今後3年間で不動産賃貸仲介流通市場の最大手へ 「セルフ内見」のITANDI(後)
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スマホで完結「セルフ内見」
――イタンジでは(株)ビットキーと協力し、新しい「セルフ内見」の在り方を提案されました。
野口 今までのポータルサイトでは、消費者が気になった物件の内見をしたいと思ったとき、まずは物件が空いているのかどうかを問い合わせ、次に対象の物件を管理している店舗に出向き、店舗で物件の紹介・説明を受け、そしてようやく現地に足を運んで内見を行い、内見が終わるとまた店舗に戻り―と、とにかく時間がかかり過ぎていました。1つひとつの契約にかける時間のロスが、管理会社と消費者の双方にとって大きかったのです。
弊社のセルフ内見型 賃貸サービス「OHEYA GO」では、消費者が店舗に出向くことなく、サイト上で内見したい物件や日時を予約可能となります。内見や申し込み・契約に必要な手続きのすべてが消費者の任意のタイミングで可能になり、「来店」という行為をなくすことができるのです。住まい選びに必要不可欠な、内見・申し込み・契約の在り方を抜本的に変えることができるこのサービスを体験していただくことで、ポータルサイトとしての地位を確立させていきたいですね。
――利便性の良さは群を抜いていると感じますが、やはり物件数も一定数が必要です。
野口 物件数の確保に向けた取り組みの一環として、今回のビットキー協力によるスマートロック「bitlock LITE(ビットロックライト)」10万台の無料提供があります。
不動産会社向けにセルフ内見に関する説明会を行ったところ、多くの企業さまにご参加いただけ、セルフ内見に対する期待の高さがうかがえました。
――スマートロック10万台の無料提供に際して、企業からはどのような声が聞かれますか。
野口 おおまかに2つの反応があります。1つが「すぐやる」と即決されるパターンと、もう1つが「他社の動向を見て決めたい」というパターンです。多くの企業さまが、技術革新が進むなかで「避けては通れない」という感覚をもたれている印象を受けました。
今後、先行してスマートロックと消費者主体のセルフ内見を取り入れられた企業さまからの実績が出てくれば、導入を躊躇されている企業さまの心理的な障壁も取り除かれるはずです。
――セルフ内見対象物件に関して、数値目標はありますか。
野口 弊社は大きな目標として、セルフ内見を通じて今後3年間で全国の不動産賃貸仲介流通市場の最大手を目指します。
もちろん、限度はあります。たとえば、ハイエンドの物件をどれだけセルフ内見の対象物件にできるのかといった問題や、消費者によっては不動産に関して自信がないので、店舗でしっかり説明を受けたいという人もいるでしょう。
――ハイエンド物件の話が出ましたが、セキュリティに関してはどのような対策を取られているのでしょうか。
野口 弊社のセルフ内見利用時、初回利用時にクレジットカードを登録していただき、100円の決済をお願いしています。これには2つの意味合いがあります。
1つは、クレジットカードの信用を担保にするということ。もう1つは、100円の決済についてですが、これは内見保険です。海外などに旅行に行く際の旅行保険のようなものと考えていただけるとわかりやすいと思います。内見中に何か破損させてしまった場合に、1,000万円を上限に保険で対応するというものです。クレジットカードの登録によって「誰が内見されたか」が、スマートロックの利用によって「いつ開錠されたか」という時間も判別可能ですので、不測の事態に対するリスクヘッジの体制も整えています。
新生イタンジが目指すもの
――前代表・伊藤嘉盛氏のときと比べて、イタンジ内で大きく変わった点は何でしょうか。
野口 イタンジは、社員が自由に意見を言い合える風通しの良い企業風土をもちますが、以前のように社員の意見・実績を基に新規事業を起ち上げるという段階は終わりました。今、イタンジは住まい選びの体験を「OHEYA GO」によってなめらかにするという1点に舵を切っています。人・モノ・金、すべてのリソースをそこに投入しているのです。
既存のポータルサイトが、物件検索から管理店舗への問い合わせまでを主とする集客媒体であるのに対して、セルフ内見型賃貸サービス「OHEYA GO」は賃貸借契約の締結までを見据えたものになります。サイト内では物件情報の提供はもちろん、ライフスタイルの提案まで幅広く行っていく予定です。
私は今後、「OHEYA GO」をGAテクノロジーズグループが提供する不動産サービスの入り口にしていきたいと考えています。不動産賃貸は、多くの人にとって不動産に関する意思決定の最初の接点になると考えています。
将来的には、金融の分野にまで踏み込める可能性があります。お客さまが月々に支払う諸々の費用において、最も高額なのが賃料や管理費を含む住まいへの支払いです。結果として、家賃の引き落とし口座やクレジットカードの支払い口座は、メインバンク化しやすい傾向にあります。賃貸契約の意思決定をした際に必要となる情報でもあり、その契約の入り口を提供する弊社への需要は高まるものと思われます。
――最後に、イタンジが目指す理想像についてお聞かせください。
野口 具体的な企業名を挙げると、Amazonやマイクロソフトを目指しています。たとえば、マイクロソフトは20年以上前にExcelやPowerPointを開発し、これらのソフトは企業活動にとってなくてはならないものになりました。
人口減少にともなう人手不足や、技術革新による電子契約の普及など、私たちが提供するサービスが支持を得られる環境が整いつつあります。「OHEYA GO」を皮切りに、BtoBとBtoCを同時に開拓しながら得られた情報を活用し、不動産業界における情報のロジスティクス整備・管理にいち早く取り組むことで、イタンジをAmazonとマイクロソフト両社の性質を合わせ持った企業へと成長させていきます。
(了)
【代 源太朗】<Company Information>
Fukuoka Sales Branch
(GAテクノロジーズ福岡営業所)
所在地:福岡市中央区天神1-1-1 アクロス福岡12F
開設日:2019年8月1日<プロフィール>
野口 真平(のぐち・しんぺい)
早稲田大学教育学部卒。同大学在籍中、早稲田大学主催のビジネスプランコンテスト優勝、同年に学生向けSNSを作成し起業。その後、IT企業に入社し、エンジニアとしてシステム設計を担当。2014年2月、イタンジ(株)に入社。同社でWEBマーケティング、不動産仲介業務、システム開発(rails)、管理会社向けシステムのコンサルティング業務、執行役員を経て、18年11月に代表取締役に就任。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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