土木技術者が語る日本の防災のあるべき姿(後)
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2019年11月11日 13:30

土木技術者が語る日本の防災のあるべき姿(後)

(株)共同技術コンサルタント 福岡支店長 松永  昭吾  氏

危険な臨海部になぜ人が集まったのか

 東日本大震災では2万人弱が死亡、あるいは行方不明となった。東北地方の臨海部は、歴史的に何度も津波が押し寄せた場所で、1896年の明治三陸地震でも2万人以上が亡くなったといわれている。なぜ、過去に大きな被害のあった危険な場所に、再び人が集まり、住み続けるのか。そこには、欧米型の「近代工業化の推進と経済合理性の追求」が背景にあったと考えている。ここに大きな反省材料、教訓がある。

東日本大震災を生きながらえた「奇跡の一本松」(松永氏提供)

 “たられば”になるが、会津若松や盛岡などの内陸部に人を集め、臨海部には海を良く知る漁業関係者だけが住んでいれば、これだけの被害は出なかった。実際、明治三陸地震後、「津波が来るので、ここに住んではダメだ」という石碑が各地に立てられた。どんなに大きな地震が起きても、そこに人が住んでいなければ、自然災害にはならない。ただの自然現象だったはずだ。
 にもかかわらず、なぜ“賢い日本人”が危険な臨海部に集まり住んだのか。とくに明治期以降、合理的な経済成長のため、全国各地で、会社や工場が立地しやすく、農業を営みやすい場所に人を集めた。つまり、もともと人が住みにくかった湿地や沼地があった場所に、人を集めていることになる。言い換えれば、「自然災害のリスクがある危険な場所に、わざわざ人を集めた」ともいえる。

 経済合理性でいけば、まず港での海上輸送が便利だったからこそ、近代化の象徴である製鉄所が明治維新前に臨海部の釜石につくられた。会社や工場が立地するようになり、港までモノなどを運ぶ鉄道や道路ができると、不便な山から人々が集まるようになった。とくに戦後から高度経済成長期にかけては、ドンドン人が増えていった。これは三陸の沿岸部だけの現象ではなく、太平洋ベルト地帯に位置するさまざまなまちで、同じような急激な人口集中があった。たとえば、再び南海地震が起きた場合、愛知や静岡などでは、前回よりも多くの死者が出るリスクがある。

東京一極集中ではなく全国分散が望ましい

 災害で人が死ぬリスクを減らすことを考えれば、日本全国の津々浦々、できるだけ人が分散して住むほうが望ましいと考えている。行政的には当然、非効率にはなるが、それは現状の行政サービスを維持する前提だからだ。「公助」頼みは、いずれ破綻するのが目に見えている。「自助」「共助」を強化すべきだ。

 全国各地で起こる災害の復旧復興を、すべて国費で賄い続けることはできない。災害復旧にかかる費用は、すでに膨大な金額になっている。たとえば、首都直下型地震が起きた場合、95兆円という巨大な経済被害額が想定されている。東京都内への一極集中ではなく、ほかの場所にヒト、モノなどを移転していれば、その分復旧復興の費用を低減できる。これは、数十年間にわたって災害を生業としてきた、1人の土木技術者としての見方、意見だ。

自然災害は数百年スパンで考えるべき

 土木技術者は、想定を超えるものがあったとしても、致命的なことにはならないよう、想像力を働かせて計画を立てなければならない。なぜなら、日本は災害大国だからだ。他国に比べ、災害がインフラの機能を止めるケースが非常に多い。災害を経験した土木技術者は、経験を基に想像を働かせながら、50年後、100年後でも役に立てるインフラをつくっていかなければならない。すべては、子どもや孫たちの世代のためだ。

 そのためには、「今までこうだったから」ではなく、「今まではこうだったけど」と、いったん立ち止まったところから、想像する必要がある。これまでは、我が国が近代構造物を整備し、100年程度の短い経験を踏まえながら、将来のためのインフラをつくり続けてきた。地震などの自然災害に対しては、タイムスパンが短すぎるのではないだろうか。数百年のタイムスパンが望ましい。数百年のタイムスパンに照らして、現行の国の指針や基準が合わないのであれば、速やかに変えていくべきだ。そういう知恵を政府などに提供するのも、我々土木技術者の仕事だ。むしろ、土木技術者、研究者にしかできない。そう信じている。

(了)

【大石 恭正】

<プロフィール>
松永  昭吾(まつなが・しょうご)

1970年、長崎県佐世保市生まれ。(株)共同技術コンサルタント福岡支店長。噂の土木応援チームデミーとマツ共同代表。(一社)リペア会理事副会長、(一社)ツタワルドボク理事副会長。博士(工学)九州大学、技術士(総合技術監理、鋼構造およびコンクリート、道路)、上級土木技術者[橋梁]、VEスペシャリスト、道路橋点検士、防災士。

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