2024年03月28日( 木 )

江東区新砂エリア 工場集積地が市街地へ(後)

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 江東区の再開発が熱い。豊洲、有明、青海などのウォーターフロント地区では、東京五輪を控え、五輪施設の建設とともに、レジデンス、オフィス、商業施設の整備が進んでいる。同じく湾岸エリアの「新砂(しんすな)」では、佐川急便の物流施設開発が進められているほか、未利用地も多いことで、商業、住居、医療の複合エリアを目指した再開発計画が進行。注目を集めている。

機能を集約へ、佐川急便・中継センター

佐川急便の既存の中継センターの機能を集約する物流施設が20年8月に竣工
佐川急便の既存の中継センターの機能を集約する物流施設が20年8月に竣工

 SGホールディングス(株)傘下のSGリアルティ(株)と(株)IHIの2社は、IHIの工場跡地の一部とSGリアルティが取得した開発用地を合わせた7万4,000m2で、大型物流施設を共同開発している。倉庫部分と事務所部分とで構成され、1~2階は佐川急便の中継センター、3~4階は外部テナントへの賃貸倉庫として利用する。延床面積17万m2を超え、竣工は20年8月の予定だ。

 新設する物流施設には、佐川急便の中継センターの機能を集約。処理能力の高い搬送機器導入との相乗効果で、庫内作業の自動化・省力化の促進と、幹線輸送ドライバーの待機時間の短縮を狙う。首都高速湾岸線の新木場ICから約3kmに位置し、首都圏や都心部に加えて、地方への配送にも優れる立地条件だ。南砂町駅から徒歩4分の距離で、庫内労働者も確保しやすいと期待する。長距離ドライバー用の仮眠室や、省人化に向けたマテリアルハンドリング機器も導入される予定。また、屋上緑化や壁面緑化を採用することで、周辺環境や景観への配慮、環境負荷の低減も図られている。

 IHI砂町工場跡地の周辺は、これら計画地以外にも開発余地が多く残されている。江東区は、工場跡地北側から中央の約8haを「先進的物流ゾーン」と位置づけ、IoTやAIを活用した最新鋭の物流施設などを建設するイメージを描いている。南側の約6haは、江東区の中小企業やスタートアップ企業などを支援し、イノベーションを促進するカンファレンスやミーティング施設を整備する「産業支援ゾーン」と位置付けた。また、海に面したエリアは、緑や水辺、親水空間を想定した「にぎわい・交流ゾーン」とした。まちづくり連絡会の事務局は区が担当し、地元の自治会、企業、関係機関が参加する予定。

 エリア内では、IHIが塩浜通りと丸八通りを結ぶ道路を新設する計画があり、一体開発も検討している。永代通りと明治通りが交差する日曹橋交差点の混雑緩和に向けて、区としても地域の意見を聴取しつつ、前向きに支援する方針のようだ。

ヤマダ電機の後ろにアシックスジャパン本社ビルも立ち並ぶ
ヤマダ電機の後ろにアシックスジャパン本社ビルも立ち並ぶ

広域の集積地として地域拠点の都市核へ

 さらに江東区は、19年11月に「都市計画マスタープラン基本方針(素案)」を策定し、12月からパブリックコメント(意見募集)を実施。そこでは、「広域性と地域性の両方の機能を併せ持つ拠点である都市核」という考え方を示している。「亀戸」「住吉」「清澄白河」「門前仲町・越中島」「木場」「東陽」「南砂」「豊洲」「有明」の 9 カ所を都市核として位置付け、区内外の人を引き寄せる広域的機能や、生活圏に住む人の生活や活動を支える機能の集積を図る意向だ。そして新砂を含む南砂については、次の2つの方向性を公表した。

・既成市街地と土地利用転換を図る市街地の結節する拠点と位置付け、南砂町駅周辺を中心に商業・業務・物流・居住機能などを誘導する。

・土地利用転換による新たな市街地では、基盤整備とともに水辺と緑を生かした環境の整備を図るとともに、都市機能と物流機能のバランスのとれたまちづくりを進める。

 概ね20年後を見据えたまちづくりの指針を示すもので、新砂地区にとっても、南砂地区が改めて都市核に選定された意味合いは大きい。

 「都市計画マスタープラン基本方針の素案の検討段階ですが、南砂は地域の拠点として最上位の都市核に位置づけています。地域の拠点であるとともに、広域からの人が集積される地域で、未利用の土地もあることから、まちづくりを積極的に進めていきたい」(江東区)という。

 かつては海底だった新砂。それが近代日本の形成とともに、工場や物流の一大拠点へと発展した。隣接する東陽町駅周辺と比べるとやや地味なイメージは拭えないが、南砂町駅の大規模改良工事の進行や、未利用土地の多さ、都市核としての将来性など、ポテンシャルは大きい。地元住民と企業とが一体となって進める、新砂の再開発に期待したい。

(了)
【長井 雄一朗】

(前)

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