建築設計のパラダイムシフト!? 「BIM」の普及を阻む壁とは(後)
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BIM普及を阻害する初期ハードルの高さ
こうして話を聞いていく限りでは、BIMというソリューションは建築設計における“パラダイムシフト”だといってしまっても過言ではないだろう。だが、“BIM元年”といわれる09年から10年間が経過してなお、日本では2次元CADによる設計手法が主流だ。国交省による主導もありながらも、現状では、まだそれほど普及が進んでいないようにも思えるが、その要因は何だろうか。
「BIMは、実際に活用する段階になってしまえば、これほど便利なものはありませんが、そこまでもっていくハードルが非常に高いのです」と栗原氏はいう。
同社の場合は、BIMの導入にあたっては、まずRevitの機能分析に取り組み、スタッフ全員がRevitをマスター。この体制づくりに、1年近くの時間を要した。「我々のような小所帯であれば、腹をくくって“えいやっ”と進めることで何とかなりましたが、これが大手であれば、スタッフの技術の統一化も含めて、なかなか難しいのではないでしょうか」と栗原氏。今なお主流である2次元CADに慣れている設計者は、思考回路が2次元であるため、いざBIMを使い出しても、なかなか思考や発想の転換が難しいのだという。
また、同社のように効率的な運用をするためには、Revit用のBIMパーツである「ファミリ(※2)」の整備がカギとなる。同社では、木製建具や鋼製建具、アルミ建具、カーテンウォール、ロゴマークの入った看板や各種サイン、道路の縁石、駐車場のラインなどを細部に至るまでミリ単位の精度で丁寧に作成。各部の寸法や材質なども、パラメーターを操作することで自在に変更できるようになっている。だが、このファミリを作成するのにも、かなりの時間と労力を要する。もちろん、BIMを使っていけばいくほど、ファミリを作成していけばいくほど、その蓄積によって新規の設計はどんどん効率的になっていくのだが、そのステージに至るまでが長いのだ。市販されているファミリデータなどもあるものの、フォーマットが統一されておらず、カスタマイズもしづらく使いにくいという。こうした初期ハードルの高さこそが、日本におけるBIMの普及を阻害している要因なのである。
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BIMというソリューションが、これまでの設計の在り方を根本から変えてしまうほど、大きなポテンシャルを秘めていることは間違いない。だが、国交省などの“官”による主導だけでなく、各設計事務所などの現場で実際に活用する“民”も含めて本腰を入れて取りかからなければ、普及への道のりはまだまだ険しいものだといえよう。
(了)
【坂田 憲治】※2 ファミリ:構造材、壁、屋根、窓、ドアから、製図に使用する、記号などRevitプロジェクトに追加するすべての要素の総称のこと。ユーザーはファミリエディタを利用して、パラメトリックなコンポーネント(構成要素)を作成することができる。
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