国交省が中間とりまとめ ESGを踏まえた不動産特定共同事業の検討会
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2020年05月29日 16:00

国交省が中間とりまとめ ESGを踏まえた不動産特定共同事業の検討会

 ESG投資の拡大やブロックチェーン技術の台頭、クラウドファンディング市場の拡大など、不動産を取り巻く環境は近年大きく変わってきた。このような潮流を踏まえ、国土交通省は、投資家保護の観点を踏まえた不動産特定共同事業の規制の在り方や今後の施策の方向性について検討を行うため、2019年9月に「ESG不動産投資のあり方検討会」を設置。これまで3回にわたり議論を行い、4月に中間とりまとめを策定した。

過去の法改正

 2017年の不特法改正では、小規模不動産特定共同事業を創設。小規模業者による不動産特定共同事業への参入要件を緩和し、個人投資家からクラウドファンディングによって調達した資金を活用して、不動産改修・運用などを行うことが可能となった。また、現物不動産についても金融商品取引法と同様に、クラウドファンディングによる資金調達が可能となった。これにより、不動産特定共同事業の電子取引業務の許可などを受けた事業者は今年2月末時点で22、クラウドファンディングの案件は18年度末時点で案件数累計21件、出資募集額累計約12.1億円に達したという(いずれも国交省資料)。

 ブロックチェーン技術の進展により、19年6月に金商法が改正され、「電子記録移転権利」という概念を導入。金商法の適用対象となるトークンの範囲を明確化するなど、トークンに係る規制が整備された。不動産投資分野においても、ブロックチェーン技術の活用を検討する動きが見られ、制度整備が求められている。

具体的な検討課題および今後の取り組みの方向性(一部抜粋)

1.不動産特定共同事業の適切なガバナンスの確保
 (1)不特法の対象とすべき区分所有不動産投資契約を規定することを検討
 (2)不動産特定共同事業におけるLPSの活用可能性を検討するうえで、LPSの投資対象として不動産を含めることの具体的メリット、活用手法などに関する議論を開始することを検討
 (3)広告において、事業者の名称、許可(登録)番号、商品リスク等の記載をすることを含め検討するとともに、国土交通省HPなどにおいて不動産投資における注意喚起を実施
 (4)特例事業の一般投資家制限を一定程度まで緩和することが可能か検討

2.不動産と社会の関わりを捉えた規制の適正化
 (1)不動産に付随した収益でありながら、不動産取引以外から得る収益を分配する場合に、不特法に該当するか否かについて、個別事例を検証の上で、事業者にとって紛らわしくない解釈を示し、公開することを検討
 (2)1号事業における財産管理報告書の記載事項として、他業実施状況を加えることを検討
 (3)特例事業者が行うことができる事業の範囲について、「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」における例示追加を検討
 (4)ESG情報の開示に積極的に取り組む事業者に参考となるよう、ESG情報の開示に関するガイダンスを策定することを検討

3.トークンの取扱い
 各国の最新動向を把握する一方、トークン発行による資金調達に必ずしも限定せず、不動産に係る新技術の動向について、投資家保護・適切な投資促進のために必要な制度的措置を順次実施することを検討

ガバナンスの確保

 フロアで区分したオフィスなどの建物を販売、転貸して得た賃料を区分所有者に分配するスキームを、規制対象とするかが議論されている。これは、規制対象となっている【不動産取引による収益分配を目的とする賃貸借契約または賃貸の委任契約】に類似するとされるからだ。
 また、投資家の有限責任ニーズを満たすべく、LPS(投資事業有限責任組合)やLLP(有限責任事業組合)の活用可能性についても検討されているが、LLPに関しては組合員が業務執行に関わる必要があることなどから、国交省では活用ニーズは低いと見ている。一方、LPSについては、精算時の手間などのデメリットがありながらも、一定のニーズがあると見ている。しかし、現行法上ではLPSによる不動産投資は制限されており、「経産省などとの議論が必要」と結論づけた。
 広告に関しては、国交省が行った個人投資家へのアンケート結果から、「架空業者から商品の勧誘を受ける事例」「商品のリスクなどについてあまり説明を受けないまま契約を締結する事例」が見られたことから、広告の段階から不動産特定共同事業者の名称および許可(登録)番号、商品のリスクなどについての記載を義務づけることを検討する必要があるとした。

