九州の防災拠点が担う災害車両機械、土木VR開発
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2020年01月10日 07:00

九州の防災拠点が担う災害車両機械、土木VR開発

九州地方整備局 九州技術事務所

災害時には車両出動も

遠隔操縦装置「ロボQS」で稼働するバックホウ
遠隔操縦装置「ロボQS」で稼働するバックホウ

 九州地方整備局九州技術事務所は1966年、主に直営事業の建設機械の整備を行うことを目的に、久留米技術事務所として発足。以来50年以上にわたって、官民連携による建設に関する技術開発(NETIS)や調査、防災、人材育成などを担ってきた。

 また、九州管内に30ほどある出先事務所の道路、河川部門のための技術開発などの後方支援も担当。技術開発では、土木や車両関連技術のほか、川づくりに関するVR(仮想現実)開発なども行う。防災では、災害対策本部車やバックホウの遠隔操縦装置(ロボQS)などの車両機材を保有し、災害発生時には現地に派遣している。

 同事務所の災害車両は、熊本地震や九州北部豪雨を始めとする九州各地の災害現場に駆けつけてきたほか、鳥インフルエンザ対策にも出動した実績がある。最近では、2019年8月に佐賀県内で発生した豪雨災害がある。低地を流れる六角川流域で内水氾濫が発生し、鉄工所工場から油が流出。ポンプ車などの災害車両を派遣した。派遣した車両の内訳は、排水ポンプ車2台、照明車3台、対策本部車1台(九州管内に4台)。このほか、ほかの地方整備局が派遣した62台が同事務所に集結し、現地入り。7月の南九州での梅雨前線による災害時は、バックホウ用遠隔操縦ロボット「ロボQS」などの装置も持ち込んだ。

19年8月の災害復旧に出動したポンプ車(写真提供:九州技術事務所)
19年8月の災害復旧に出動したポンプ車
(写真提供:九州技術事務所)

 ロボQSは、同事務所が(株)フジタ、(株)IHIと共同で開発した装置で、操縦席に取り付けることで、通常のバックホウの遠隔操作ができるもの。装置の装着は約1時間程度で、装置をつけたままオペレーターによる操作もできる。耶馬渓の復旧の際には、降雨時には無人で、雨が止んだら有人に切り替えて作業を行った。ここ数年は、施工業者を対象にした無人化施工訓練を始め、ICT機器の体験実習なども実施している。

 同事務所が保有する車両には、すべてに「国交省」という大きな文字が入る。災害復旧の現場で、国土交通省の車両や重機が活動していることを示すためだ。なお、車両の運転操作は、協力協定を結んだ地元の協力業者が当たる。

水辺空間のVR開発

VRデモ画像(画像提供:九州技術事務所)
VRデモ画像
(画像提供:九州技術事務所)

 同事務所では従前から、災害復旧などの設計施工の時間短縮を目的に、VR技術の開発を実施。19年度からは土木研究所と共同で、ゲームエンジンを搭載した市販ソフトを活用し、「川づくり」(水辺空間の構築)を目的にしたVR技術の開発を本格化させている。水辺空間の3次元測量データを基にしたVR上で、土木構造物の表面の状態を始め、河原や植生などをリアルに再現。VR体験できるようにするとともに、そのまま3次元CADデータ化して、施工までデータをつなげるのが狙い。ICT土工の拡大にもつなげられる可能性もある。

 住民説明のためのツールなどとしても活用したい考えがある。河川の護岸を整備する場合、図面や模型などを使って整備後の状況を住民に説明するのが一般的だが、完成後のイメージが正確に伝わらないケースも。VR化でよりわかりやすく確認することができることで、早期の合意形成が期待される。

 今回の開発では、市販の建築向けの3Dビジュアライゼーションソフトを使っているが、土木構造物や国内の植生などのデータがなく、仕上がりのディテールに若干の違和感がある。土木用も出始めているが、完成度が低いのが現状だ。今後、実証実験を行ったうえで、3年以内をメドに、VRによる川づくりシステムを完成させる見通しとなっている。

VR普及のカギ

 国土交通省では従前から「河川CIM」を進めているが、3Dデータの統一的な基準がないなど、改良の余地もある。土木研究所では、今回のVR共同開発を通して、河川VRの雛形をつくり上げ、CIMをより扱いやすいものにしたい思いがある。

 VR開発を担当する同事務所の植西清・技術情報管理官は「川づくりのVR化によって、我々の仕事に役立つだけでなく、住民への説明がうまくいくことも必要だ。土木の世界の人間にとっては、VRはまだまだ遠い世界だが、実際に技術ができ上がって、そのメリットに気づく人が増えれば、コストも下がり、どんどん普及していくはずだ。扱いやすさと低コスト。これがVR普及のカギになる。私も早く使ってみたい」と、VR化への期待をのぞかせる。

【大石 恭正】

多彩な災害関連車両を配備

 災害現場における本部基地となる「対策本部車」(九州管内に4台)は、会議室機能などを備えたコンテナを積んだトラック型の車両。ヘリコプターなどで撮影した現地映像をリアルタイムで確認しながら対策を打つことができ、現地での情報収集や応急対策の指揮、会議も可能で、発電機や厨房、トイレなどを備える。マイクロバスを改造し、4人分の仮眠ベッドを備えた「待機支援車」(同5台)もある。

 現地にいながら、本局やヘリなどと通信するための「衛星通信車」も保有。広域かつ高速なデータ通信が可能で、映像情報をリアルタイムで送受信できる。現地調査や情報収集には、高感度ビデオカメラなどを搭載した「情報収集車」(同4台)が当たる。トヨタのメガクルーザーをベースとし、47度の斜面などの悪路も走破できる。

 毎分60m3の排水能力をもつ「排水ポンプ車」や、最長20mの伸縮ブーム(棒状の構造物)に2kWの照明灯6灯を備える照明車(同24台)もある。照明車は600m先でも新聞を読めるほどの明るさを提供し、24時間作業には欠かせない車両だ。ヘリコプターで空輸でき、道路寸断で重機が入れない場所や山間部などで活躍する「分解組立型バックホウ」もある。熊本地震の際には、分解後ヘリで被災した山頂部まで運び、現地で組み立て、作業を行った。そのほか、1時間に180袋をつくれる「土のう製造機」や、最大延長40mの「応急組立橋」も保有している。

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