地域包括ケアシステムの一端担う連携拠点・北九州総合病院(後)
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社会医療法人北九州病院 北九州総合病院
院長 永田 直幹 氏連携が生み出す地域医療の充実
――地域住民や医療関係者との交流は、どのように図られているのでしょうか。
永田 医師会活動に加えて、地域の皆さんと交流をもつための地域医療連携会の発足、院内で病気について学べる教室やイベントの開催といった取り組みを行っています。また、福祉施設や介護サービス機関とも関わりをもつ「地域医療連携室」では、地域内の医療機関がそれぞれの施設の特色に応じて、機能分担や専門化を進め、連携することで効率的な医療サービスを提供できるようにしています。もちろん、地域の医療関係者の情報共有だけでなく、苦情なども受け付けており、医療サービスの改善に役立てています。
――近年、議論が活発化している自由診療や医療ツーリズムについてはどのようにお考えですか。
永田 北九州病院グループとして、患者さんに対してすでに幅広い選択肢を提示できる状況ですので、現時点では自由診療は積極的にはやっておりません。医療ツーリズムに関しては、お話は多方面からいただいています。治療や検診を受けるために渡航すること自体は悪くないと思いますが、仮に手術した場合、術後の経過も診る必要がありますので、そうしたアフターケアがどこまで自分たちでできるのか、といった課題が残ります。医療ツーリズムを取り入れている病院も多いかとは思いますが、相応のリスクがともなうことも視野に入れておかなければなりません。
――ほかの病院と異なる強みや設備についてはいかがですか。
永田 いかに専門性を打ち出すかがカギになると思います。当院は急性期病院ですので、眼科や皮膚科などの需要はそこまで高くありません。その代わりに形成外科―たとえば血管をつなぐ手術や乳房の再建手術などの専門医がいます。北九州でこうした手術が可能なのは当院だけでしょう。また、365日24時間体制で小児科もやっているので、ぜひご利用いただきたいと思います。
設備についてですが、日本では埼玉医科大学国際医療センターと当院にしか導入されていない最先端の医療ロボットがあります。
今、多くの医療機関での採用実績がある内視鏡手術支援ロボットの「da Vinci(ダ・ヴィンチ)」(※2)は、認知度は高いのですが、18年4月診療報酬改定で認められた12疾患と今年1月の新規7疾患、合計19疾患のみが保険適用として認められている状況で、手術数も増えていますが、まだ保険適用疾患が少ないのが現状です。
一方、当院が導入した医療ロボット「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」(※3)は、98疾患に対して保険適用が取れましたので、消化器外科、婦人科、泌尿器科などでの利用を想定しています。通常の腹腔鏡手術で使われる器具や3mmの細径鉗子も使用できますので、患者さんに対して低侵襲手術が提供できます。ロボットアームに取り付けた手術器具の先端で患部に触れた際に、その感覚を医師がもつ手元のグリップに伝えることができ、医師はより緻密に手術を行えるようになりました。当院でも今年2月に手術を始めました。医師が使いこなせるまでにはトレーニングが必要になりますが、手術の幅は大きく広がるでしょう。日本への導入は始まったばかりですが、ほぼすべての疾患に保険適用が認められましたので、今後は徐々にこのシステムが増えていくと思います。
――最後に、地域包括ケアシステムについてのお考えを聞かせてください。
永田 北九州総合病院、そして北九州病院グループが見据えるのは、「地域の開業医や住民に信頼される病院」です。これを実現できれば、地域包括ケアシステムの一端を当院が担えると思います。患者さんには、かかりつけ医をつくってもらって、日ごろからいろいろな検診をしてもらい、病気が見つかればその病気を得意領域とする施設に連絡して対応してもらう。早期に発見できれば、それだけ健康な生活を送れる割合が増えると思います。
幸いにして、北九州には多くの病院があります。そのため、患者さんが“たらい回し”になる事態もまずありません。医療機関の棲み分けが、ある程度できているともいえるでしょう。また、北九州市は「アクティブシニアが輝く街」に向けて、充実したシニア関連施策に基づいた北九州版CCRCをモデル的に実証していますから、日々の健康と“もしものとき”の安心を支える医療機関や救急医療が充実していると思います。地域包括ケアシステムを構築しやすい土壌、風土があると思います。
(了)
【代 源太朗】
※2:米国のインテュイティヴ・サージカル社が開発したマスタースレイブ型内視鏡下手術用の手術用ロボット。^
※3:米国のトランスエンテリックス社が開発した「ダ・ヴィンチ」に続く臨床用の手術支援ロボット。^
Information
院 長:永田 直幹
所在地:北九州市小倉北区東城野町1-1
TEL:093-921-0560
URL:https://www.kitakyu-hp.or.jp/contents/kitahos_sogo.htm月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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