実現するのか?名古屋城の木造復元プロジェクト(中)
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2020年04月10日 12:00

実現するのか?名古屋城の木造復元プロジェクト(中)

 名古屋市は現在、名古屋城天守閣の木造復元を進めている。名古屋城には、1800年代に作成された「金城温古録」のほか、昭和初期に計測された「昭和実録図」など建造物に関する詳細な資料が残されている。名古屋城は、名古屋というまちのシンボルであり、主要な観光資源でもある。これらの資料を基にオリジナルな天守閣が復元されれば、国内に類例のない観光名所になる。そう考えた河村たかし市長の下、2015年にプロジェクトは動き始めたが、いまだ(20年3月時点)工事に着手できていない。

石垣調査保全対策に「ダメ出し」

竹中工務店が制作した名古屋城大天守のBIMモデル
(画像提供:竹中工務店)

 市は、木造復元の事業許可のため、基本設計の段階から文化庁との協議を重ねていたが、18年10月になって、同庁文化審議会の諮問に至らなかったことを公表した。つまり、許可が下りなかったわけだ。石垣の保全対策が不十分であることなどがネックになった。通常、特別史跡内で復元工事を行う場合、事前に文化庁の復元検討委員会に諮られるものだが、今回、そのプロセスに至らなかった。

 19年2月、河村市長が文化庁を訪れ、木造復元はいったん棚上げし、まず耐震性の低い天守閣の解体許可を得たい旨を申し入れた。その後、協議を重ね、同年4月に天守閣解体の申請書を文化庁に提出。5月の文化審議会で審査した結果、「確認事項」が示された。確認事項というと穏当だが、要するに“ダメ出し”だ。市は6月に回答を提出した。河村市長は同8月、事業着手のメドが立たないことから、22年12月の天守閣竣工を断念した。

 その後も文化審議会は行われたが、現在に至るまで許可は出ていない。文化庁は市に対して、「石垣保全対策などについて専門家などとしっかり議論したうえで、提示してほしい」というスタンスだ。解体にともなう現状変更の際、重要になるのは石垣を毀損しないこと。石垣は、特別史跡の本質的な価値に関わる部分だからだ。

 事業の完了時期がいつになるかは今のところ未定だが、リニアが開業する27年が1つのメドになる可能性はある。事業完了の時期の延期は、竹中工務店との契約にも影響が出る。同社と結んだ基本協定は22年12月天守閣竣工を前提としているからだ。石垣の保全対策や工期の延長になれば、当初の技術提案の内容も大幅な変更が必要になる。

 名古屋城では18年、国宝に指定されていた本丸御殿の木造復元が完了している。本丸御殿の復元では、制震ダンパーやブレス(筋交い)を設置し、木造復元ながら、必要な耐震性を確保している。天守閣の復元でも、この手法を踏襲する考えだ。

 市では、天守閣木造復元については、建築基準法3条(歴史的建築物への建築基準法適用除外)を適用したい考えだ。また、耐震や防火、避難などについては、現行の法規に照らして、同程度の機能を確保するとしている。

欠落している考古学的な視点

 文化庁への現状変更許可申請は、解体に際しては、天守閣建造物のみを対象に、振動が少ない切断工法を採用。石垣には一切手を触れない。工事にともなう仮設物についても、内堀保護、外堀養生などを行うことにしている。

 同提案では、天守台のなかにコンクリート製の「跳ね出し架構」を設け、これで木造天守閣を支える手法をとっている。この工法だと、天守台のなかに新たな構造物を埋設するため、天守台内側の石垣を毀損するリスクが生じる。歴史的価値のある石垣のなかに現代的な異物を挿入することに対しては、「遺構の破壊であり、断じて認めない」という専門家もいる。

 その内容について、文化庁から市に対し、申請内容の問題点などに関する指摘が示されている。文化庁からの主な指摘事項は次の通り。

 石垣などに近接する地点で行う大規模工事を計画するのであれば、考古学的視点からの調査・検討と、工学的視点からの検討を行い、当該各種調査・検討結果を踏まえて、適切な解体・仮設物設置計画を策定すべきである。

 どのような調査が必要かについて、各分野の有識者による十分な議論と合意形成を行ったうえで、必要な調査を実施し、石垣など遺構に影響のない工法を選択し、その保全を確実に図る計画となるよう必要な見直しを行うべき。

 要するに、文化庁は「市のプランでは、工学的な視点のみの検討しかなされていない」「有識者の意見を聞き、考古学的視点から再検討すべきだ」と指摘しているわけだ。この点、市は木造復元をやると勢い込んだものの、どういう調査対策が必要なのか、その実、まったく理解していなかったということになる。

 「このままでは文化庁の許可は下りない」と観念したのか、河村市長は19年11月、それまでの姿勢から一転、「石垣ファースト」を宣言。石垣部会の提言を受け入れ、石垣の調査保全を優先させる旨に方向転換した。遡ること同年4月、市は名古屋城調査研究センターを設置。石垣部会の専門家らと、具体的な調査内容について、議論を重ねている。

 木造復元プロジェクトを担当する市職員は、「我々がやるべきことは、調査が必要かどうかも含め、石垣部会の専門家らとしっかり話し合い、文化庁に報告し、指導を仰ぐことだ。新たな調査が必要な場合は調査を行う。それらをしっかり時間をかけて1つひとつ積み重ねていくつもりだ。工事完了時期ありきではない」と話す。そのうえで、「(現在の復元プランでは)史実に忠実な復元と石垣の保全の100%の両立は難しい。基礎構造を含め、必要に応じて(復元プランを)見直していく」と付け加える。

(つづく)

【大石 恭正】

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