2024年04月20日( 土 )

時流を読んだマンション事業からの脱却 社員一丸で“挑戦者”として次なる展開を(2)

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市況を鑑みてマンション中断、落ち込み分は別事業でカバー

 ――御社の事業の中核であったマンション事業の現況については、いかがですか。

代表取締役社長 石原 紀幸 氏
代表取締役社長 石原 紀幸 氏

 石原 実は現在、弊社ではマンション事業を一時中断しております。前期中に「パレスト・リッツガーデン百道」(福岡市早良区)と「パレスト呉駅前」(広島県呉市)を完売させたことで、在庫をゼロにしました。また、新たな仕入は一切行っておりませんので、今期20年1月期は弊社の25年目にして初めて、マンション事業での売上がゼロになる見込みです。

 ――御社の祖業ともいえるマンション事業の中断とは、かなり思い切りましたね。

 石原 東京オリンピックの開催が決定して以降、建築費がかなり高騰しています。よほど立地の良い場所であれば、それを吸収しながら販売することができるのでしょうが、あまり立地が良くない場所であったり、あるいは知名度の高くないメーカーが手がけると、たちまち販売に苦戦するという状況が出始めています。

 また一方で、マンション販売での利益率も下がってきています。弊社会長の平崎からも「何かヤバい臭いがしてきた」「そろそろマンションは不況になる」といったアドバイスをもらいましたし、“今、マンションは危なすぎるな”という全社的な意見が一致したことと、マンション事業を中断してもその他の事業である程度はカバーできるとの公算があったことで、今回の決断に踏み切った次第です。

 ――マンション事業の中断に踏み切れるだけ、その他の事業が育ってきているのでしょうか。

 石原 今、大きく育ってきているのが、戸建住宅企画・販売事業です。同事業では17年6月から、自社ブランド分譲建売住宅「P-TELAS(ピーテラス)」の販売を行っています。注文ではなく建売ですが、弊社で手がけている浄水システム「ANOA(アノア)」を全戸に標準装備するなど、高品質(ハイクオリティ)かつ、お求めやすい価格(ハイコストパフォーマンス)を実現することで差別化を図っています。この住宅事業では現在、福岡と大分にモデルハウスを2棟もっており、今期は70棟くらいを販売予定で、前期比2倍近くの売上を見込んでいます。

 もう1つは、実はソーラーシステム販売事業での施工がまだまだ残っています。これは、前期に予定していた経済産業省の認可が遅れ、かなりの案件が今期にずれ込んだもので、これが売上のかなり大きな柱の1つになっています。もちろん太陽光については、来期や再来期になると次第に落ち込んでいくことは予想していますが、今期に関しては住宅と同じレベルまでいくのではないでしょうか。

 それでも会社全体の売上高としては、19年1月期の約70億円から、今期20年1月期は45億円くらいまで落ち込むことが予想されます。ただし、前期の売上高約70億円のうち、マンションが約50億円を占めていることを考えると、それがなくなっても45億円くらいの売上高が見込めるのは、これまで進めてきた事業の多角化が、ある程度はかたちになってきたのかな、と思います。今期に関しては住宅事業と太陽光事業の2つが柱となり、その他の浄水器販売事業や不動産関連事業などで少しずつ積み上げていきます。

 ――そうすると、マンションデベロッパーとしては、当分の間は開店休業という状況でしょうか。

 石原 そうですね。会長の平崎からは「良い土地があったら買ってもいいぞ」とはいわれていますが、一方で「今すぐ開発するかどうかは別だ」ともいわれています。しばらくの間は、マンション開発はお休みですね。

(つづく)
(文・構成:坂田 憲治)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:石原 紀幸
所在地:福岡市中央区長浜1-1-1
設 立:1995年2月
資本金:1億9,134万円
売上高:(19/1)73億8,487万円

<プロフィール>
石原 紀幸(いしはら・のりゆき)

 1963年2月生まれ、福岡市出身。九州大学卒業後、85年4月に(株)リクルートに入社。88年4月に新生住宅(株)に入社した。95年2月、(株)ダックスの設立と同時に入社。2018年3月の代表取締役副社長就任を経て、19年4月に代表取締役社長に就任した。

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