2024年04月27日( 土 )

【コロナショック・第一ゼネラルサービスの見解】マンション市況「今年は潮目」~銀行補完し不動産業界を支える

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(株)第一ゼネラルサービス 代表取締役 吉田  邦宏 氏

 アパートローンが減少するなかで、“コロナショック”が追い打ちをかけ、銀行による不動産融資は数年前から比べて明らかに縮小している。第一交通産業(株)の完全子会社・第一ゼネラルサービス(株)は、地場のマンションデベロッパーを主要顧客とした不動産担保融資を主軸に、事業を拡大していった。これらファイナンス会社は、銀行が融資引き締めを行うときには中小企業の融資元として収益を伸ばし、不動産市場が活況で銀行融資が付きやすい場合にも、短期の融資では銀行にも劣らない魅力がある。時代の波により、銀行の融資姿勢に変化が見られ始めたこれからは、再び注目を集めることになりそうだ。

不動産価格は落ち着く

 ――コロナショックによって、福岡のマンション市況はどのように変化すると思いますか。

 吉田 近年、地価や建築コストが上昇したことで、福岡市内のマンション価格は高騰を続けていましたが、今後仕込まれる物件については落ち着いていくでしょう。消費者の消費マインドが冷え込むことで、販売中のマンションのなかには、売れ残る物件も出てくるかもしれません。ワンルームなど投資型の分譲マンションにおいては、投資家に対する融資が引き締められる可能性が否定できません。今年は潮目となるでしょう。

 ――デベロッパーへのプロジェクトファイナンスについては、どのような見方ですか。

 吉田 我々は変わらずにご支援していくつもりです。ただ、銀行は積極的には融資しないようになるかもしれません。マンションデベロッパーは事業計画を提出したうえで、融資を受けますが、福岡市および周辺で1戸の販売価格が4,000万円を超えるようなマンションを完売させるのは難しくなると思いますので、融資件数は減少していくと見ています。完売できる企画力や体力があるマンションデベロッパーとそうでないところで、明確に分かれていくのではないでしょうか。

 投資型のマンションについては、これまで融資や共同事業などで関わってまいりました。こちらも物件の販売手法や運営手法に、工夫が必要となってくるでしょう。実需型と同じく、企画力と体力のあるデベロッパーとそうでないところで、二極化していくと見ています。今、福岡で活動しているマンションデベロッパーの多くがリーマン・ショックを経験しています。我々も同じですが、当時の経験が必ず生きてくるはずです。

業界支える準備ある

 ――リーマン・ショックとの違いは。

 吉田 コロナショックは、金融に端を発した危機ではありません。ただ、ホテルや商業施設などの収益落ち込みが数値として顕著に出てくると、不動産価格が下落し、運用はさらに厳しくなるというような悪循環に陥る恐れもあります。その結果として、金融にも大きな影響をもたらす可能性は高いといえます。

 これは、主にホテルが牽引した福岡市中心部の地価高騰を冷やすことにもつながります。間違いなく、地価は下落するでしょう。そうなれば、不動産業者にとってチャンスとなりますが、そこにお金を出す金融機関の存在がカギとなります。リーマン・ショック後、しばらく銀行は不動産融資に対して保守的でした。今回も、そういった引き締めはあると思います。我々は、その穴を埋めるために存在しています。もちろん、事業計画や過去の取引履歴などはしっかりと見させていただきますが、業界を支えていく準備は整えています。

 ――ホテル運営を行う子会社を設立されました。

吉田 邦宏 氏

 吉田 2019年に第一ゼネラルサービスの完全子会社として、(株)YOUスタイルを設立しました。19年6月に鹿児島市船津町の「ビジネスホテルマリン」(24室)、今年1月に鹿児島市呉服町の「ビジネスホテルメイト」(100室)を取得し、両ホテルの運営を手がけています。4月からはホテルの名称を「YOU STYLE HOTEL」へ改称して、ブランド化しているところです。

 鹿児島県の離島から、鹿児島市内に仕事などで来られた場合も一泊される方が多いほか、福岡から来る場合も宿泊される方が多いので、観光需要はもちろん、鹿児島市はビジネス需要も根強いのです。当社は融資事業を主力としておりますので、それを生かした不動産再生事業を強みとしています。ホテルでもその強みを生かせる場合に限って、さらなるホテルの取得も視野に入れています。

 また、開業時期は未定ですが、博多座(福岡市博多区)の近くにホテル用地を確保しました。福岡にも新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令され、ホテル運営には逆風が続いていますが、建設会社など協力していただく業者さまと力を合わせて、博多座の観劇客のニーズに応えられるホテルを開発していきたいと考えています。

【永上 隼人】


<プロフィール>
吉田  邦宏(よしだ・くにひろ)

大分県日田市出身。現・西日本シティ銀行執行役員博多支店長、九州地区本部長、筑後地区本部長などを歴任。2010年に(株)第一ゼネラルサービスへ入社。12年6月に代表取締役に就任した。経営手腕には定評があり、事業運営に柔軟な姿勢を見せる。


<Company Information>
代 表:吉田 邦宏
所在地:福岡市博多区東比恵2-17-15
    第一交通産業ビル3F
設 立:1975年4月
資本金:5億8,595万円
TEL:092-475-1040

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