トークンの取扱い

 ブロックチェーン技術の活用のメリットとして、流通性の劇的な向上、「改ざん不能」の特性、クロスボーダーの資金調達の可能性などが挙げられ、トークン活用により、対象となる不動産の裾野の拡大や資金調達先の多様化が実現できる可能性がある。
 一方、トークンは有価証券や不動産の対抗要件とならないことや、トークンを発行し、流通・管理させるためのコストが必要など、ブロックチェーン技術の活用に当たっては課題も存在することから、引き続き市場の動向を見極める必要があるという。当面は、各国の新技術の最新動向などを把握しながら、投資家保護や適切な投資促進のために必要な制度的措置を整理したうえで、対応が可能なものから順次実施することを検討するとしている。
 国交省は、中間とりまとめの内容を踏まえ、今年度中に不動産特定共同事業に関連する法令等改正案を作成するという。

鑑定会社に聞くESG投資の可能性

大和不動産鑑定(株)
事業企画部長  伊藤  景光 氏

 ――国交省が不特法の方向性を検討するうえで、「ESG投資」を呼び込む環境整備について触れました。不特法のさらなる普及で、不動産価値が向上する可能性はあると感じますか。あるとすれば、その理由は何だと考えられますか。

 伊藤 不特法に限らず、スキームの使い勝手が良くなることで不動産の流動性が高まれば、自然と価値は向上していくのではないでしょうか。不特法でESG投資をしやすいスキームが整備され、使い勝手が良くなれば、ESG不動産の流動性が高まり、その価値も上がると考えます。

 ――ESGスコアが上がる不動産とはどのようなものでしょうか。過去の事例などありましたら、物件の特徴など教えてください。

 伊藤 たとえば、GRESB()の評価を高めるため、所有している不動産について、DBJ Green Building・CASBEEなどの認証を得る必要があります。

 評価項目はそれぞれの認証により異なりますが、環境(熱・水・敷地・屋内)や耐震などに配慮している物件、つまり築浅物件になればなるほどこれらに配慮した設計運用になっているので、当初からESGスコアが高い(上がる)不動産であるといえます。しかしながら、築年数が古く、これらの評価項目が現状ベースで劣る物件についても、環境性能などを高める改修工事を実施することにより、ESGスコアを高めることが期待できます。

※GRESB:不動産セクターの環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮を測る年次のベンチマーク評価で、欧米・アジアの主要機関投資家が投資先を選定する際などに活用されている^

ESGスコアを向上させた芝二丁目大門ビルディングの例

 ジャパンリアルエステイト投資法人は、「芝二丁目大門ビルディング」の改修工事について、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱するポジティブ・インパクトの考え方に基づき計画。次の4点を重点的に改修した。

(1)環境負荷軽減を目的としたビル設備の更新
 高効率空調設備への更新、館内照明のLED化
(2)テナント満足度の高いビジネス環境の提供
 テナント満足度調査において要望が多かったラウンジなど共用スペースの整備・拡充
(3)テナント従業員の健康と快適性への配慮
 共用部分の一部緑化、自然素材を使用したリラックス・リフレッシュスペースの提供
(4)デザイン面でのバリューアップ
 ESGを意識したデザインを検討。既存イメージの刷新を図り、物件のプレゼンスを向上

 改修の結果、「エネルギー使用量もしくはCO₂排出量が10%以上削減される工事」の実施、および「DBJ Green Building認証における3つ星」を満たした。DBJ Green Building認証の取得においては、当該改修工事における高効率空調設備への更新、館内照明のLED化のほか、防災・BCP面に資する取り組みを推進している点がとくに評価された。

【永上 隼人】


芝二丁目大門ビルディング
所在地:東京都港区芝2-3-3
敷地面積:2,820m2
延床面積:16,235m2
完成:1984年3月

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