2024年05月27日( 月 )

リニア開業に向けた「This is NAGOYA」な駅づくりとは?(後)

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 2027年のリニア中央新幹線(以下、リニア)開業に向け、名古屋駅周辺で新たなまちづくりが進行している。名古屋市は14年に「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定。東西駅前広場の再整備、都市高速出入口のフルIC化などに取り組んでいる。名古屋駅に乗り入れる名古屋鉄道(株)(以下、名鉄)も、17年3月に「名古屋駅地区再開発全体計画」を策定。駅沿いに立地する6つのビルを取り壊し、長さ400m、高さ160~180mとされる複合ビルの建設を進めている。リニア開業によって、名古屋に何がもたらされるか。名古屋駅周辺はどう生まれ変わろうとしているのか。

賛否両論「超電導リニア」

 リニアは、品川、名古屋などを最高時速500kmで結ぶ高速鉄道路線だ。区間延長は438km。建設、営業主体はJR東海。総事業費約9兆円を投じ、14年10月に工事着手した。現在、品川、名古屋地下で駅建設などが進められている。開業すれば、品川~名古屋間が最短40分(直通)でつながる。名古屋~新大阪間は未着手だが、37年開業の見込みだ。実現すれば、品川~新大阪が最短67分で結ばれる。

 リニアの意義は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を結んで1つの交流圏(スーパーメガリージョン)を形成することにあるといわれる。その交流人口規模は約7,000万人に上る。東海道新幹線の強力な代替路線が生まれることにより、災害時などのリダンダンシーの向上なども期待される。

 リニアは「夢の超特急」の再来が期待される一大国家プロジェクトといえるが、問題も抱える。その1つが消費電力だ。リニアは、車両の超電導磁石と線路側壁のコイルの間に生じる磁力によって推進力を得るシステムだが、線路を走る新幹線と比べ、消費電力は4倍以上といわれる。消費電力の増大は、CO₂の排出量の増大を意味する。電磁波による沿線住民などへの健康被害に対する懸念もある。

 品川~名古屋間の延長286kmのうち、トンネル区間が8割以上を占める。最大限直線的な線形を求めれば、トンネル以外の選択肢はないのは理解できる。ただし、トンネルによって、河川や地下水の枯渇などの環境被害のリスクが指摘されている。実際、川勝平太・静岡県知事は、大井川の流量減少に対する懸念を理由に、静岡県内区間でのリニアトンネル建設の許可を保留している。

 平たくいえば、「リニアは環境に悪い」という問題がある。この点、JR東海の説明責任能力が問われるポイントだが、結果的に静岡県との合意形成は暗礁に乗り上げている。この問題がこのまま泥沼化すれば、開業の遅れにつながる。

 時短効果にも疑問の声がある。東海道新幹線は、品川~名古屋間を最速で1時間29分、リニアなら同区間を40分で結ぶため、乗車時間そのものはたしかにリニアが圧倒的に短い。ただ、リニアの駅が地下30mに設置されることから、乗降車、他線への乗り換えの際には少なくとも数分(JR東海の試算では3~9分)のロスが生じる。リニアが東海道新幹線と同等の数分間隔で運用されるなら話は別だが、もし15分間隔の運行になれば、待ち時間でやはり数分のロスが生じる。リニア駅直結の移動でない限り、リニアによる時短効果は、20~30分程度にとどまるだろう。

 「リニアは新幹線ではない。飛行機だ」――新幹線整備に熱心な国会議員は、リニアをこう形容した。CO₂排出量が大きく、点と点を結ぶ乗り物だからだ。「リニアなんかを通すより、線形などを見直し、東海道新幹線のスピードを上げる方が効率的だ」と吐き捨てる。世界初といわれる「超電導」リニア。国内の期待は高まりを見せるが、それだけに実現への道のりは険しいようだ。

名古屋駅周辺の様子(写真提供:名古屋市)

「This is NAGOYA」に何が?

 リニアにはさまざまな課題、疑問が残るとしても、やはり、そのインパクトは絶大だ。リニア開業により、名駅、名古屋のまちの求心力が増すことは確実で、他都市に対して、大きなアドバンテージを手にすることになる。市が駅周辺の再開発に力を入れるのも当然だろう。

 ただし、「世界に冠たるスーパーターミナル」を掲げる割には、市の関連施策がインパクトに欠けるのが気になる。市は現在、「This is NAGOYA」を感じる「象徴的な空間形成」に向けて、駅前広場の在り方について検討を重ねている。大阪駅では「うめきた」再開発の目玉として約8haの「みどり」を整備することになっているが、それぐらいやらないと、インパクトは打ち出せないのではないか。そのハードルは非常に高いが、どのようなアイデアが浮上してくるか。その行方が注目される。

(了)

【大石 恭正】

(中)

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