2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

北九州市が官民連携で取り組む海外水ビジネスに商機はあるか

(株)北九州ウォーターサービス 代表取締役社長 有田 仁志 氏

市の外郭団体として、北九州市などの上下水道サービスのほか、官民連携で取り組む海外水ビジネスも手がける(株)北九州ウォーターサービス(以下、KWS)。海外水ビジネスをめぐっては、経済産業省の旗振りのもと、10年ほど前に東京都や横浜市なども積極的な動きを見せていたが、その後トーンダウン。いまだに継続しているのは、北九州市ぐらいのものだ。海外水ビジネスに対しては、SDGs(持続可能な開発目標)を市政運営の中心に掲げる北橋健治市長も大きな期待を寄せる。今年6月末、北九州市が54%出資するKWSのトップに、前北九州市上下水道局長・有田仁志氏が就いた。北九州市海外水ビジネス推進協議会(以下、KOWBA)の副会長も務める有田氏に、話を聞いた。

官民を結ぶ接点

 ――KWS社長就任の抱負をお願いします。

代表取締役社長 有田 仁志 氏

 有田 北九州市役所で過ごした40年のうち、26年間水道の仕事に携わってきました。良くいえば「水道のプロ」ですが、悪くいえば「水道にどっぷり浸かったお役人」です(笑)。海外水事業については、2010年から関わってきました。海外ビジネスは、先が読みにくいところがありますが、KWS社長として、これまでの経験を役立てていきたいという思いでいます。

 KWSは、KOWBAの事務局を任されていますが、官民を結ぶ接点として、極めて重要な役割だと考えています。1つのビジネス案件を成立させるためには、土木や設備など多くのプレイヤー、そして技術を必要とします。これらをコーディネートするのが我々の仕事であり、プロジェクトの方向性をしっかり定めることです。

 そこで重要になるのが情報です。海外でのビジネスは大きなリスクをともないます。リスクマネジメントのためには、場合によっては、相手国の情報などを取り、それらをステークホルダーに提供しながら、しっかりアレンジしていかなければなりません。この部分には、引き続き力を注いでいきたいと考えています。

 ――KOWBAの今後の運営に関する抱負は?

 有田 KOWBAは市内外150社の企業会員により成り立っている組織です。すべての会員の思いに応えるのが、KOWBAの活動の大きな柱だと思っています。会員にはライバル同士の会社もいますが、KOWBAとしては特定の会員を応援するというわけにはいきません。双方のカンフル剤として、あくまで中立、公平であるべきだと考えています。会員企業同士、しっかり競争はしていただく。そのうえで、プロジェクト全体の方向性を見極めるのが、KOWBAの役割だと捉えています。

 KOWBAは、北九州市における官民連携による海外水ビジネスを推進していく組織なので、地元企業なしには成立しません。どんなプロジェクトであれ、市内の民間企業にとってメリットのあるかたちで、引き続きコーディネートしていく考えです。

相手国政府とのパイプが強み

 ――日本の民間企業に、水道運営のノウハウをマスターさせるという狙いもあるんですよね。

今年7月、KOWBA総会で挨拶に立つ北橋市長

 有田 昨年12月に水道法が改正されました。改正のポイントは、地方自治体に水道事業の運営権をもたせたまま、民間企業にも運営できるようにしたことです。これからは、技術やノウハウをもった地方自治体から、民間企業が運営を学んでいく流れになります。同じことが海外についてもいえます。ノウハウをもつ北九州市とKWSが民間企業と連携して海外に出て、水道事業のO&Mノウハウを民間企業に蓄積するという構図があるわけです。ノウハウをもった国内企業が生まれれば、現地の技術者に対して、技術やノウハウを教えるという流れも出てくるでしょう。公と民の間にあるKWSは、こういう時代の流れに合致した存在だと考えています。

 ――国内の一自治体が10年以上にわたって海外で水ビジネスを手がけているのは、稀有なことだと思われます。

 有田 それだけ、相手国政府との信頼関係が深いということだと思います。カンボジア国の例でいえば、北九州市は11年から主要都市の水道マスタープランづくりを皮切りに、国際協力だけでなく、ビジネスとしても協力を続けています。なぜ北九州市がやっているかというと、20年にわたって築いた信頼関係があるからです。相手国のニーズがわかっているので、ビジネスとして具体的に何をすればいいかも見えてくるわけです。信頼関係がないまま海外ビジネスをやろうとしても、まず無理でしょうね。やったとしても、かなりのリスクをともなうと思います。ビジネスになるかならないかは、国際協力が終わる段階になって、初めて見えてくるところがあります。二段構えですよね。

業務拡大図り新卒採用開始

 ――KWSでは、北九州市近隣の自治体の水道業務の受託も行っていますね。

 有田 16年度から、北九州市が受託した宗像地区事務組合の水道事業包括業務委託の実務を行っています。また、近隣自治体の排水設備工事審査補助業務なども受託しています。上下水道局では3年前から16の近隣自治体を中心に、広域連携に関する勉強会やセミナーを行っており、排水設備の審査業務受託はこの勉強会がきっかけでした。

 自治体から、「ウチには水道管路などの詳細な図面がない。ベテランの職員が頭で覚えているので、何とかやってこれた。ところが、このベテラン職員が退職することになった。どうしたらいいだろう」という相談を受けました。役人というものは、自分たちの恥になるような話はしたがらないところがあって、最初は「困っている」という話は出なかったのですが、勉強会を重ねていくと、「人が足りないので、手伝ってほしい」という声がたくさん出てくるようになりました。

 KWSには現在、約250名の職員がいますが、平均年齢は58.9歳と高い。今後の業務量増加を見据え、来年度から新卒社員の採用を新たに始めます。これまでは退職者を中心に社員を採用していましたが、やはり若い人を採用して、ベテランから学びながら、経験や技術を積み上げてもらうことによって、会社の本当の力になると思います。最近は就職が売り手市場の状況のなか、はたして来てもらえるか不安はありますが、技術系職員8名を採用予定です。

 KWSの仕事のうち、97%が北九州市からの受注です。今後は近隣自治体からの仕事を増やしていきたいと考えています。水道マスタープランの策定から浄水場や下水処理場の運転管理まで、幅広く請け負っていきたいと思っています。

SDGsにもコミット

 ――KWSとして、SDGsにコミットしていくお考えは?

 有田 KWSは、北九州市SDGsクラブに加盟しています。東南アジア諸国では、上下水道、ゴミといった環境インフラ整備が遅れています。KWSは、微力ながら、水の世界でいろいろな協力をやっています。水関係でいうと、下水道が一番遅れています。下水道が遅れている理由にはいろいろありますが、その1つに料金徴収が難しいことがあります。水道は水の供給を止めることができますが、下水道は来た水を拒むことができないからです。そもそも「なぜ下水道が必要なのか」というところから啓発していかなければならないのが現状です。KWSとしては今後、下水道整備についても協力していくなかで、SDGsの目標達成に貢献していきたいと思っています。

【大石 恭正】

<COMPANY INFORMATION>
(株)北九州ウォーターサービス
所在地:北九州市小倉北区浅野3-8-1
設 立:2015年12月
資本金:1億円
URL:http://www.kitakyuws.co.jp

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