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2019年08月01日 14:58

ゆとり教育抜本見直しに命をかけた20年(2)

進学塾「英進館」館長/国際教育学会理事/福岡商工会議所議員
筒井 勝美 氏 78歳

 1979年(昭和54)4月、福岡市・大名のビルの一室を借り、中学受験専門の進学塾「九州英才学院」を創立したものの、まったくアテ外れのスタートとなった。

 開業にあたって、彼は自己資金500万円、銀行からの借入金1,000万円の合計1,500万円を準備。生徒募集のために何百万円もの広告費を投入したにもかかわらず、集まった生徒数は小2から小6までのわずか16人。このなかには2人の息子と、知人から紹介された子ども数人も含まれていたという。目標であった採算ライン100人の2割にも満たない少なさで、いきなり頭を抱える結果となってしまった。

 家賃の50万円に加え、常勤講師3人の人件費などで、ひと月100万円の赤字。業界で知名度も実績もない、脱サラ経営者の彼は、イヤという程、現実の世界の厳しさを見せつけられた。「どんなに高尚な指導方針を掲げようが、未知数の学習塾に子どもの将来を託す気になるだろうか?」――自問自答の毎日。常勤講師たちも状況を察知したのか、次々と辞めていった。

 この窮状を打開するため、昼間は義弟の歯科医院で事務長として働き、夕方から午後10時まで教師を務めた。学生アルバイトでしのぎながら、担当の算数・理科だけでなく、全教科教えることもあった。授業が終わると生徒募集の広告や教材づくりに励んだ。

 教室も半年後に家賃7万円の古いアパートに移転した。いつ塾をたたもうかとも考えていたが、支えは義母の「石の上にも3年。とにかく辛抱して頑張りなさい」という励ましの言葉だった。義母は陰で何かと彼の家族をサポートもしてくれていたそうだ。 

 もう1つ支えとなった言葉があった。九州松下電器初代社長・高橋荒太郎氏の「仕事がうまくいかないのは、成功するまでやらないからだ」。この2つの言葉で、何とか持ちこたえることができた。

 そんな苦しい状況が続く中、塾生の保護者の1人から「高校受験の部もつくってほしい」との要望があった。開設2年目、生徒数は28人と倍近くに増えていたこともあり、教室も大名のアパートから薬院の古いビルへ移転。塾名も名前負けというか、敷居が高かったのではと反省し、心機一転「英進館」と改名した。

 塾名は変更しても、英才育成の理念は変えなかった。2年目後半には生徒数が50人に増え、一筋の光明がみえてきた。

 英進館に名称を変えて福岡へ転勤組の優秀児の入塾も増え、初めての中学受験で、東京の開成中学校や、灘中学校(神戸市)、早稲田中学校(東京都)、ラ・サール中学校(鹿児島市)への合格者を出し、久留米附設中学には長男が合格した。そのころ、福岡近郊の合格実績が高い塾は、福岡県内の修猷館高校、福岡高校、久留米附設中学・高校、県外ではラ・サール中学・高校に目標を置いていた。

 英進館では首都圏の開成中学や麻布中学、全国最難関の灘中など、首都圏・関西地域の難関校にも目標を置いた。それは、九州、福岡地区の「お山の大将」ではいけない。将来、生徒たちに首都圏の有名大学や医学部など社会で活躍できる難関大学を含め、世界へと羽ばたいてほしいとの思いからきたものだった。

 3年目の春には生徒数が100人を超えて赤字を解消。再び常勤講師を採用することができた。まさに「石の上にも3年」の努力が実ったのだった。

 この年、妻・幸子氏からのアドバイスで、英進館の将来を決めたといえるような出来事があった。東進スクールの創立者、永瀬昭幸氏との出会いである。妻が何気なく読んでいた「婦人画報」で永瀬氏の記事に目をとめ、「会って相談してみたら」と彼に勧めたことがきっかけであった。

 永瀬氏はラ・サール高校から東京大学を卒業して野村證券に2年勤めた後、東進スクールを開校。当時、学習塾業界で話題の人物だった。同じ九州人で、脱サラして学習塾業界転身という共通点を頼りに面会を申し入れた。すると永瀬氏は快く会ってくれ、東京の有名進学塾「四谷大塚」の教材が参考になるなど、貴重なアドバイスをもらうことができた。

 早速、四谷大塚にも足を運び、教材「予習シリーズ」や「日曜テスト」、「合・不合判定テスト」の導入に成功。西日本の進学塾では初めての画期的なことで、その後の大きな飛躍の原動力となった。

(つづく)
【本島 洋】

<プロフィール>
筒井 勝美(つつい・かつみ)

1941年福岡市生まれ。63年、九州大学工学部卒業後、九州松下電器(株)に入社。1979年「九州英才学院」を設立。その後「英進館」と改称。英進館取締役会長のほか、現在公職として国際教育学会(ISE)理事、福岡商工会議所議員、公益社団法人全国学習塾協会相談役等。2018年に紺綬褒章受章

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