるので、正直2階は要らないが、新たな借り手が見つかれば話は変わる。まだまだ検討が必要」(森尾副会長)という状況だ。「神戸や東北の震災のなかから商店街を復興させた方々と比べ、我々にはじっくり計画を考える時間がある。その点は恵まれている」(船越室長)という。

 建替えにかかる費用はエリアごとに異なるが、あるエリアのモデルケースでは、1店舗(床面積40m2)あたりの費用は、2階建ての場合約1,600万円。店主の自己負担額は約1,100万円~1,300万円と試算している。月々約5万円を20年間支払うカタチだ。

 意向調査によれば、自己負担額の支払いについては、8割以上の権利者が前向きな姿勢を示しているが、金額について同意を得られるかは不透明だ。

これからの旦過を自分たちでつくる

 19年度中をメドに、市では、都市計画手続きを行い、20年度には区画整理事業の認可を完了させる予定だ。「再整備後は、今以上に良い市場になっていてほしい。そのためにはトコトンやる」(船越室長)と意気込む。市場のほうでは、建物基本設計、管理運営会社の設立準備を終わらせる考えだ。「これからの旦過を自分たちでつくる。誰かに望むものではない」(黒瀬会長)とこちらも威勢が良い。市場側の議論が今年度内にまとまるか不透明だが、早ければ、20年度から詳細設計に入り、22年度に工事に着手する見通しだ。

 建物は老朽化し、通路は狭く、お世辞にも清潔感があるとはいえない旦過市場に、なぜ多くの人々が毎日足を運ぶのか―。それは、それぞれの店ごとに、近隣住民を中心とした馴染みの固定客がついているからだ。固定客は目当ての商品を求めて、店にやって来る。店のほうでも、毎日のように顔を合わせる客が何を求めているのか、熟知しているに違いない。商売の基本中の基本が成立しているから、市場は廃れないのである。

 店員と客が毎日顔を合わせ、世間話などを交わしながら、商品を買う。昭和のころには全国各地で見られた光景が、旦過市場には残っている。「昭和レトロ」といわれる市場の雰囲気は、そういう人の営みから生まれるものなのかもしれない。

(了)
【大石 恭正】

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