2024年03月19日( 火 )

インド市場は本当に魅力的な市場なのか?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 各国はインド市場で、どのように動いているのだろうか。日本は1980年代からインド市場に関心を寄せて動いていた。進出した企業数はすでに5,000社を超えており、2000年以降の累積投資額も300億ドルくらいになっている。インドは日本のODAの最大供与国であり、日本・インド包括的経済連結協定の締結、日本企業専用公団の造成など、ますます経済協力を拡大させている。

 一方、中国は電気・電化製品を中心に、インド市場でのシェアを伸長させ、2017年には16%のシェアを占めるようになった。その他に、グジャラート地域に中国企業の専用公団を造成することなども推進している。さらに、製造業以外では、テンセント、アリババなどの系列ベンチャーキャピタルが昨年だけでも、インドのスタートアップ企業に56億ドルを投資している。

 韓国企業のインド進出はどうだろう。インドは韓国の投資対象国のなかで、15位となっている。2017年には5億1,400万ドルを投資しているが、日本の投資額47億ドルと比較すると、9%に過ぎない金額である。インドに進出した韓国の企業数も、500社くらいに過ぎない。

 昨年のインド―韓国の貿易額も215億ドルしかなく、両国首脳は2030年までに貿易額を500億ドルまで増やすことで合意している。

 韓国は遠いインドより、ベトナムに力をいれている。しかし、サムスンはグローバルの製造拠点をベトナムとインドに集約しようとしているので今後、韓国企業のインド進出が加速するだろう。

 インド市場への進出についての課題として、まず、インフラの未整備が挙げられる。そのなかでも、とりわけ電力部門の遅れが課題である。電力不足による頻繁な停電は、稼働コストのアップにつながり、進出企業を悩ませている。

 2つ目に、インドには独立性の強い29の州と7つの連邦直轄領から成り立っており、地域によって、税制、言語、文化などが異なる点が挙げられる。インドには英語やヒンディー語を含めて公用語、準公用語が20個以上存在している。それに、宗教の違いもある。

 ヒンドゥー教徒はインドのなかで10億4,000万人、イスラム教徒は約1億8,000万人、シーク教徒は2,400万人、キリスト教徒は約3,000万人という構成になっている。さらに、ヒンドゥー教にはいまだにカースト制度という身分制度が残っており、どの階級と組むかによって、ビジネスの結果が違ってくる。それに、州ごとに税率が異なっていて、複雑である。それをインド政府は全国統一の「物品・サービス税(GST)」で統一している。

 インド市場は流通構造が複雑で、メーカーからエンドユーザーに辿り着くまでに、代理店、販売代理業者、仕入れ業者、卸売業者、仲介業者、小売業者など、多くの中間業者が存在している。また、隣国のパキスタンやスリランカなどに比べて、物流コストも高いようだ。

 安い労働力だけを当てにするような産業は、インドには合わないということになる。中国の次の製造拠点および有望な消費市場として有望視されるインドではあるが、進出する際に、綿密な準備が必要であることはいうまでもない。

 インドを拠点にアフリカを狙う企業もあるようだ。今後、ますますインド市場に注目が集まることは間違いない。

(了)

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