「様子見多く、高止まり」も 宗像が上がったことで下落局面へ(前)
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(株)第一鑑定リサーチ
代表取締役 吉田 稔 氏“特別の事態”なくば間もなく下げに
――福岡市でも、とくに博多区や中央区では地価が高止まりしていますが、現在の市況についてはどのように感じておられますか。
吉田 不動産価格は、高止まりの状態にあります。それが明らかな下げに転じる時期は正確にはわかりませんが、オリンピック終了や首相交代によって、その時期が訪れる可能性は高いでしょう。マンションデベロッパーにとっては、仕入れが非常に難しい時期です。不動産価格が上がるにつれ、「今がピーク」という認識で、早晩バブルが弾けるかもしれないというところにまできていることはたしかですし、とくにそうした動向に敏感な方は、早々に様子見の姿勢に入っています。
過去の例を振り返れば、福岡では40社ほどあった地場デベロッパーの大半は倒産の憂き目を見ていますから、一刻も早く先を見据えた行動を取ろうというのは自然な心理です。また、銀行もこれだけ地価が高騰すれば、融資は慎重にならざるを得ません。
――一例ですが、天神のある物件は、リーマン・ショックで一気に値下がりし、2014年頃から上昇に転じました。11年から3年間ほど動きがない空白時期がありましたが、これはなぜだったのでしょうか。また、今後の不動産市場をどのように見ていますか。
吉田 一般論ですが、11年3月の東日本大震災がなければ上昇しようとしていたものが、その影響により、見合わせ状態になっていたのだと思います。株価も低迷を続け、予算も削る施策が多かったので、そこで空白の時間が生まれてしまったわけです。
日銀は先日、さらに金融緩和をする余地があるとアナウンスしていました。譲渡所得税の減税などがあれば別ですが、さすがに間もなく下落局面に入るとは思います。それに忘れてはならないのが、日本を取り巻く外的な要因です。リーマン・ショックのような、世界を一気に襲う危機すら起こらないとはいえません。
また、不動産価格の変動には、何といっても政府の施策が大きな影響をおよぼします。日銀のマイナス金利政策導入など、到底予測できないことが日本の中心では起こります。それに、税制や税率の変更が拍車をかけます。だから私たち不動産鑑定に携わる者としては、「そうした予測し得ない特別の事態がなければ、将来の不動産価値はこうなります」とお話しすることで納得していただいています。
福岡では昔から、「宗像が上がれば、早晩地価上昇は止まる」と言われています。宗像市は福岡都市圏の一番端になりますし、福岡市と北九州市のちょうど真ん中です。地価上昇はまずは福岡市の中心部から始まり、それがドミノ倒しのように放射線状に周辺エリアへと拡がっていくわけですが、最終地点の宗像の地まで地価上昇がおよぶようになれば、それはもう打ち止めになるということです。
宗像市の平均地価はずっとマイナスだったものが、住宅地および商業地ともに地価公示では18年に、地価調査では住宅地が19年に、商業地は17年にプラスに転じました。福岡市内に比べれば割安感があり、売れているようですが、いつまでこの状態が続くのか見守っているところです。
【聞き手:鹿島 譲二/文:天野 ゆうじ】
<プロフィール>
吉田 稔 (よしだ・みのる)
長崎県島原市出身。1981年3月、慶應義塾大学経済学部卒業。父親が定年後に不動産業を営んだことから86年2月、不動産鑑定士登録。95年3月、(株)第一鑑定リサーチを設立。母の言葉「真っすぐに生きなさい」を自らの指針とする。<Company Information>
代 表:吉田 稔
所在地:福岡市中央区大名2-2-50 大名DTビル6F
設 立:1995年3月
資本金:1,000万円
URL:http://www.daiichikantei.co.jp関連記事
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