2024年04月26日( 金 )

地方観光のハブとなる「道の駅」 積水がマリオットとホテル開発(後)

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積水ハウス(株)

地元との共存図る

積水ハウス本社ビル
積水ハウス本社が入る梅田スカイビル

 「フェアフィールド・バイ・マリオット」は、マリオットホテルのブランドとして統一した、シンプルなインテリアが特徴。その一方で、各ホテルでは地域色も少しずつ出していくという。「地域の日常に溶け込む旅」というビジョンがあるため、ラグジュアリーホテルとは一線を画す。

 基本は1室約25m2、2名利用で1泊1万円~1万5,000円が一般的な価格帯となる。一般的なビジネスホテルより広く、ゆったりとくつろげるつくりにしているという。

 宿泊特化型ホテルのため、今回のホテルの特徴でもある共用部に調理スペースが設けられ、ホテルにはレストランなどの飲食店や土産店は併設せず、食事やお土産は道の駅や周辺の飲食店を案内する。地域でさまざまな場所をめぐってほしいという考えがあるためだ。道の駅を観光のハブとして、飲食店や土産物店、観光スポット、アクティビティ、次の宿泊地などの観光資源を、地元の自治体と協力して積水ハウスがネットワーク化していく考えだ。

 周辺の観光情報の発信が課題となるが、地元の飲食店や観光事業者などと提携し、「Trip Base道の駅プロジェクト」のホームページ上で、おすすめの観光地や飲食店、宿泊施設間の移動方法などを案内する予定だ。

 文化・風習・暮らしに触れる観光スポットめぐりを始め、フィッシングやトレッキング、アウトドアなどを楽しみたい観光客の期待に応えるため、マリオットは地元事業者と連携して、「レンタカー」「カーシェアリング」「自転車のレンタル」など移動サービスの提供を計画しているという。道の駅と連携して、電気自動車(EV車)の充電にも対応できるようにしていく予定だ。

 地方自治体は、「Trip Base道の駅プロジェクト」により、新しいかたちの観光ができ、地方を訪れる人が増え、周辺にも人が流れることを期待している。ただし自治体にとって、地元の宿泊業者との共存は大きな課題だ。そこで、「宿泊」を積水ハウスが担い、「食事」を地元の飲食店が担うことで地元と共存できると考え、「Trip Base道の駅プロジェクト」に投資する自治体もある。

 政府主導の下、急成長するインバウンド市場を都市から地方に広げて、今後どのように「日本の観光」をかたちづくっていくのか――。都市部から外れた地方の道の駅がもつ可能性に着目した「Trip Base道の駅プロジェクト」の今後の動向に注目したい。

(了)
【石井 ゆかり】

「最初に6府県を選んだ理由」

開発事業部 トリップベース事業推進室 室長 栗崎 修一 氏

開発事業部 トリップベース事業推進室 室長 栗崎 修一 氏
栗崎 修一 氏

 ファーストステージとして、6府県(15施設)を選んだ理由は3つあります。1つ目は、各自治体が施設予定地の観光に力を入れていることです。たとえば、京都府の自治体では京都府下の自然の観光をアピールし、神社仏閣などの史跡の多く観光客があふれる京都市内から、京都府全体に観光客がめぐってもらうことを狙っています。有名観光地がある都道府県の自治体は、周辺に波及させることでオーバーツーリズム緩和にも期待しています。

 2つ目は、「Trip Base道の駅プロジェクト」の開業スケジュールに合わせて、土地整備ができることです。さらに、ファーストステージでは、近隣地域内でいくつかのホテルに泊まりながら、車やバイク、自転車などで観光めぐりができる旅行プランを立てています。そのため、1つの都道府県内に2~4カ所のホテル建設候補地があることも欠かせません。運営効率化のため、宿泊施設は最低50室から最高でも100室の規模で、延床面積2,000m2以上を目安に建設を計画しています。

 3つ目は、道の駅自体の集客力と周辺の通行量が多いことです。道の駅は通常、車でアクセスすることが多いですが、運行本数の規模に関わらず公共交通機関でアクセス可能な場所が建設候補地になると弊社では考えています。21年以降にオープンを予定している福岡や鹿児島、22年以降に開業を計画している熊本は、九州新幹線が通っている県で、遠方からアクセスしやすい土地柄も候補地の理由です。建設予定の県にある市町村の自治体からは、誘致の問い合わせが弊社に届いています。

 21年以降のセカンドステージでは、福岡、鹿児島、北海道など6道県で合計約1,000室をオープンする予定です。さらに22年以降のステージでは、熊本、滋賀、石川など12県で合計約1,000室を開業する計画となっています。その後も年間を通じて観光需要が高いエリアを中心に展開し、将来的には約5,000室規模まで想定しています。

(前)

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