ANA Cargoが北九州空港を選んだワケ(後)
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2019年11月07日 12:00

ANA Cargoが北九州空港を選んだワケ(後)

北九州就航の決め手は深夜便と産業集積

北九州空港定期貨物便就航セレモニーの様子
(写真提供:ANA Cargo)

 ANA Cargoの強みの1つは、09年10月に運用開始した「沖縄貨物ハブ」だ。沖縄拠点化のメリットは、「ハブ&スポークの形態にて、飛行4時間圏でアジアの主要都市をカバーできる点」にある。現在、日本から上海、香港、バンコク、シンガポールを結ぶ。24時間運用可能なハブ機能を生かし、貨物専用機の深夜フライトにより、日本国内、アジア/中国を結ぶ高速輸送体制を構築している。沖縄貨物ハブを結ぶ国内空港には、成田空港、羽田空港、関西空港、北九州空港がある。

 北九州空港への貨物便の就航は18年6月。ANA Cargoにとって北九州発の貨物便は初めての試みであった。就航式典に出席したANA Cargoの外山俊明社長は、「九州の貨物需要は非常に旺盛だ。北九州からアジア、世界へと貨物の流れを変えたい」と決意を表明した。

 九州からの国際貨物は、九州発旅客便での空輸のみならず、仕向け地、物量、大きさなどの貨物特性を踏まえて関西および首都圏へ陸送、当該地域から空輸されるケースも多いが、北九州便の就航により、夜集荷・深夜輸送・翌朝到着が可能となり、地上での各種輸送と航空輸送がベストミックスすることでリードタイム(発注から納品までの所要時間)はモデルパターンで約1日分短縮可能。また、さまざまな貨物特性に対しても、北九州発貨物便での輸送という選択肢が増え、より利便性が高まった。リードタイム短縮や輸送力増強は、工業製品や生鮮品の輸出にとって大きな恩恵となる。

 当初は、関西から北九州を経由し、沖縄貨物ハブに飛んでいたが、18年10月に関空を成田に変更。併せて福岡空港向け輸入貨物の転送取り扱いを開始した。

 成田~北九州~沖縄便は現在、週5便(北九州出発日付ベースで火~土)が就航している。たとえば、北九州空港から上海への輸送モデル(輸出)はこうだ。夕方集荷された貨物が、トラックで北九州空港に到着。深夜、北九州空港から那覇空港を経由し上海空港へ空輸される。早朝には上海空港に到着し、通関後、翌昼までに現地納品となる。

 北九州を選んだ理由は、「まず、我々がお役に立てる場所であることが前提。地域産業や北九州空港の活性化の一翼を担いたかった」(森本氏)だという。比較検討や調査を経て、「自動車や半導体などの産業集積」や「生鮮食品などの多彩な商品」など、日本経済を支える企業・業態におけるさまざまなニーズを念頭に、北九州への就航を決めた。「24時間運用の北九州空港は貨物便にはピッタリ」(同)と評価する。

 福岡空港では滑走路の増設工事が進んでおり、発着枠が増える可能性があるが、「貨物便は、企業の生産/物流活動を念頭に置き、深夜に飛ばすのが一般的な考え方」(同)だと指摘。離発着の時間制限の有無は、就航検討時の要素として大きいようだ。

貨物物流の拠点整備、福岡空港との関係

 国際貨物の流動が鈍化している状況もあり、九州の各空港を出発する国際貨物の荷動きは前年度に比べて減少しているものの、ANA Cargoの取扱量自体は、定期貨物便の就航により増加傾向にある。ただ、「我々が目指す輸送規模の水準から見れば、まだまだ道半ば」(森本氏)と、さらなる利用推進を目指す考えだ。そのためには、北九州空港の貨物取扱体制の整備、充実が課題になる。

 現状では、九州のフォワーダー(貨物利用運送事業者)の航空輸出手続き拠点は、長年の貨物取扱いの歴史もあって福岡空港に集積しており、北九州空港近辺には存在しない。北九州空港で貨物を航空機に搭載する場合、大半が福岡空港で受託した貨物を陸路で輸送する必要がある。このプロセスについて、とくに北部九州方面からの出荷に際しては、ANA Cargoとフォワーダーのほか、荷主にとって、時間的にもコスト的にも大きなロスになる。「北九州空港でのさらなる物流機能整備を期待したい」(同)のが本音だ。

 ただ、福岡空港にすでに拠点をもつフォワーダーが、北九州空港にも拠点を併設するのは難しい。この点、「まずはフォワーダーの業務を代行する中間業者の活動が一定規模になってくれば、流れが変化していく部分もあるのではないか」(同)と指摘する。たとえば、以前、成田空港の混雑緩和の施策の1つとして成田空港と都心の間に設置された原木貨物ターミナルを参考に、福岡空港と北九州空港の双方にアクセスの良い場所で、両空港共同の貨物取扱ターミナルを設置し、両空港への貨物輸送網の整備などもできれば、物流会社や荷主にとって使い勝手の良い物流システムが生まれる可能性はある。

ポテンシャル高い九州の貨物物流

 国に対して福岡県や北九州市などは、滑走路を3,000mへ延長する要望を提出している。3,000m級の滑走路は、長距離路線便の利用を見据えて空港のレベルを上げるという点で意義は大きいかもしれない。北九州空港活性化のためには、「福岡空港と北九州空港のコンビネーションによる九州発輸送モードの発展に向けて、現在の仕組みをどう変革させていくかが重要になる。弊社としてもお客さま本位で積極的にチャレンジし、行政など関係各機関と協力していきたい」(同)と期待を寄せる。

 とはいえ、グローバルキャリアとしては、“浪花節”だけでビジネス展開するわけにはいかない。ライバルに打ち勝つための冷徹な戦略が不可欠だ。

 「九州地域は、国内貨物、国際貨物ともにポテンシャルが高いエリアだと考えている。我々は北九州、福岡を大きな拠点として、各地域の航空輸送需要にしっかりとお応えし、九州全体の貨物物流を盛り上げていきたい」(小野寺支店長)。

 この成否は、北九州空港が九州の航空貨物の物流拠点として、独り立ちできるかどうかにかかっている。

(了)
【大石 恭正】

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