2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

建築設計のパラダイムシフト!? 「BIM」の普及を阻む壁とは(前)

属性情報を包含した仮想空間上の3次元モデル

 建設業界における人材不足の問題が叫ばれて久しい一方で、「働き方改革」の加速化を強く求められている現在、建築の生産性向上を実現するツールとして、「BIM(ビム)」というソリューションが注目を集めている。

 BIMとは「Building Information Modeling」の略称であり、コンピューター上の3次元の仮想空間のなかに、模型のように建物を組み上げる設計手法。設計された3次元モデルは、建物を構成する材料や設備機器などのそれぞれの部材ごとに「製品情報」「位置情報」「数量情報」「価格情報」などの個々の属性データが付加されている。それらを設計図や3次元モデルとリンクさせてデータベース化することで、設計から施工、維持管理までのあらゆる工程でこれらの情報を一元的に管理することが可能となっており、建築ビジネスの業務を飛躍的に効率化しつつ、建築デザインにイノベーションを起こす画期的なワークフローであるといえよう。

 なお、日本においてはまだ「2次元CAD」による設計が主流となっているが、この手法では完成形が3次元である建築物を2次元に投影して表現しなければならないため、「平面図」や「立体図」「パース」などを別々に作成する必要がある。もちろん積算図や建具表なども、それぞれの図面を別途作成しなければならない。

 一方でBIMを用いた場合は、仮想空間上の3次元モデルから必要な分を切り出すことで、前述の平面図や立体図、パースなどを瞬時に作成することが可能。部分的な修正が発生した場合も、2次元CADのように関連する図面をすべて1つずつ修正する必要はなく、大元となる3次元モデルを修正すれば、その他のすべての図面に反映される仕組みだ。さらに、3次元モデルを構成する1つひとつの部材が、それぞれ性能や価格などの属性情報をもち、それがすべてデータとして集約されているため、たとえば「ビスが何本使われている」「どれだけの面積」といった情報をすぐに得られるほか、積算の際にも瞬時に正確な金額をはじき出すことができるという優れものだ。

国交省が主導して積極的な活用を推進

仮想空間上に、さまざまな属性情報を含んだ
部材で3次元モデルを構築する「BIM」

 BIMは、発祥国であるアメリカで2007年にガイドラインが公表されたことで、次第に世界的な広がりを見せていった。日本においては09年にBIMの関連書籍が発売されると、建築分野を中心にBIMの機運が高まり、一部では導入が活発化。このことから、09年が日本における“BIM元年”とも呼ばれている。翌10年3月には国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を宣言。14年3月には「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」を公表した。さらに、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの推進に向けて、同ガイドラインを18年8月に改定するとともに、併せて適用するものとして、BIM電子成果品の作成方法および確認方法を定めた「BIM適用事業における成果品の手引き(案)」の作成も行っている。そして19年6月、官民が一体となってBIMの活用を推進し、建築物の生産プロセスおよび維持管理における生産性向上を図るため、学識経験者や関係団体からなる「建築BIM推進会議」を設置。これまでに3回の会議を開催し、検討を進めている。

 このように日本においては国交省が主導するかたちで、BIMおよびCIM(※1)の試行を進めており、18年度までに同省の設計業務において291件、工事で339件の計630件を実施。とくに18年度では、大規模構造物詳細設計においてBIM/CIMを原則適用することとしており、200件を目標にBIM/CIMの積極的な活用を推進した結果、設計業務で147件、工事で65件の計212件での活用がなされた。

 たとえば九州地方整備局では、2022年11月の竣工予定で建設が進んでいる「鹿児島第3地方合同庁舎」整備事業でBIMが活用されている。同庁舎の建設地は鹿児島城(鶴丸城)跡の東に隣接する場所で、鹿児島の歴史・文化・観光を代表するエリアであり、市の景観形成重点地区にも指定されている。そのため、鹿児島県と鹿児島市、そして国(九州地方整備局、九州財務局)とで連携し、景観形成に配慮した庁舎の整備内容を検討していく必要があった。なお、こうした事業では地域の関係者との合意形成が不可欠であり、設計期間のなかにおける合意形成の時間は大きなウェイトを占めている。同事業においては、地域連携検討分科会や鹿児島市景観審議会、さらにはユニバーサルデザインレビューなどでBIMを活用。街並みレベルからヒューマンスケールまで多様なレベルの空間情報を視覚的に提供できるBIMの利点を生かし、2次元の図面だけではわかりづらい部位の“見える化”を通じて、合意形成に役立てている。

 九州地方整備局の営繕部・計画課長の大槻泰士氏は、「BIMの最大の特徴は、データ上の各部材が“情報”をもっていることで、設計だけでなく実際の施工に至るまで、一気通貫して活用できる点です。今後、官民ともにさらにBIMの普及が進んでいくことで、あらゆる場面での生産性・効率性の向上につながればいいですね」と期待をのぞかせる。

(つづく)
【坂田 憲治】

※1 CIM:「Construction Information Modeling/Management」の略称で、建築分野で進められているBIMの概念を土木工事において活用しようというもの。BIMと同様に、3次元モデルを中心に情報共有することで、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図る。

(中)

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