2024年05月03日( 金 )

物件ではなく「人」をつなぐアプリ TRGで不動産を流動化

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(株)トリビュート

人物主義のアプリで業界の常識変える

 「千三屋(せんみつや)」と揶揄される不動産業界において、「誰から」情報を得るかは非常に大きな意味をもつ。“誰か”というのは信用できるかどうかであり、信用とは実績だ。不動産売買は、「買いたい」と「売りたい」というニーズが互いに合致することで取引される。既存の不動産売買取引においては、買主、買主の媒介業者、仲介業者、売主、売主の媒介業者が存在する。

 宅建業者とは、この媒介および仲介に該当するが、自ら売買することももちろんある。そして、これらの取引を年間何度も行うことで、収益を確保するのだ。

 しかし、親しい間柄であっても互いのニーズは「わからない」のが現状だ。そのため、何社も媒介することで、売主・買主が不要な手数料を支払うことも少なくない。この非効率を解決するため開発されたのが、プロのための不動産マッチングアプリ「TRG(トラジ)」だ。

 タレント・武田真治氏を起用したテレビCMによって知名度が上がったことで、登録数も増加しているようだ。登録1万人まで無料キャンペーンを続けているが、「質を担保するため、5万アカウントに達したあたりで制限をかけることも検討している」(TRGを運営する(株)トリビュート・田中稔眞社長)という。

 トラジに登録できるのは、宅建業者に限られる。実名、宅建許可番号、顔写真が必須だ。地域や会社名、店舗名でユーザーを検索でき、互いに「パートナー」になれば、1対1、グループ、登録物件ごとにチャット機能を使って情報交換できるようになる。物件情報の登録もでき、まもなく提供される新機能「AI-OCR」でスピーディーに物件情報の生成も可能となる。さらに、来年以降となるが、相互評価の導入など、登録アカウントの信頼性を高めるための強化が行われる予定だという。

 業者間取引において、インターネットと不動産の相性は決して良いとはいえない時代が続いてきた。プレイヤーとして不動産取引を手がけてきた同社だけに、物件ではなく、「人」を中心に据えたTRGによって、非効率の解消や不動産の流動性を高める可能性に期待したい。

【永上 隼人】

■TRGリリースから半年を経て、全国で説明会を行ってきたTRG運営会社であるトリビュートの田辺慶二郎氏に、改めてTRGのターゲットと不動産業界の現状について聞いた。

 ――どのようなユーザーに利用してもらいたいか。

田辺 慶二郎 氏
田辺 慶二郎 氏
 田辺 営業活動に意欲的で、情報交換に対する感度が高い方にご利用いただきたいです。たとえば、飛び込み営業や電話営業で日々アグレッシブに動いている方、毎月交流会に参加しているけどなかなか人脈が広がらない方、有効的な人脈を効率的に築いて数字を伸ばしたい方には最適なアプリです。また、仕入れ・販売の営業部隊を抱えている法人さまにとっても、部隊の営業効率を上げるツールとなるはずです。宅建士は約50万人いるといわれており、うち35万人が不動産会社に就業しているとすると、不動産会社の営業マンは175万人(1事業所5人のうち1人が宅建士とした場合)と推測されます。なかでも売買に従事するのは75万人と見ており、さらにその内15%=10万人がいれば、十分に日本の不動産売買相場を動かせると思っています。

 

 ――業界では、なぜFAXでの物件情報のやりとりが多いか。

 田辺 不動産業界は対面での物件紹介が多く、物件資料も紙でやり取りするケースが依然として多いのが現状です。紙の物件資料から自社のフォーマットで資料を作成し直すと、1物件あたり15~30分もの時間がかかることも珍しくありません。そのため、紙で受け取った資料のうち、会社名の部分を切り取り自社の会社名に貼り替えて、そのままFAXで資料を流すといったことも頻繁に行われています。このように、相手先の資料をそのまま利用して流せるFAXは、業界にとって便利なツールになってしまっているところが理由として挙げられるかと思います。

 

 ――TRGへの反応について世代間ギャップはあるか。

 田辺 あります。業界にはご高齢の方も多いのですが、「スマホのアプリ」「マッチング」というワードに抵抗感を示される方もいらっしゃいます。ここ最近は他産業においても健全なビジネスのマッチングサービスは出てきているものの、そういった情報が入りにくい環境下にいらっしゃる方もいるので、世代間でギャップが出てしまいます。

 

 既存のネットワークで収益が確保できている経営者層のなかにも、ネットワークを広げることに一部消極的な方もいらっしゃるので、アナログな不動産業界ではとくにギャップが出てしまいます。

マッチングのフロー

■パートナー検索画面から、取引したい営業マンを都道府県、市区町村、会社名、店舗名から検索すると、条件に該当する営業担当者の顔写真、氏名、会社名が一覧で表示

■営業マンの顔写真の部分をタップすると、担当者のプロフィール画面に切り替わる

■プロフィール画面に営業マンの得意分野や得意領域が表示され、アプローチ前にビジネスの親和性を確認できる

■つながりたい営業マンの申請ボタンを押すと、相手側に申請通知が届く。一方的な申請ではつながることはできない。申請されると、申請通知が届き、申請者のプロフィールを確認し承認するか否か判断ができる。申請者側は相手先から承認が下りれば、マッチングされる

■マッチング後は、チャットを通じてアポイントの調整や案件の相談、物件資料の送付を行うことができる

■営業マンが物件情報を掲載できる。また、購入希望条件を登録すると、条件に合致する物件・土地が自動的に紹介される

■取引実績や得意領域についても、評価基準実装時にはより具体的に数字が反映される予定

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