2024年05月27日( 月 )

実現するのか?名古屋城の木造復元プロジェクト(前)

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 名古屋市は現在、名古屋城天守閣の木造復元を進めている。名古屋城には、1800年代に作成された「金城温古録」のほか、昭和初期に計測された「昭和実録図」など建造物に関する詳細な資料が残されている。名古屋城は、名古屋というまちのシンボルであり、主要な観光資源でもある。これらの資料を基にオリジナルな天守閣が復元されれば、国内に類例のない観光名所になる。そう考えた河村たかし市長の下、2015年にプロジェクトは動き始めたが、いまだ(20年3月時点)工事に着手できていない。

黙殺された石垣部会の提言

名古屋城天守閣石垣

 名古屋城は1612年築城。金鯱は名古屋のシンボルになっている。天守閣は、1945年の名古屋空襲により焼失。59年に鉄骨鉄筋コンクリート構造として復元された再建・建造物だ。現在の天守閣は石垣に乗っているように見えるが、実際は天守台の土中に敷設されたケーソンに支えられており、石垣に荷重はかかっていない。

 名古屋市は2006年、城全体の整備計画などについて諮る目的で、特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(旧・全体整備検討委員会)を設置している。この検討会議には、天守閣の木造復元について調査検討を行う天守閣部会と、石垣に関する調査検討を行う石垣部会がある。

 詳細は後述するが、石垣部会は「天守台石垣こそが本質的価値」だとして、市に対して「工事前に石垣の調査、保全が必要」と提言したが、市は提言を事実上黙殺したまま、文化庁に現天守閣解体の現状変更許可を申請した経緯がある。木造復元をめぐる騒動は、この点に端を発する。

職員の要望を受け指示書を作成

 名古屋城天守閣木造復元プロジェクトが動き始めたのは、15年8月24日。河村たかし市長が、城を所管する市民経済局長に指示書を出したのが始まりだ。内容は次の通り。

 (1)名古屋城跡の具体的な復元整備計画を、速やかに策定すること。
 (2)復元整備計画は、まず本丸(小天守、東北隅櫓、多門櫓、門、石垣等)、二の丸(御殿、庭園、門、石垣等)を整備することとし、本丸天守の復元は、今秋から着手すること。
 (3)本丸天守の復元手法については、技術提案交渉方式を採用するものとし、9月議会までに法的・技術的課題をクリアすること。また、技術提案交渉方式を進めるために必要な予算を9月議会に提出すること。
 (4)今後の名古屋城の維持・管理・運営について、新たに民間の知恵も導入すること。

 以上、本件の全責任は私が取るので、各員全力で取り組まれたい。

 一見、普通の指示書だが、河村市長が自ら発したものではない。天守閣の木造復元を迫る河村市長に対し、「木造復元はできない」と反論する市職員が、「(どうしても木造復元をやるというなら)全責任は市長が負うと業務命令書を書いてほしい」という要望を受け、作成された経緯がある。指示書中に「木造復元」を示す文言が一切見当たらないのは妙だが、河村市長が、市職員から木造復元を進める根拠として、指示書を書くよう求められた旨を発言していることから、そう解して差し支えない。

 河村市長は、オリジナル復元だけでなく、20年7月の事業完了にもこだわった。インバウンドなど観光需要増が見込める「東京オリンピックに間に合わせたい」という思いがあったからだ。だが、河村市長のこだわりは、結果的にすべて裏目に出る。

事業費505億円で基本協定締結

 市は木造復元プロジェクトをスタートさせ、15年12月に天守閣事業の公募型プロポーザルを実施。16年3月、(株)竹中工務店が優先交渉権者に決定した。
 しかし、16年4月発生の熊本地震によって熊本城の石垣が崩壊したことを受け、石垣の重要性を議会から厳しく追及されたことに対し、市長が「耳を傾ける」と発言するなどし、約1年間にわたり継続審議。当初は20年7月の事業完了予定だったが、22年12月への延期を余儀なくされた。17年5月、市は竹中工務店と設計施工などに関する基本協定を締結。総事業費は505億円に上る。同年7月、木造復元のための寄付を募る「金シャチ募金」が始まった。

 熊本地震の被害により、文化財的価値の高い名古屋城石垣の保全対策をどうするかが問題として浮上する。市と竹中工務店は17年7月、基本設計の一環として、天守台石垣調査を実施。翌18年1月には、さらに詳細な石垣調査を実施する契約を締結。18年4月には、両者は実施設計の契約を結んだ。

(つづく)

【大石 恭正】

(中)

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