日本リージャスを子会社化　躍進するTKPのビジネスモデル（後）

（株）ティーケーピー　代表取締役社長 河野 貴輝 氏

久山温泉、配膳人派遣会社、相次ぐM&Aで傘下へ

　――貸会議室やレンタルオフィスなど、「場の提供」を補完するM&Aもありました。

　河野　7月1日には、（有）品川配ぜん人紹介所（東京都港区）を子会社化しました。同社は、ホスピタリティの高い配膳人材を育成し、現在の派遣登録者数は約3,800名を誇ります。有名ホテルを中心に、宴会・結婚式や会館などへ配膳人材の派遣や紹介を行っています。人手不足の時代にありながら、約3,800人もの配膳人材をTKPが提供する会場でも活用できます。今まではハード面への投資が多かったですが、これからはソフト面への展開も強化していきます。ホテル宴会場への配膳人材の派遣や紹介を含む「ホテル宴会場運営支援」を行うことで、他社のホテルやホテル宴会場との良い関係を築いていきます。

　子会社化により、既存の取引先ホテルの料理をTKPグループの会議室へケータリングする仕組みの構築、TKPを利用するお客さまを既存の取引ホテルに送客する営業支援など、総合的な「ホテル宴会運営支援事業」も可能だと考えています。

　さらに、ビジネスパーソンが泊まり込み研修をできる場として、熱海、箱根、湯河原などにある企業の保養所をセミナーホテルとして活用しています。平日は研修・セミナーホテル、休日は個人用のホテルと、ハイブリッド運用しているのです。

　福岡では、久山町の「久山温泉 ホテル夢家」を取得し、6月から運営を始めました。稼働率を上げるために、個人客だけではなく、ビジネス客のニーズも取り込んだかたちです。

　――都心部ではアパホテルとの提携もありますが、宿泊施設の開発を拡大させる考えはありますか。

　河野　福岡市では、アパホテルのフランチャイズとして20年に2棟のホテルを開業する予定です。これにより国内10棟体制となり、アパホテル最大のフランチャイジーとなります。貸会議室に加えて都心部での宿泊研修にも対応し、法人ユーザーの利便性を高めています。ただし、貸会議室やレンタルオフィスの伸びが第一ですので、宿泊をメインに据えてはおりません。

　ビジネスの手法には、大きくインカムゲイン、キャピタルゲインがあり、インカムゲインはまさに「持つ経営」によって、お金がお金を生むモデルですが、資金力がないとできません。

　キャピタルゲインは、安く買って高く売り、その差額で儲けるモデルです。TKPはビルの1室を長期で借りて、それを時間貸しの会議室にすることから始め、それが現在のビジネスモデルとなっています。オーナーから借りた不動産に付加価値を加えたうえで貸し、その差額分が利益になるというキャピタルゲインに近い発想です。この手法は「持たざる経営」を基本としている弊社にとって、理想的だと思っています。

故郷・大分にも投資、大分トリニータ筆頭株主へ

　――九州では今後、どのような展開を考えていらっしゃいますか。

　河野　九州は創業初期に進出しただけでなく、私の故郷・大分もありますので、力を入れていきたいですね。とくに福岡は今年、天神においての日本リージャスと初の共同出店や、久山温泉の取得・運営、市内で2棟のホテル開業など、全国的に見ても強化しているエリアです。

　さらに、サッカーJリーグ1部（J1）の大分トリニータを運営する（株）大分フットボールクラブ（大分市）の筆頭株主になりましたので、大分の地方創生に向けて、事業展開ができないだろうかと考えています。現在、愛媛県松山市にコールセンターを置いていますが、大分でもコールセンターやコンタクトセンターのニーズはありますので、検討していきたいです。働き口があれば、過疎化はしません。大分には温泉を軸とした観光資源は豊富にありますので、宿泊研修施設の運営にも挑戦したいですね。

　九州に限らず、国内でもまだまだ事業拡大の余地はあります。また、日本リージャスの子会社化を足がかりに、国内だけでなく、積極的に海外にも事業を広げていきます。

（了）
【長井　雄一朗】