2024年04月21日( 日 )

区画整理事業による新たな賑わい「伊都の杜」(前)

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可也山に臨む「コットンヒルズ伊都の杜」

市の人口増加・若返りを牽引

 施行期間が2012年1月~19年3月までの約7年で計画された、糸島市の「前原東土地区画整理事業」。対象地区の中央に約1万1,000m2の公園を配した新興住宅地の整備を主題とした同事業は、糸島市にどのような影響をもたらしたのか―。

 約20.2haの広大な土地を住宅地として造成したことで、同事業が人口の受け皿確保の面で効果を発揮したことは疑いようがない。とくに同事業地内で、西日本鉄道(株)が事業主として114区画(全212区画)の住宅販売を手がける「コットンヒルズ伊都の杜」(以下、伊都の杜)において、14年10月に入居が開始して以降の人口増加は顕著だ。

 伊都の杜の周辺には、スーパー「サニー前原店」や「マックスバリュ前原店」「とんかつ浜勝福岡前原店」など複数の飲食店やその他商業施設が営業しており、日常生活を送るうえでの利便性は相応の水準で担保されている。こうした周辺環境の良さも手伝い、住宅購入者の半数以上を、30代のいわゆる子育て世代のファミリー層が占めている。

 「前原東土地区画整理事業」にともなう伊都の杜の誕生は、単なる市の人口増加にとどまらず、20歳未満の人口が盛り返しを見せる“市の若返り”にも寄与したといえる。

造成工事が進む伊都の杜(2017)
※クリックで拡大

JR糸島高校前駅の開業

 伊都の杜の存在だけでは、人は動かない。まちづくりの基礎となる人口増加を確実に成し遂げるためには、交通インフラの拡充も必要不可欠だ。伊都の杜は国道202号バイパスに通じているため、自動車による福岡市内・佐賀方面とのアクセスに問題はない。しかし、自動車をもたない住民が遠方に出かけようとした場合、不便さを感じることになる。

 こうした交通アクセスに対する課題に関しては、伊都の杜が生まれる30年以上前、すでに先達が動いていた。1982年3月、当時の前原町長が国鉄の門司鉄道管理局宛に「浦志地区に新駅を設置してほしい」と陳情を寄せていたのである。

 その後、13年12月25日、JR九州と糸島市、地元住民でつくる筑肥線新駅設置促進期成会の三者間でJR筑肥線「波多江駅」~同「筑前前原駅」間に新駅を設置するとの覚書が締結された。こうして、先達の思いは具体性をともなったプロジェクトとして始動。そして19年3月16日、多くの関係者らから祝福を受けてついに開業に至った。

 伊都の杜と糸島高校前駅という2つのハード面の充実があればこそ、「週末に遊びに行きたいまち糸島」から、「暮らしてみたいまち糸島」への転換が進んだ。伊都の杜は新たな行政区としてだけでなく、浦志を含む周辺エリアはもちろん、糸島市全体に活気をもたらす“カンフル剤”としても機能しているのだ。

生活拠点として賑わう伊都の杜(2019)

(つづく)
【代 源太朗】

(後)

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