新鮮な糸島の幸を総合プロデュース
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(株)やますえ
メーカーへの飛躍
(株)やますえは、豊かな自然が生み出す“糸島の幸”を、豊富な経験とアイデアを生かして商品化している食品メーカーだ。その商品は、本社併設の直売店で販売されているほか、福岡市内のホテルやレストランをはじめ、東京都内のレストランでも味わうことができる。主力商品は、ハネ木搾りで搾った白糸酒造の清酒「芳醇」と、カノオ醤油の本醸造醤油「すみれ」を用いて、鮮度の良い魚卵だけを辛子だれでじっくりと漬け込んだ明太子。直売店だけでも、年間約100万個の商品が売れていくというから驚きである。同社の馬場孝志代表は、「弊社の従業員はほとんどが糸島市在住。正真正銘の“オール糸島産”ですよ」と笑顔をのぞかせる。
今でこそ、糸島を代表する食品メーカーとして相応の知名度と実績を誇る同社だが、創業当時は本社を福岡市博多区に置き、主に魚卵を取り扱う海産物卸問屋として事業を展開。今ほど活動領域は広くなかったという。転機となったのは、同社の創業者である山口末太郎氏から馬場代表への事業承継だった。
「“業態を変えさせていただきたい”―これが事業承継にあたって、私から1つだけお願いしたことです。私には、これまでに培ってきた明太子を始めとする魚介類の加工に関するノウハウを、愛する地元・糸島でさらに発展させたいという想いがありました」(馬場代表)。
現在の同社の所在地は、糸島市多久の国道202号バイパス側にあり、交通アクセスは抜群。獲れたての糸島の幸を、新鮮な状態で生産者から受け取り、商品化した後もいち早く顧客のもとへと届けることができる。この立地の良さもあって、この地に同社の工場および本社の新設・移転を決断したのだが、地元からの理解を得るのは決して容易ではなかったという。だが、同社および馬場代表の“糸島に対する想い”が本物だったからこそ、地元の人々もそれに応え、晴れて“糸島の明太子メーカー・やますえ”が誕生したのだ。
生産者の想いも届ける
糸島に拠点を構えた同社は、人員と車両を新たに確保。物流機能を拡充することで、自社商品だけでなく、広く“糸島の幸”を配送していくためだ。
「糸島ブランドが認知され、話題になったことで、福岡のみならず、東京都内でも需要が高まっています。早朝に糸島の食材を積んで出発し、東京のレストランのランチに間に合うようにお届けするワンデイ配送も実施しています」(馬場代表)。
この取り組みによって、独自に販売網をもたない糸島の生産者たちも、丹精込めて育てた農畜産物や、危険と隣り合わせのなかで水揚げした魚介類を、求めている人たちへと、同社を通じて届けることができるようになった。
「弊社は明太子を主力商品とする食品メーカーですが、常に“糸島の総合商社”でありたいと考えています。糸島ブランドはたしかに市場に根づきつつありますが、まだまだその市場価値は適正とはいえず、生産者の方々は文字通り身を削っておられます。値段を見て『お得だから買おう』ではなく、産地を確認して『糸島産だから買おう』と思ってもらえるように、どのようなこだわりや過程を経て皆さまのもとに届くのか――今後はそうした情報の提供も同時に行っていく必要があります」(馬場代表)。
これからも糸島とともに
生産者が収穫物を販売する際の選択肢が増えたという点以外にも、同社はすでに多くの効果を糸島にもたらしている。同社が糸島で活動を始めたことで、地元に雇用が創出。また、同社で働きたいという人材が糸島に移住してくることで、市の活性化にも寄与する。馬場代表にとっては地元・糸島への恩返しにもつながり、企業と地域との理想的な共存共栄の関係が築かれている。
「とはいえ、弊社が何をしている会社か、まだ知らない方もいます。そういう方に、まずは弊社のことを知ってもらおうと始めたのが、糸島のおいしいものが一堂に会する伊都国フードフェスティバル『食taku市』です。協賛企業さまのおかげもあり、毎回盛り上がりを見せています。生産者とお客さまが直接交流できる市場の整備も現在計画中です。これからも社員一丸となって、糸島産の価値をさらに高めてまいります。そして、『糸島はおいしい』と感じてくれた方から、今度は『糸島へ行ってみたい』という気持ちを引き出し、糸島に多くの人が足を運ぶような好循環をつくり出していきたいと思います」(馬場代表)。
糸島の食品メーカーであり、“糸島の幸”を全国へ届ける総合商社でもあるやますえ。同社はさらに、糸島のまちづくりを担う“総合プロデューサー”としての役割も担おうとしている。その根底にあるのは、これまでも、そしてこれからも、地元・糸島に対する深い愛情である。
【代 源太朗】
<Company Information>
代 表:馬場 孝志
所在地:福岡県糸島市多久523-1
設 立:1996年9月
資本金:1,500万円
U R L:https://www.yamasue.ne.jp月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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