2024年04月28日( 日 )

元会長(ゴーン)の国外逃亡~生き残れるか日産グループ(2)

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 【表1】を見ていただきたい。「栄(光)」から国外に逃亡し、一転して容疑者から被告に転落したゴーン氏の「影」へ転落した軌跡である。

https://www.data-max.co.jp/files/article/20200206-ghosn-kiseki-01.jpg
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~この表から見えるもの~

<職歴について>

・2018年11月19日午後3時過ぎ、ゴーン会長兼CEOは金融商品取引法違反で、東京地検特捜部に逮捕された。
・2018年11月22日、日産自動車は臨時取締役会を開催し、ゴーン氏の容疑者の会長職を解任し、代表権を外すことを全会一致で決定。
・2018年11月26日、三菱自動車も臨時取締役会を開催し、日産自動車と同様の処分を決定。会長は次の株主総会までの間、暫定的に益子修最高経営責任者(CEO)が兼務することを決めた。
・2019年1月23日、ルノーの会長を辞職。
・日産自動車は19年4月8日、臨時株主総会を開催し、ゴーン前会長とグレッグ・ケリー前代表取締役も解任し、アライアンスを組む仏ルノーのジャンドミニク・スナール会長を新たに選任。
・2019年6月21日、三菱自動車は定時株主総会を開催し、ゴーン前会長の取締役を解任。これにより、3社との関係は完全に断ち切られることになった。

<個人履歴について>

・2018年11月19日に東京地検特捜部はゴーン会長、グレッグ・ケリー代表取締役の2人を金融商品取引法違反で逮捕。
・2018年12月10日、東京地検はゴーン会長、ケリー代表取締役を金融商品取引法違反で起訴した。
・2019年1月11日、東京地検はゴーン被告だけを特別背任罪で追起訴。
・2019年3月6日、ゴーン被告は保釈保証金10億円を納付して東京拘置所(葛飾区)から保釈された。拘留期間は108日間(19年11月19日~20年3月6日)だった。
・2019年4月4日、東京地検は保釈すれば証拠隠滅の恐れがあるとして、ゴーン被告を特別背任の疑いで再逮捕。
・2019年4月22日、東京地検は会社法違反(特別背任)罪で追起訴。起訴が4回におよんでいるのは、ゴーン被告を内部告発した証人から詳細な情報を得ていたと推測される。
・2019年4月25日、東京地裁はゴーン被告の再保釈を決定。保釈保証金は5億円で、即日納付された。3月の保釈時に納付した10億円と合わせて総額は15億円だが、ゴーン被告の年収以下だったことが、後に国外逃亡する一因と見られている。
・2019年12月29日午後11時10分、ゴーン容疑者は関西空港から民間警備会社に関係する元米陸軍特殊部隊員ら米国人2人が同乗するプライベートジェットの音響機器用ケースに身を隠して国外へ。
・2019年12月31日、トルコのイスタンブールを経由して目的地のレバノンに国外逃亡。

<まとめ>

 ゴーン被告の弁護を担当したのは、弁護士法人「法律事務所ヒロナカ」代表の弘中惇一郎弁護士。弘中弁護士は「無罪請負人」の異名をもち、ロス疑惑銃撃事件の三浦和義氏(故人)や、薬害エイズ事件の安部英・元帝京大副学長の無罪判決を勝ち取ったほか、近年では政治資金規正法違反罪で強制起訴された小沢一郎自由党代表の無罪判決にも関わった敏腕弁護士。

 ゴーン被告の保釈条件は、同被告の住宅入り口にカメラを設置して24時間監視すること。使用できるパソコンは弁護士事務所の1台に限定され、携帯電話も1機に制限された。また、海外への渡航も禁止されるなど厳しい条件が付いたものだった。

 弘中弁護士がゴーン被告の逃亡に関与したのか、あるいはまったく知らされないままだったのかは不明だ。

 ゴーン被告らは、「無罪になる可能性は極めて低い」ことを察知し、「国籍を持ち犯罪人引渡し条約が締結されていないレバノンに逃亡すれば、無罪と同じではないか」と企てたのだろうか。官公庁が正月休みに入った12月29日に的を絞って実行していることからみても、かなり計画的な逃亡劇だったと思われるが、弘中弁護士がこうした計画の「蚊帳の外」だったとすれば、残念ながら依頼人との信頼関係が築けていなかったのかもしれない。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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