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2019年12月07日 07:00

【事業継承の教訓】ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ裁判から何を学ぶのか(中)

3:事業継承の成功例が急増

(1)建設会社は腹を括って不動産業に転じられる

 吉川工務店(福岡市)のオーナーが西部ガスに会社を売却する決断をした(巷の評価では12億円内外)。絶好調の建設会社の環境も永遠に続かない。いずれ企業存続をするかどうかの瀬戸際に立たされる時期がやってくる。「さぁ、どう選択するか!」過去とは状況が違う。この5年の我が世の春の満喫は、とてつもない内部留保をもたらした。

 だから「うちの息子に譲ったら会社の存続は可能か」とか「息子に苦労をかけたくない」などと案ずることはない。建設業の看板を下ろすことを決断すれば良い話である。要は家賃収入業=家主の選択をすることだ。そうすれば現経営者の代から孫までの3代までは飯が食えるだろう。技術スタッフが揃っている企業規模であれば、吉川工務店のように企業売却という選択肢もある。

(2)マンション業界も事業継承が容易になった

 マンション業界は自転車操業が宿命づけられている。次の商品=土地を仕込めなくなったら「アウト」である。だからこそ創業者の後を継いだ2代目の成功例が少なかったのだ。そこにようやく登場したのが新栄住宅(福岡市中央区)である。マンション用地の連続仕込みをしなくても企業運営ができる蓄えをもった。2代目社長は手堅く経営をしている。

 故人・學氏も業界の事業継承の困難さを知っているがゆえにタイミングを逸したのだろう(難病にかかったことが致命的だったが――)。

 ところが新栄住宅に続く同業者が現れ出した。まず「えん」(福岡市中央区)だ。同社は管理物件1万戸に王手をかけた。ここまで規模を拡大すれば、ストックビジネスで経営が成立する。新規の土地仕込みの宿命から解放されれば、次期後継者の経営の苦労が軽減し、多角的な展開も容易になる。新栄住宅に続くのは「『えん』なり」となるが、業態は「えん」が上回るようになった。

 その後を追うのが「西武ハウス」(福岡市中央区)である。豊福社長も土地仕込みの後手、後手に悩んだ経験が3回はあった。「もう終わりか」と覚悟を決めたこともあったという。そこから得た結論は「いかにストックビジネスで企業を存続させるか」だ。現在、香椎浜で580戸の大型マンションを売り出している。

 同業者間では「豊福社長はもう香椎浜みたいな大型物件の販売はしないだろう」と囁かれている。裏を返せば「不動産関連ビジネスで企業維持ができる」と判断しているという意味である。「この状態であれば息子も事業継承できる」という親の子に対する愛情の証なのかもしれない。

(3)意外と踏ん張る後継経営者を見かける

 2、3代目に気迫がなく、遊びほうけて会社を潰した例は過去にたくさんあった。

 たとえばコンクリートの2次製品会社のケース。せっかくコンサルが入って立て直しのメドをつけた(債務超過を一掃した)のに3年で元の木阿弥。3代目は他人さまの助言も聞かずに暴走気味。行き詰まりも時間の問題。コンサルも見放したのである。

 A社の場合は2代目社長が癌で亡くなった。当初の予想よりも3年ほど早い逝去だった。

 相続対策も後手になっており、多角化ビジネスでのトラブルによる民事訴訟も抱えていたが、兄弟(兄:社長、弟:専務)が結束して難局に立ち向かっている。現ビジネスも大きな曲がり角、岐路を迎えているが、着々と布石を打ってきたので、3代目の代をつつがなく過ごしていくだろう。

 B社の場合、創業者とは同じライオンズクラブで親密な付き合いをしていた。飲むと必ず「息子は何を考えているか、さっぱり不明。こんな奴を事業後継者にしたら必ず潰してしまう。娘婿に譲るつもりである」とくだを巻いていた。この創業者の経営能力は卓越したものがあった。強力なビジネスモデルを構築していたのだ。

 しかし、肺気腫により永眠した。娘婿はさすがに社長のポストをいただこうという野心を表明しなかった。当然、創業者が罵倒していた息子が2代目を継いだ。しかし、不安視されていた2代目は経営能力をいかんなく発揮、企業の成長を成し遂げた。B社の例ではないが、我が子の能力をもう少し信頼して良かろう。加えること、やはりB社のように同業に抜きんでた事業スキームを築き、バトンタッチすることが重要である。

(つづく)

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