2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

民法改正で変わる 賃貸契約の保証人

岡本綜合法律事務所 代表 岡本 成史 氏

 およそ120年ぶりの大改正となる民法の債権関係に関する規定が、2020年4月1日から施行されます。改正点はおよそ200項目にもわたりますが、今回は賃貸借契約についてご説明いたします。

 賃貸借契約に関する改正点の多くは、これまで判例によって定められてきたルールを法律の条文に明記するものですので、これまでのルールが大きく変更されるというわけではありません。民法改正によるポイントは次の3点であり、とくに3点目は大きな影響がありますので、この点について解説いたします。

1.賃貸借継続中のルール
 賃借物の修繕に関する要件の見直し
2.賃貸借終了時のルール
 賃借人の原状回復・収去義務などおよび敷金に関するルールの明確化
3.賃貸借契約の保証人の保護に
 関するルールの義務化

 今回の改正では、賃貸借契約の保証人が個人である場合、保証人の責任限度額(保証の上限額)である「極度額」を定めなければ、保証契約は無効となることになりました。この極度額は、「○○円」「賃貸借契約締結時の賃料の○カ月分相当額」などと明確に定め、書面に記載しておかなければなりません。たとえば、契約書で極度額を100万円と定めた場合、借主が家賃を遅納して、滞納額が120万円にまで達したとしても、保証人に対しては、極度額100万円までしか請求できないということになります。

 ある程度の極度額を定めておかないと、滞納額と原状回復費用などを回収できないことになりますが、他方で極度額を高額に設定してしまうと、これまでは比較的気楽に保証人になっていた親戚や知人などが、保証人になるのを避けるということにもなりかねません。そのため、個人の保証人の確保が難しくなってくる可能性もあり、今後は、法人による保証や保証会社による保証を求めることが増えてくることも想定されます。

 なお、現状では極度額の相場というものはありませんが、国土交通省が「極度額に関する参考資料」として、「家賃滞納発生に係る調査」「裁判所の判決における連帯保証人の負担額に係る調査」の結果を公表していますので、このデータなども参考に検討していくことになるかと思われます。

 また、個人が保証人になる根保証契約については、借主や保証人が死亡したときなどには、保証債務の元本が確定し、その後に発生する債務は保証の対象外となりますので、この点でも注意が必要です。

 また、事業者が事務所や事業用店舗を借りる場合で、個人の保証人を付ける場合には、借主から保証人に対し、「財産や収支状況」「主たる債務以外の債務の有無や内容」などの財務状況の情報提供が必要になりますので、この点でも、やはり個人の保証人の確保が難しくなることが予想されます。また、保証人に対してこの情報提供がなく、貸主がその事実を知っていた、または知り得ることができた場合、保証人は保証契約を取り消すことができることになっています。この点で、後日、保証契約の取り消しを主張されない対策が必要になってきます。

 改正については、原則として、施行日より前に締結された契約については改正前の民法(現行法)が適用され、施行日後に締結された契約や施行日後に合意更新された契約については、改正後の新しい民法が適用されます。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士

1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士/岡本綜合法律事務所 代表

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