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2019年12月10日 10:00

世界経済危機の引き金になりそうな世界の負債状況(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 米国経済では信用の低い企業の貸付債権を担保に発行されたCLOのリスクが注目を集めている。2007年の世界金融危機がCDOに端を発しているとしたら、今回はCLOが経済危機の引き金になりかねないと警鐘をならされている。昨年発行されたCLOの総額は1,250億ドルである。CLOの比率は債権全体の2%に過ぎなかったが、現在は78%までに増加している。

 最後に、なぜ世界各国はこのように負債を増加させてしまったのだろうか。世界金融危機の際、各国政府は不景気から切り抜け、銀行や企業は債務を果たさないことがないように、米国に倣って、量的緩和政策を採用した。その結果、米国の政府負債は、10年前の7兆ドルから現在は22兆ドルまで膨れ上がっている。

 中国の非金融負債も、2000年には2兆ドルだったが、2007年には7兆ドルに、それから2018年には40兆ドルにまで急増している。企業負債がこのように増えたのには、それなりの理由がある。企業には負債を増やすことにより、利益が増えるレバレッジ効果というものがある。これは負債を増やして、結果的に利益を増やす経営手法である。ところが、負債を増やすと、利益が増えたり、消費及および投資が増えたりして、経済が活性化する一方、負債の金額が一定範囲を超えると、それを返済する負担も増え、企業には倒産のリスクが増加すると同時に、内需を抑制してしまうという側面がある。

 多額の負債を抱えた状況で、景気まで悪化すると、金融危機が起こりやすくなる。今回の量的緩和政策と低金利政策を振り返ってみると、株式市場に豊富な資金が流れ込み、株価が上がるようになったものの、実物経済の回復には、それほど貢献していないような気がする。現在のように政府も企業も莫大な負債を抱えていると、実施できる金融政策も限られてくるし、少しの経済変動リスクにも、世界経済がパニックに陥る恐れがある。

 経済を活性化させるために、金利を下げ、その結果、流動性が増えてくると、負債が増えるようになるのは、自然な成り行きだが、何かのきっかけで経済政策が変更され、金利が上がったり、経済が縮小したりといった状況になると、負債が大きなリスク要因となり得る。

 現在、世界経済がおかれているのは、金利引き上げのリスクよりも、米中貿易戦争の長期化で、世界経済が長期低迷し、その結果、累積負債で引き起こされるリスクのほうが怖いという状況である。

 世界金融危機以降、各国政府と中央銀行は、自分の任期期間中には債務不履行を起こさないよう、量的緩和政策を実施し、負債問題を解決しようとしたが、問題は解決されるどころか、むしろ深刻になったと指摘する専門家さえいる。世界経済が停滞気味である現在、各国政府は景気浮揚政策で、負債をさらに増やすことも、増やさないこともできない状況であり、かじ取りが難しく、ジレンマだろう。

 今でも危機水準にあると言われている負債問題が今後、世界経済にどのような影響を与えるのか、細心の注意が必要である。とくに、債務不履行などが実際に発生している中国は、世界経済危機の引き金になる可能性が極めて高い。

(了)

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